第33話 情報収集の結果

 実乃里と遊びに行ってから既に1週間が経過しており、再び全休の金曜日となっていた。

 俺は何日もかけて秋本を地獄に落とすための弱点を探るために情報収集をしてきており、今は得られた情報を部屋のパソコンでまとめている。

 シークレットブーツや帽子、伊達メガネなど、ありとあらゆる手段を使って変装し、サークル終わりの秋本を待ち伏せし後を尾行、会話を盗み聞きするなど大きなリスクを冒して色々と危ない橋を渡る羽目になったのだが、何とかバレる事なく色々と有益な情報を入手できたのだ。

 俺が苦労の末に入手した情報はどれもこれも驚くようなものばかりだった。

 まずは秋本がサークルの内外を含めて、複数の女性に手を出しているという事だ。

 俺が尾行して確認しただけでも望月以外に5人以上の女性と同時進行で付き合っているようで、他にもまだまだ付き合っている”彼女”がいそうな様子だった。

 望月は秋本と真剣に付き合っていると思っているようだが、悲しい事に恐らく秋本からはたくさんいる簡単に抱かせてくれる女であるセフレの中の1人のような認識しか持たれていない可能性が非常に高い。

 かなり悪質な事に、秋本は付き合っている女性に金銭を貢がせているようで、闇金から多額の借金をして首が回らなくなっている女性もいるらしい。

 めちゃくちゃ性格の悪い秋本だが、外見が良く口も達者なので女性達はすっかり騙されてしまったのだろう。

 そして秋本は、借金が返せなくなった女性をあろうことかソープなどの風俗に沈めているらしいのだ。

 秋本が風俗店から女性の紹介料をしっかりと受け取っていることも会話の盗み聞きから判明しており、はっきり言って人間のクズとしか思えない。

 恐らく秋本は他人の人生など、別にどうでもいい事だとでも考えているのだろう。

 ここまで酷い事を平然とできる秋本には、本当に人間の血が流れているのか激しく疑問に思うレベルだ。

 これだけでも既に色々と衝撃的なのだが、俺はさらにとんでもない情報を入手していた。

 それは秋本が大麻やコカイン、覚せい剤などの違法薬物に手を染めているという事だ。

 数日間に渡る尾行の結果、俺は秋本がサークル終わりの路地裏で違法薬物を売人から購入している現場をばっちりと目撃していた。

 本当は証拠の撮影や録音、録画などを行いたかったのだが、見つかってしまう可能性があったため、泣く泣く断念する事になったのは非常に残念だ。

 喫茶店で見た時に秋本と一緒に歩いていたガラの悪い男女2人組が、明らかにまともな雰囲気の人間では無く、堅気に見えなかった事から何かしらの犯罪行為に手を出しているのでは無いかと感じていたため、俺の想像は正しかったと言える。


「はっきり言って想像していた以上に酷いな……」


 前々から秋本は何かしら人に言えないような事をやっているのではないかと思っていたのだが、まさかここまでとは思ってなかったのだ。

 さらに違法薬物が秋本の手によって俺の元いたサークル内でも最近蔓延し始めている事まで分かり、俺は完全に呆れ返っている。


「サークルを追放された時は最悪の気分だったけど、今思えばあんなところさっさと追い出されて正解だった。下手したら俺も薬物に手を出してた可能性があるし……」


 もし望月と付き合う事なく、今でもサークルに残っていた場合のもしもの可能性を想像すると、背筋が凍りそうだった。

 そう考えると厄介な事に巻き込まれる前にサークルを追放してくれた秋本や望月、宮永先輩にはある意味では感謝できるかもしれない。

 まあ、俺がその3人にお礼を言う事など、決してあり得ないが。


「とりあえず秋本を地獄に突き落とせそうな材料は十分揃ったけど、これからどうするかだよな」


 違法薬物は所持するだけで犯罪であり逮捕されるため、通報すれば秋本が破滅する事は間違い無い。

 それに代表が問題を起こして逮捕されてしまえば、サークルも間違いなく解体になるだろう。

 ただ1つ大きな問題があり、それは秋本がやったという証拠が何も無ければ逮捕されないという事だ。

 そのため俺が購入の現場をただ目撃しただけでは、残念ながら証拠不十分で不起訴になりかねない。

 それにもし一か八かで通報したとしても、万が一証拠が何も出て来なければ、逆に俺が名誉毀損で訴えられるリスクもある。

 なので通報は、できれば証拠が揃っていて確実に現行犯逮捕できるような状況の時に行いたい。


「……癪だけどしばらく泳がせておくか。秋本の性格的に何かしらやらかしそうな気がするし、尻尾を出すまでは我慢だな」


 ひとまずは今回は秋本を破滅させられるような情報をゲットできただけ良しとしよう。


「俺に冤罪をふっかけた事と、実乃里をいじめてた事を絶対に後悔させてやる。覚悟しろよ秋本」


 俺は秋本を地獄の底まで落としてやると改めて誓った。

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