23章 転機の林間学校
308)伊原恵美の近況
中学二年生の少女、伊原恵美は自宅で携帯端末を弄りながら、憂鬱な気分で過ごしていた。
彼女は現在…… 自業自得とは言え最悪な状況に陥っている。
恵美がどん底に落ちた切っ掛けは……夏休みの終わりの頃、恵美は路地裏で取巻きの少女達と共に、クラスメートの小川由佳を虐めていた時だった。
そこに……通り掛かった小春が由佳を助けに来たのだ。
そして……小春の中に居る早苗により恵美達は蹴散らされて、由佳を虐めていた状況をSNSに晒されてしまった。
その時点で恵美と取巻きの少女達は社会的に抹殺されたが……反省の無い主犯の恵美に対して早苗は更に制裁を科す。
早苗は恵美の体内に、ニョロメちゃんを侵入させて奴隷化したのだ。
早苗の奴隷となった恵美は、由佳の前で土下座させられ……その様子もSNSに拡散される。
醜態を見せた恵美に……取巻きの少女達は呆れ果て、その場で絶縁されてしまったのだ。
そんな訳で恵美はその日の内に、自分が築き上げた全てを失った。
SNSで自分の悪行を晒された恵美は……親からも酷く責められ、自分の家でも居場所は無くなる。
親だけでなく親戚一同や祖父母からも叱られ、誰も罪を犯した恵美を庇わなかった。
学校の友人達も全て、手の平を返した様に縁を切られる。
そんな訳で、恵美と言うあくどい少女は、最低最悪な状況に落とされたと言う訳だった。
しかし、完全に孤立した恵美だが……唯一人だけ味方が居た。それはSNSを通じて知り合った"エイイチ"だ。
彼だけは恵美の味方だった。友人達に絶縁された恵美はどこにも出掛けず自室に引き籠る事となる。
今日も恵美は携帯端末のSNSのホーム画面から、恵美宛てに来ているコメントをチェックしていた。
すると……。
“ピロリン!”
通知音と共に、お目当ての新着メッセージが届く。
それは唯一の味方である “エイイチ”からのメッセージだった。
“エミ、今何してた?”
“何も? テキトーにダラダラしてた。エイイチは?“
“楽しい? バイトだよ”
互いにスタンプを駆使して返答し合う。エイイチは会った事は無いが自分の事は大学生と伝えてきた。
SNSでの会話を続ける中、エイイチは誰一人味方の居ない恵美の意見を尊重したコメントを返してくれる為、今の彼女に取ってエイイチは最大の理解者となった。
そんな訳で恵美は、エイイチに対し自分の陥った状況を逐一愚痴っていた。
“今日も、つまんない一日だったよ……。それもこれも、全部アイツの所為!“
“アイツって石川小春とか言う女の事?”
恵美は、この所ずっとエイイチに盛大に小春の批判をエイイチにぶつけていた。
恵美の中では全ての歯車が狂い、自分が最悪な展開に陥ったのは全て恵美を陥れた小春の所為だと決め付けていた。
あの日、小春(実際は意識を交替していた早苗)が恵美に制裁を加えた所為で、取り巻きだった少女達に見捨てられ、SNSを通じて彼女の悪行は家族や友人等恵美に関わる全ての人間に知れ渡る。
それにより、完全に孤立した恵美は小春に対して激しい怒りと憎しみを感じていたのだ。
実際は小春には何の非も無く、しかも意識を早苗に交替していた為に本人ですら(肉体は小春だが)無かった。
完全に恵美が悪いのだが……恥を掻かされ、孤立無援となった恵美には自分を振り返って内省する気持ちなど元より全く無かった。
かと言って小春は、自分が虐めていた時の様に弱くは無かった。
何が有ったのか完全に別人(実際は意識を交替した早苗だった)で……不可思議な魔法みたいな力を操っていた。
恵美と取り巻きの少女達3人で小春(早苗)に向かっても、彼女は触れる事すらなく恵美達をゴミ箱に放り投げた。
そして小春には、ローラ達3人のボディガードと、SNSを簡単に操作したフヨフヨと浮かぶアリたんも付き従う。
孤立した恵美では、どう歯向かっても小春達に勝てない事は明らかだった。
だからこそ、恵美はエイイチに頼ったのだ。
”エイイチ……この前に頼んだ、その女の復讐……何か良い案浮かんだ?”
恵美は、以前に頼んだ小春への復讐について尋ねる。
“ああ、恵美が引く位ヤバイの考えてるよ? 半殺しじゃ済まないレベルのね”
恵美はエイイチからのメッセージを見て息をのんだ。
恵美はエイイチが所謂、堅気では無い事をSNSを通じて感じ取っていた。やり取りの中で伝わる会話が血生臭いからだ。
そんなエイイチだからこそ、小春への復讐を依頼した恵美だったが、実際の所……彼からの良い返事は期待していなかった。
会った事も無い恵美に対して、エイイチが犯罪行為に加担するメリットなど皆無だからだ。
しかし……恵美の予想に反し、エイイチは本気だった様だ。
“何か危険な感じがする”と、流石に恵美も感じたが……それにも増して小春に対する憎しみから彼の提案に乗った。
“どうするの? バレたらヤバいんじゃない?”
恵美はエイイチの復讐の提案に同意し、具体的な方法を尋ねた。
“流石に地元ではヤバいだろうね? エミ……その石川小春って女が、地元から離れる事は無いかな? そこを狙って……やろう”
恵美はエイイチの提案を受けて鼓動が大きくなった。
”確実にヤバい感じがする”それは感じたが……恵美の抑うつした心は変化を求め、エイイチの提案に迷う事無く乗ってしまった。
だから、彼にプライベートな情報を躊躇無く伝えてしまった。
“エイイチ……そう言えば、もう直ぐ夏休みが終わった後……林間学校が有る。確かクソ面白く無い山奥に行く筈よ?”
“凄くイイね! エミ……その場所と石川小春って女の情報を教えてくれないか? それとソイツの友人とか教えてほしい。弱みを握る為に人質は必要だ”
エイイチは具体的な指示を、恵美に矢継ぎ早に求めて来る。
恵美は此処で“おかしい”と振り返るべきだったが、愚かな彼女は何も考えていなかった為、あっさりと情報を漏らしてしまう。
“それなら……丁度いい奴が居るよ? エイイチ、私はどうすれば良い?”
“流石はエミ……それから色々、石川小春って女の事を教えてくれないか?”
“分ったよ……先ずは通ってる学校だけど……”
こうして伊原恵美は小春の個人情報をエイイチに伝えた。そしてこの事が切っ掛けとなり林間学校が恐怖の舞台へと変貌するのであった……
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