320)恐怖の林間学校-12(早苗と共に)

 「カ、カナメは!? アイツは大丈夫なの!?」

 「は、晴菜ちゃん、落ち着いて」


 楽しい想い出と成る筈の林間学校で……小春達はテロリストの襲撃を受ける。


 テロリストの一人を難なく無力化した早苗が呼び出したアリたんから、皆に危機が迫っている事を伝えられた晴菜は、我慢出来なくなり声を上げた。


 そんな必死な様子の晴菜を横にいた由佳が案じる。



 対してアリたんこと、アリエッタは……。

 


 “……貴女は……小春ちゃんの親友で……ロティが言っていた少女……。フフフ……確かにナナリに……彼の妹に似た波長を感じる……。ロティが貴女を気に掛けるの良く分るね……。でも、確かに貴女なら……ナナリの魂と……。これはとても……興味深いわ……”


 「え? ナナリ? それに、ロティって誰の事?」



 晴菜を改めて見たアリたんは固まり、素のアリエッタの口調となって何やら呟いた。


 晴菜はアリたんが話した内容が分らず、問い掛ける。対するアリたんは我に返った様で明るく返答する。



 “……ゴメンゴメン、晴菜ちゃん、ちょっと知ってる子に君が似てたから、驚いちゃったんだ! 君が心配していたカナメ君なら、大丈夫よ?”


 「そ、そう……。よ、良かったー」



 晴菜はアリたんの言葉に安堵した。彼女は本気でカナメの事を心配していたのだ。



 アリたんことアリエッタはそんな晴菜をニコニコと見ながら、16人の仲間と共にアガルティアの都市機能を使って彼女の詳細な調査を始めた。


 それは晴菜ととある少女との魂の融合についての調査だった……。




 ◇◇◇




 「……まぁ状況分ったわ、アリたん。……それにしても葵ちゃんが黒幕とはね……。

いずれにしても、講堂で捕まってる皆を何とかするしかないわ……。アリたん……玲君と話したいのだけど、通信できる?」


 “勿論! でも……アタシの存在を良く知らない玲たんは、いきなりアタシから連絡来たら驚くかもー!”



 「国立美術館の時も、互いに話す間もなく玲君倒れちゃったしね……。でも、この際緊急時だから仕方ないわ。幸い修君には事情が分かってるから上手く仲介して貰いましょう」


 “はいはーい! それじゃ玲たんに連絡入れるねー!”


 

 ◇◇◇



 早苗からの指示で、アリたんから通信を受けた玲人は……流石に驚いたが、状況が状況だけに意識を切り替え冷静に対応した。



“……君の存在はともかく、母さん達の無事を確認できて良かった。連絡をくれて感謝する”


 “玲たんに褒められて感激ー! お褒め頂き感謝ですー! アタシ自身については早苗っちから聞いてね! こんなアタシだけど小春達の最大の味方だから、そこだけは安心して良いよ!”


 「……玲君、このアリたんが私達に取って最大の味方である事は間違いないわ。修君も、この子の事は知ってるから後で聞いてね」


 “ああ、分ったよ……母さん。母さんが其処まで言うなら、彼女を認めよう。それはそうと……敵は俺が排除するので、母さん達はそこで待機して貰えるか?”


 「心配しなくても大丈夫、玲君。それより、皆でこの危機に対処した方が良いわ。小春ちゃんから私に替わって貰ったから荒事も平気よ! それでね、私はこのまま、皆が捕まってる講堂に向かう心算だけど……」




 早苗はアリたんを介して玲人と会話した。その際に、部屋に押し入ったテロリストを無力化する際、晴菜達に自らの秘密がばれた事も説明した。


 その上で早苗は講堂に向かい捕まっているクラスメイト達を助ける考えを玲人に伝えた。


 “……分った……母さん。まぁ母さんならテロリスト等、何の問題も無いだろうが……。それでも十二分に注意してほしい“


 「了解よ、玲君」



 玲人の忠告に、素直に早苗(体は小春)に従った。続いて玲人は通話を続ける。


 “……所で、そこに松江さん達は居るだろうか? 少し話を付けたい”


 玲人はそう言ってアリたんを通じて晴菜達に小春の秘密について改めて説明した。

 


 “……そう言う訳で……小春は母さんや俺の姉である仁那を救ってくれた。その関係で彼女は特殊能力を得て……俺達、自衛軍に協力してくれている。軍の機密事項に当たる為、二人には俺達の事情は秘密にして貰いたい。唐突ではあるが何卒お願いする”



 玲人は晴菜と由佳に小春の秘密を秘匿する様依頼した。対して晴菜達は二人共明確に言い切った。



 「……ええ、良く分らないけど……小春と……小春の中に居る人の事は……誰にも言わない。大御門君の事もね……」


 「わ、私も……もう一度約束するよ!」



 “……二人共、協力感謝する。この事件を解決したら、改めて俺達の事について説明させて貰う“



 晴菜達の言葉を受けた玲人は素直に二人に感謝した。そして玲人は早苗に再度話し掛ける。



 “……母さん、俺は。自分が居る棟のテロリストを無力化してから、講堂に向かう。すぐに講堂に向かえる筈だから……無茶だけはしないでくれ……。それじゃ、母さん……また後で会おう”


 「ええ、分ったわ玲君。玲君もくれぐれも気を付けてね」 


 “ああ、母さん達もな”


 早苗と玲人は互いに声を掛けあい、通信を終えた。


 

 玲人との通話が終わった早苗は、改めて晴菜と由佳の方を振り向き、彼女達に意見を求めた。


 「……と言う訳で、私は講堂に向かうけど……改めて、貴女達はどうする?」



 早苗の問いに対して晴菜と由佳は顔を見合わせていたが、小春の能力を豪華客船で見た由佳が口を開いた。


 「さ、早苗さん、私達は早苗さんと一緒に行っても良いですか? 晴菜ちゃんもそれで良いかな?」


 由佳は路地裏での事件と、早苗が先程テロリストを無力化した事を見て、彼女達の傍がもっとも安全だと判断した。


 由佳は横に居た晴菜に声を掛け、早苗との同行をお願いした。


 「……分かったわ、私と一緒に二人とも来なさい。何も恐れる必要はないわ。私や小春ちゃん達は、こんな奴ら何人来たって叩き潰せる。

 二人とも、私の後ろに隠れていなさい。アリたん、悪いけど彼女達を守ってあげて。さぁ、皆此処を出て講堂へ向かいましょうか」


 「「……はい」」


  “りょーかい!”


 こうして晴菜達は早苗と部屋を後にして、講堂へ向かう事となったのだった。


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