321)恐怖の林間学校-13(講堂へ)

 林間学校の最中、襲撃して来たテロリスト達を撃退する為に、部屋から講堂へ向かう

早苗(体は小春)と晴菜達。



 ーーしかし部屋を出た所の事だった。



 「お前達! 此処で何している!」


 突然角から曲がって来た男に叫ばれ、凄まれた。男は銃を構え早苗達に突きつける。


 目の前に現れた男は先程早苗が倒した男と同様に赤黒い軍服を着ており、恐らくは早苗が倒した男の戻りが遅いので様子を見に来たのだろう。



 男が早苗達に向かい大声で叫ぶ。



 「此処に来た奴は何をしている!? 答えろ!」



 叫ぶ男に晴菜達は怯えた顔を見合わせ、二人して早苗(体は小春)を見た。対して早苗は晴菜達に優しく微笑んだ後、男に冷たく言い返す。


 「……さっき来た汚い男なら……縛られて転がってるわよ? 貴方も同じ目に合ってみる?」


 「コイツ! ガキの癖に生意気言いやがって! 這い蹲らせてやる!」


 早苗(体が小春)の挑発に、男は銃床で殴り掛かろうと銃を振り上げた。


 対して早苗は何も恐れず、どう料理しようか、と考えていた所に、横に居たアリたんが普段の能天気な口調から一変した低い口調で呟いた。


 “……流石にこの不遜な態度見過ごせない……。貴女達出番よ、我らが主をお守りしなさい!”


 「お任せを!」

 「あいよ!」

 「ハイ!」


 アリたんがそう言った瞬間、どこからか少女達の声が響いて、早苗を取囲む様に3人の3人の少女が転移した。



 現れたのは小春を守る為に仕えるローラ達、カリュクスの騎士達だ。



彼女達は小春を守る為に彼女の傍に控えているが、夏休みが明けた後、小春のクラスへと揃って編入して林間学校にも同行して来た。


 突然転移して現れたローラ達を見た男が一瞬怯んで叫んだ。



 「な、何だ!? お、お前達、どこから出て来た!?」



 男は叫んだ後、早苗に殴りかかろうとした銃を構え直し、ローラ達に向け発砲しようとした。



 対して転移してきたローラ達は、早苗と晴菜達を守るようにローラとレーネが男の前に立ち塞がり、キャロが身を低くして男に向かい突進した。


 次いでキャロは刹那に男に迫り、男が持つ銃に対し右手を一閃した。


 “ヒュン!” 

 

 “バキン!!”


 一閃したキャロの右手により、男が持っていた銃は両断されあっさりと破壊された。


 「! ラ、ライフルが!?」


 「……次はお前だぜ、間抜けなマールドム野郎!」


 銃を破壊されて驚く男に対しキャロは嘲りを含んだ声で呟き、左手でがら空きだった男のボディに強烈なフックを叩きこむ。


 “ズン!”


 「うげぇ!!」


 “ダアン!”


 キャロによってボディに一撃を食らった男はくぐもった呻き声を上げ、通路の壁に激突しそのまま動かなくなった。


 対してキャロは酷く残念そうに呟く。


 「あ? まさか……もう終わり? 幾ら何でも弱すぎんだろ……」


 テロリストの男を一瞬で倒したアガルティアの騎士であるキャロは拍子抜けした声を上げた。



 早苗達が部屋を出た所で現れたテロリストの男を倒したアガルティアの騎士、キャロ。


 対して同じ騎士であるローラがキャロに文句を言う。


 「キャロ! お前、その男を殺していないだろうな! アリエッタ様の負担を増やすような事は許さんぞ」


 テロリストの男が余りに弱すぎた事に、心底呆れた様子のキャロに対しローラが苦言を言う。


 そこにアリたんこと、アリエッタが倒れている男の状態を話した。


 “……大丈夫……、一応生きている。ちゃんとキャロは手加減してくれた。キャロが本気なら……この男はバラバラになっている”


 アリたんの言葉を受けたキャロは得意げな声で苦言を言ったローラに返答する。


 「ほーら! アタシは仕事が出来る女なんだぜ!」

 「……ならば普段から、そのガサツな行動を正してくれ」

 「アハハ!」


 キャロの言葉を受けたローラは溜息を付きながら返し、そんな二人の様子を見てレーネが笑う。



 突然湧く様に現れたローラ達により言葉を失い固まっていた晴菜と由佳だったが、楽し気に話し合う3人組の様子を見て晴菜が横に居る早苗(体は小春)に恐る恐る尋ねる。



 「……さ、早苗さんで良いのかな。早苗さん……。次々色んな事が有って……もうパンク寸前なんだけど……と、突然現れたの留学生の3人よね?」


 「ええ、建前上は留学生として転校してきた彼女達だけど……本当は私達の護衛よ。

私達を心配して駆け付けてくれたの。とってもいい子達だから何も心配いらないわ」



 晴菜の問いに早苗は明るく答える。対してローラ達3人は心配する晴菜達の様子を見て、晴菜と由佳に手を振って挨拶した。



 対して晴菜と由佳は戸惑いながらローラ達に恐る恐る手を振り返す。9月になっていきなり転校してきたローラ達だが、今まで晴菜はまともに話す機会は無かった。


 そんなローラ達が、瞬間的に湧く様に現れた事で、晴菜と由香は大いに動揺していた。



 戸惑う晴菜達の様子をアリたんはじっと見ていた。いや……正確には晴菜の事を観察する様に見ていたのだ。



 早苗はその事に気が付かず、晴菜達に朗らかに話し掛ける。


 「心強い援軍も来た事だし、改めて講堂に向かいましょう」


 こうして早苗達は皆でクラスメイト達が捕まっている講堂に向かうのであった。



 自分達が宿泊していたホテル本棟から出て講堂に向かった早苗達一行。


 その構成は早苗(体は小春)が先頭で、彼女を守る様に右前にローラ、左前にレーネが歩く。


 早苗の後ろを付いていく様に晴菜と由佳が続いていた。早苗の横にはアリたんが半透明の体を浮かしながら同行している。


 最後方にはキャロが守りに付く完璧な布陣だった。



 ホテルを出ると夜空は満面の星空……。こんな状況で無ければ思わず立ち止まって声を上げたくなる程の夜空だった。


 そんな星空に心動かされてか、晴菜がチラチラと眺め見る。その様子に気が付いた早苗は彼女に声を掛けた。


 「……本当に……綺麗な星空ね……。不安だろうけど晴菜ちゃん、安心して。こんな事件はすぐ解決させるから」


 「は、はい……、有難う御座います……。さ、早苗さん……」

 

 早苗の気遣いに感謝した晴菜は戸惑いながら彼女に礼を言った。


 晴菜の中では、目の前の少女の意識が、自分の良く知る親友の小春では無く別人で有る事に、まだ抵抗が有る様だ。


 そんな戸惑う彼女をアリたんはじっと見つめるのであった。


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