304)マッド訪問⑧
大技でラシュヒ87854号を完全に破壊した仁那。しかし、彼女が操るアンちゃんは、いきなり攻撃を受けて、吹き飛ばさる。
アンちゃんを吹き飛ばしたのは……灰色の地面から、いきなり現われた巨大な削岩機の先端だった。
それは地面の真下から影の様に出現し、アンちゃんを突いて吹き飛ばしたのだ。
真下から現われた削岩機は除々に巨大な腕に姿を変えながら、灰色の地面よりゆっくりと這い上がる様に全身を現す。
現れたのはたった今、仁那が破壊した等のラシュヒ87854号だった。
「な、何で……?、完全に……破壊されたのに……」
『……私のコレクションなら幾らでもあります。そして……空間を繋げば、そのコレクションを無限に呼び出せるです。
君の素晴らしい攻撃で初号機は破壊されましたが……材料さえあれば、このラシュヒ 87854今は何度でも復元出来る、と言う訳です。それでは……お返しです!』
地面より現われたラシュヒ87854号を見て仁那は驚き呟くと、コックピットの中に居るラシュヒが嬉しそうに答える。
彼は巨大レリウスの胸部から何かを沢山射出した。それは小さなガラクタ部品で形成されたミサイルだ。
継ぎはぎだらけのミサイルは、吹き飛ばされて転がっていたアンちゃんに全弾命中する。
ガラクタで構成されたミサイルは、どう言う原理か……その効果は本物でアンちゃんに命中するや、大爆発を起こした。
だが、激しく燃えの炎の中から、真白いアンちゃんが飛び出し仁那の前に立つ。
巨大な削岩機で吹き飛ばされ、ミサイルで爆破されても、アンちゃんの美しいボディには傷一つ付いていない。
しかし、アンちゃんを操る仁那は難しい顏で呟く。
「……このままじゃ……同じ事の操り返しだね……」
巨大なラシュヒ87854号を完全に破壊しても……別空間にあるガラクタに依って、この巨大にレリウスは何度でも再生される。
このままでは、らちが開かない事を仁那は自覚しているのだ。
そこに……意識奥のシェアハウスから外の様子を見ていた早苗から声が掛かる。
“仁那ちゃん……ちょっと良いかしら?"
(どうしたの、お母さん?)
"困ってる様ね、仁那ちゃん……。確かに、あのデカブツはやっかいだわ……。でも、絶対弱点がある筈……。例えば、あのコックピットとかね"
早苗は意識奥から、ラシュヒ87854号の弱点について仁那に伝える。
幾度も再生を行う巨大レリウスだが……確かにラシュヒ本人が居るコックピットだけは再生出来ないだろう。
(そうか! オジさんが居るアソコなら、再生は出来ない筈! ありがとう、お母さん!)
"どういたしまして! 仁那ちゃん、私がデカブツの動きを止めるから、とどめをお願いね?"
(うん、分ったよ! お母さん)
"それじゃ、始めるわよ! 黒鎖、あいつを縛り付けろ!"
仁那に作戦 を伝えた後、早苗はシェアハウスから意識を集中し叫んだ。
すると、ラシュヒ87854号の足元より無数の黒鎖が現われ……巨体を雁字搦め(がんじがらめ)に縛り付ける。
巨大なレリウスを縛り付けたのは、早苗が操るアーガルム族の武器だ。
“くっ、シェアハウスからだと上手く操作出来ないわ! 仁那ちゃん、長くは持たない! 後はお願い!"
(うん! 後は任して!)
シェアハウスからの早苗の声に、仁那は力強く答えアンちゃんを動かす。仁那の意志を受けたアンちゃんは、駆け出した。
早苗が出した黒鎖によってラシュヒ87854号は、縛られ見動きが取れない。コックピットを狙って攻撃するなら、この機会は逃せない。
アンちゃんは巨大レリウスの前で飛び上がる。早苗はラシュヒ87854号の両腕と両足を黒鎖で縛り巨大なレリウスは直立不動で動けない状態だ。
飛び上がったアンちゃんは剥き出しのコックピットに目掛け、思い切り殴り付けた。しかし……。
"バイン!!"
仁那の操るアンちゃんの拳はコックピットの前で、瞬時に展開されたバリアーに防がれる。
「そ、そんな!?」
『……このラシュヒ87854号の動きを拘束し、私が居るコックピットを狙うとは流石です。ですが弱い所に守りを固めるのは当然の事。そして……弱点を晒すのには、理由があるのですよ! それ、ファイアー!!』
攻撃を防がれ驚く仁那にラシュヒは自信たっぷりに答えた後、叫ぶとラシュヒE87854号のコックピット周りに銃口が幾つも生み出され、アンちゃんを一斉に銃撃する。
空中で無数の弾丸を受けたアンちゃんは堪らず落下するが、そこへラシュヒは追撃した。
『チャンス!! 吹き飛んで下さい!!』
黒鎖に縛られ動きが取れないラシュヒ87854号は、双頭の頭部の内……レリウスの頭部を落下するアンちゃんの方を向け、野太い光線を放つ。
光線はアンちゃんを直撃し大爆発を起こした。
爆発により灰色の空間は真白く光り、爆風が駆け抜けたが……仁那(体は小春)はローラ達カリュクスの騎士やハミル、そしてアリたんが展開した多重障壁によって守られている。
だが、光線をまともに受け、爆発したアンちゃんは後に生じた豪炎の中だ。
『……少々やり過ぎたか? この程度の事で壊れない強度の筈だが……』
豪炎の中で動かないアンちゃんを見て、攻撃したラシュヒ自身が心配になって呟く。
新型アンちゃんの設計をした彼自身、自分の作品には自信があるだけに、動かないままのアンちゃんを見て、不安になったのだ。そんな中……。
"ヒュボ!"
豪炎の中からアンちゃんが飛び上がり、再度ラシュヒ87854号に肉薄する。
「まだだよ! いけ、黒丸!!」
アンちゃんは掴んだ黒丸で、コックピットを殴り付ける。
"バイイン!!"
アンちゃんの攻撃は、またしてもコックピットを守る障壁によって防がれてしまったが……仁那は諦めなかった。
「うおおお!」
仁那は叫んでアンちゃんに精一杯の意志力を送ると、 アンちゃんが握る黒丸が真白く輝く。
それと同時にコックピットを守る障壁にヒビが入り出す。
『ま、拙い……!』
破れそうな障壁にラシュヒは危険と判断し、アンちゃんを叩き落とそうとしたが、早苗の黒鎖によりラシュヒ87854号は動かす事が出来なかった。
“パリン!!”
遂に障壁は音を立てて破れる。
"仁那ちゃん! アンちゃんを下がらせながら攻撃して! 私も、合わせて爆破する!!"
「分ったわ、お母さん!」
早苗の指示を受けた仁那はアンちゃんを後方に飛び下がらせつつ、奥義の豪竜双牙拳を放つ。
アンちゃんの両拳から放たれた二つの光球がコックピットに接触すると同時に……ラシュヒ87854号を縛る黒鎖が眩く光り爆ぜた。
"ゴガガガガア!!"
凄じい光と熱量を放ち、巨大なレリウスは爆発するのだった。
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