302)マッド訪問⑥

 ガラクタの山から人型兵器ラシュヒ87854号を生み出したラシュヒ。


 続いて彼は女王である小春達の為に……戦闘用アンドロイド“アンちゃん”と巨大レリウスを組み合わせて、最強の人型レリウスを生み出した。



 『全ての準備は整った!!  さぁ! 早苗君、存分に人形遊びをやり合おう!!』


 「……私達は、玲君がマニオスに成るのを防ごうとしているのよ? そう言う意味じゃ、貴方達の邪魔をする事になるわ。そんな私達の手助けをして良いのかしら?」


 興奮して叫ぶラシュヒを冷静に流して、早苗(体は小春)は問う。


 『言っただろう! 君達は女王だ! 女王の望みを臣下の私達が応えるのは当然! 君達が望む通りに生きる事を、 王であるマニオス様も望んでおられる筈!

まぁ、私の場合は……君達に、最強のレリウスを手にする事で、どんな化学変化が起こるのか楽しみで仕方無い、と言うのが一番の理由だがね!』


 「そう言う事なら遠慮なく貰ってあげるわ。但し……後悔しても知らないわよ?」


 建前と本音を隠す事無く答えるラシュヒに、早苗は送られた美しい人型レリウスを見ながら問う。


 『他の12騎士長は違うだろうが……君達の無双する姿こそ、私にとっては待ち望む所だよ! 

 これ以上の問答は不要だ。後は実証の中で互いに示し合おう! 済まんがローラ君達とハミル君は早苗君本体の防衛をしてくれたまえ! ユマ君は、この戦いのデータ採取だ。アリエッタんも宜しく頼むよ!」



ラシュヒの指示を受けたローラ達と護衛のハミルは早苗(体は小春)を守るべく、彼女の前に立つ。


ユマも宙に浮いた透明なパネルを呼び出し、データの入力を始めた。


「はぁ~、教授ったら何にも後先考えないからな~。ホント、周りが振り回されちゃうよ! で、どうする早苗っち? 無理して教授の相手する事無いよー。何なら、この閉鎖空間から出してあげるけど?」


「……貰い放しってのも嫌だしね。此処はあの教授に乗ってあげる。新しいアンちゃんに……仁那ちゃんもシェアハウスの中で大興奮してるし、彼の望み通り、思いっ切り暴れてあげるわ」


巻き込んだラシュヒに、アリたんは溜息を付きながら早苗に問うと、彼女は力強く答えた。


自分達とこのレリウスを繋ぐ為に早苗(体は小春)は、右手でニョロメちゃんを生み出し……小春そっくりな人型レリウスへと侵入させた。


「……アンちゃんで戦うなら……私の天使がベストでしょう。仁那ちゃん、この場はお願いしても良いかしら?」


“はーい、お母さん!”


 早苗が呟いたと同時に、シェアハウスに居た仁那が元気よく答え、早苗と意識を交替するのであった。



早苗と意識を交替した仁那は、すぐに眼前の生まれ変わったアンちゃんと同調を行う。


"ヴン!"



仁那がたちゃんに意識を写したと同時に、その小春とうり二つの人型レリウスは……閉じていた眼を見開き、手足や脇腹の光るラインが強く輝き出した。



『……先ずは同調に問題は無い様だ。ところで……早苗君から意識が変わったな……?

今の貴女は……マセス様、いや……仁那君だね! 転生したマセス様ご本人と人形を通じて遊べるとは……光栄の極みだよ! 仁那君……先手は譲るよ。先ずは君の方から仕掛けてくれたまえ!』



「それじゃ行くよー! 飛天豪崩脚!!」



ラシュヒに声を掛けられた仁那(体は小春)は元気良叫ぶと、それに合わせて新しいアンちゃんが凄まじい速度で駆けた。


そしてアンちゃんは蹴りを巨大なラシュヒ87854号に喰らわす。


"ドガガン!!"



仁那の意志力を受けた新型アンちゃんは強化された力でラシュヒ87854号を蹴り倒した。



全高20 Mの巨大人型レリウスは、身長150Cm程度の小さなアンちゃんによって倒されたのだ。



「す、凄い……!」



想像以上の破壊力にアンちゃんを操っている仁那は驚く。今まで使っていた旧型のアンドロイドとは基本的なパワーが全く違う様だ。



『驚いたかね? マールドムが作った小型レリウス等とは比較にならん性能だろう?』



ラシュヒは驚く仁那に問うた。問いながらラシュヒは蹴り倒されたラシュヒ87854号をゆっくりと立ち上がらせた。



『……先程も言った通りだ。基本的なスペックや復元能力、兵装転送能力……我々アーガルム族の誇る最高技術を詰め込んだ、その小型しりウスは……君達の使っていた稚拙な人形を遥かに凌駕する。

だがその新型レリウスの最も素晴らしい点は、そうした最新技術ではないのだよ! 君達の意志力を余す事なく表現出来る親和性こそが、最大の利点なのだ!

君達がそのレリウスに取り込まさせた、あの目玉! その目玉より君達が放つ強力な意志力を受けても自壊する事も無く、ラグが生ずる事も無く、君達の想いの通り動いてみせるだろう! 君達の力はこんなものでは無い年だ、その素晴らしい新型で、更なる力を示してくれたまえ!』


「……正直、何言ってるか分らないけど……新しいアンちゃんが凄いって事だけは分るよ。だったら……思い切りやってみるね!」



コックピットの中から叫んだラシュヒに、仁那は答える。



「おいで 、黒丸!!」



“ヒイイイン!!"



仁那が叫ぶと、アンちゃんの手足に黒いリングが突然現われ音を立てて回転し出す。


仁郡が持つアーガルム族の武器が顕現したのだ。



「必殺! 天中豪断脚!!」



仁那の叫びと共に駆け出したアンちゃんは、空高く飛び上がり、天空から巨大なラシュヒ87854に対し前回りからの踵落としを喰らわす。



“ズガガガン!!”



アーガルムとしての武器を装備した新型アンちゃんの踵落としはラシュヒ87854の右肩に命中し、豪音と共に恐ろしい破壊力を持って巨人の右腕を切断した。



“ドドドオン!!”



巨大なラシュヒ87854の右腕は地響きを立てて地上に落下する。



「やった! まだまだ続くよ! 天地豪崩脚!!」



右腕を落とした仁那は続けて攻撃を続ける。天空から踵落としを決め着地したアンちゃんに大技の胴回し回転蹴りをさせた。


胴を回して放った強烈な蹴りはアーガルムの武器である黒丸の加護を受け破滅的な破壊力となった。


アンちやんの胴回し回転蹴りはラシュヒ87854の巨大な両足を難なく破壊する。



"ゴゴゴオン!"



右腕に続き、両足を破壊された巨人は自立する事が出来ず豪音と共に倒れたのだった。


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