292)奴隷誕生

 往生際の悪い伊原恵美と取り巻きの少女達は、早苗(体は小春)の怒りを買う。


 恵美達は……早苗の指示を受けたアリたんによって、自分達の悪行やゴミ箱ダイブした様子がメールソフトや各種SNSに投稿されてしまった。



 恵美達自身も色々な SNSを開いて見たが、そこには自分達の悪行や、ゴミまみれになった姿が分り易く明確に映し出されていた。


 その事で親や家族、友人達から大量に事実確認の問い合わせ来ているのだ。


 ちなみに被害者である由佳自身にも親からメールが来ていた。



 SNSの映像や問い合わせメールを見て……驚き、慌てふためく恵美達を見て、早苗はわざとらしく嬉しそうに言う。


 「……良かったわねー? これで貴女達、一躍人気者よ? 大好きな神崎って子にも送った筈だから、きっと恵美ちゃん達の事見てくれるわ。もちろん……悪い意味でね。

 それと、先生や警察やらも、お声が掛かるでしょう。同時に由佳ちゃんの御両親からも民事裁判を起こされるかも! 刑事事件と民事事件の両方で……恵美ちゃん達のパパやママも大忙しになるね! 

 何たって恵美ちゃん達みたいなガキは自分で責任取れないんだから、貴女達のパパやママが責任取る事になるんだよ? 大変な事になっちゃうね! そんな事……バカで小便臭いガキだから、考えもしなかったでしょ?」



 大いに狼狽していた恵美だったが、喜んで煽る早苗(体は小春)の声を聞いて、この騒動を引き起こした彼女に怒りが再燃して大声で叫ぶ。



 「今すぐ!! これを消せよ!」


 「……だって? アリたん出来る?」


 「うん、あたしの超絶能力なら、全てを無かった事に出来るよ? でも、絶対やんない。だって、あたしは小春組の下僕だもん。小春ちゃん達の敵には徹底的にシメるよ?

 アンタらが小春ちゃん達に、土下座して忠誠を誓うなら……晒すの1/10位に収えてやってもいいけど?」



 恵美の叫びに、早苗(体は小春)は横で浮かぶアリたんに問うと、彼女は恵美達に冷たく言い放つ。


 それを聞いた恵美は……。



 「お前!! いい加減にしろよ!」



 恵美はもう我慢出来なくなって、早苗(体は小春)に飛び掛かる。



 対して早苗は指をピンと立てた。すると……。



 “ビタッ!”



 突進して、早苗(体は小春)に掴み掛かろうとした恵美は、そのままの姿勢でピタリと静止してしまった。



 「……子供を殺す訳にいかないしなー。やっぱり、コレでドレイにしようか?」



 恵美を制止させた早苗はそう言って……指先から一瞬でニョロメちゃんを生み出した。



 そして、指をチョンと動かすと……生み出されたニョロメちゃんは、すっと恵美の体に侵入する。



 ニョロメちゃんが侵入したと同時に、恵美は体の拘束を解かれ自由となった。



 自由になった恵美は、更に怒って早苗(体は小春)に突進しようとしたが……。



 「はい、お座り」

 


 早苗が呟くと……突然、犬の様に両手を付けて座り込んだ。



 「「「!?」」」



 恵美のいきなりの奇行に……彼女自身だけでなく、取り巻きの少女達も驚愕して絶句する。



 「……そこで3回まわって……ワン」



 早苗が一言命令すると……恵美は彼女の命令通り、その場で3回まわって……“ワン!”と犬の様に鳴いた。


 「次に……横ばいになって、お腹見せなさい」


 “バッ!”


 続いて出された早苗(体は小春)の命令を受け、恵美はバネ仕掛けの人形の様に機敏に動いて、指示通り仰向けに寝て、お腹を見せる。



 「あ、あれ? な、何で? 私……」



 恵美は自分の意志と、全く関係無く動く自分の体に……驚きながら呟く。そんな恵美に早苗(体は小春)は冷ややかな目で、次なる命令を下す。



 「それじゃ……そこの由佳ちゃん……だっけ? その子に頭こすりつけて土下座。アリたん、その映像も全部配信しといて」


 「はーい」



 早苗が命令すると、恵美は由佳の前で額を打ち付けて土下座した。


 全く体の自由が効かない様で、思い切り地面に額をぶつけた為か、血が滲んでいる。



 その惨めな恵美の様子も……早苗から指示されたアリたんは、直ちにメールソフトや各種SNSに投稿したのだった。



 体内にニョロメちゃんを仕込まれた恵美は、早苗の命令によって自分が虐めていた由佳に対し、土下座を強制された。



 土下座を続ける恵美を見て取り巻きの少女達は、青い顔を浮かべて大声で問う。



 「何やってるのよ! 一体 どうしたの!?」

 「恵美 !? アンタらしく無いわよ!」


 「か、体が……言う事を聞かな……」

 「静かにしなさい」



 取り巻きの少女達の驚く声に……恵美は自分の状況を伝えようとしたが、早苗の命令を受け……全く話せなくなる。



 「……勝手にしゃべったらダメよ、恵美ちゃん。今の貴女は……犬なんだから。犬になった恵美ちゃんは……もう自分からは、二度と小春ちゃんに危害を加える事は出来ないわ。

 ついでに念の為……そこの由佳ちゃんにも、服従する様……設定しておきましょうか……。由佳ちゃん、試しに"伏せ!"って言ってみて」


 「え!? え……えーと……伏せ?」



 早苗 (体は小春)に指示された由佳は……何も考えず言われた通り、呟くと……。



 "バッ!"


 土下座していた恵美は突然、腹ばいとなって伏せの姿勢となった。



 「く、くそ……! 何で体が……!」

 「反省が足らないみたいね。はい、もう一度土下座して、由佳ちゃんに謝りなさい」



 由佳の命じた通り伏せた恵美は、悔し涙を流しながら呟く。



 しかし早苗によって再度土下座を命じられると、恵美は……再度地面に額をこすり付けて土下座をした。



 「……恵美……」

 「どう……しちゃたの……?」



 もう一度深々と土下座をする恵美を見て……取巻きの少女達は、信じられない思いで呟く。



 「……まあ、結局……こんなモノよ、この恵美って子は……。自分が助かりたくて、犬に成り下がったんじゃないかしら?

 金魚のフンの貴女達も……これからは小春ちゃんに従うなら、少しは待遇マシになるんじゃない?」


 「ふ、ふざけんな!」



 意地悪な笑みを浮かべて、取り巻きの少女達に言い放った早苗に対し……少女の一人が彼女に掴み掛かった。



 対する早苗(体は小春)は避けようともしなかった。自分達を常に守る、騎士の存在を知っているからだ。



 "ガッ!"


 「あぐ!」



 早苗に掴み掛かろうとした少女だったが……突然現れた何者かに腕を捻られ、地面に押え付けられる。



 「……汚い格好で、小春に近づくな」

 「ホント……凄く汚いし、臭うね」

 「燃やして消毒するか?」



 早苗(体は小春)の前に瞬時に現われ、取り巻きの少女を押さえ付けたのは……小春専属の護衛であるカリュクスの騎士ローラだ。


 それ以外に早苗を守る様に、同じカリュクスの騎士であるキャロとレナが寄り添い並び立つ。



 彼女達は3人共小春が通う、上賀茂学園の制服を着ている。



 「だ、誰……!? い、一体……どこから……」



 突然現れたローラ達に、押し付けられている取巻きの少女は驚き叫ぶ。



 「……我らは……いつも小春達の近くに常に控えている……。小春達を守る為にな……」



 少女の問いに彼女を押し付けていたローラは、その手を離して立ち上がり、きっぱりと言い放つのだった。


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