291)晒される愚か者達

 伊原恵美達から虐められていた由佳を助ける為、路地裏に来た小春に……恵美達は口汚く罵った。



 その事が許せなかった早苗は、強制的に小春と意識を替わり……取り巻きの少女達を次々にゴミ箱へ放り込んだ。



 "ドボン!"



 ゴミ箱に頭から突込んだ、もう一人の取り巻きの少女は、暫くもがいていたが……何とか抜け出した。



 しかし、彼女もゴミまみれとなり、全身から強烈な悪臭が漂う。



 「……お、お前……今、何をした!?」


 「何も? 恵美ちゃんも見てたでしょ? 私は指一本 触れない。やったのは……こうして指を動しただけ……」



 2人の仲間がゴミ箱にダイブさせられたのを見て、恵美は驚愕しながら呟くと、早苗(体は小春)は、何でも無い様に軽く答えながら……指を動かす。



 すると……。



 「いや! いや! た、助け……!」



 早苗の指の動きに合わせて、恵美は浮き上がったり下降したりを繰返す。


 恵美は、普段の強気な態度と打って変わって弱い叫び声を上げていた。



 「……ちょっと弄っただけで……そのヘタレ様……ホントみっともないわ……。ねえ、そこの貴女……。貴女もそう思わない?」



 泣きながら悲鳴を上げる恵美を見て……早苗は呆れながら、足元で座り込んだままの由佳に声を掛ける。



 「……こ、小春ちゃん……よね?」



 声を掛けられた由佳は……自分が知る穏かな小春とは、全く違う態度の彼女に戸惑い小さな声で問い返す。


 もっとも今の小春は……体は小春のままでも、意識は早苗であり、全くの別人ではあったが。



 由佳に問われた早苗(体は小春)は……。



 「ああ……。そうか、そりゃ驚くか……。今の私は、小春ちゃんだけど、そうじゃないのね……。本人で在りながら、そうじゃないと言うか……。まぁ、説明めんどくさいから、小春ちゃんでいいや。

 それで……貴女をいたぶってた、このガキ共だけど……一皮剥けば、こんなもんよ? 自分が優位な時は、さっきみたいに調子に乗るけど……足元グラつけば、途端にみっともなく、泣き喚く……。だから、貴女もこんな奴らに、ビクつかないで」


 「……小春ちゃん……」



 早苗(体は小春)は、指で恵美を空中で動かして遊びながら、驚いたままの由佳に声を掛ける。



 早苗は生前……父親の豪三に、修一と共に殺された体験より、力関係で他人を支配しようとする人種が大嫌いなのだろう。



 「はい、ゴミ箱ドーン!」

 「いややああ!!」



 早苗(体は小春)は一頻り恵美で遊んでいたが、 飽きたのか彼女をゴミ箱に放り込む。


 恵美は2人目の少女の様に、ゴミ箱へ頭から突込んだ。



 「はい、 ゴミ掃除終わり! あー、すっきりした!」


“スッキリ したじゃ無いでしょー!! 早苗さん、伊原さん達にやり過ぎですよ!!”



 手をパンパンと叩いて、すっきりした表情で早苗(体は小春)は独り話すと、意識奥から小春が叫び声を上げる。



 「……何よ、小春ちゃん……ゴミ掃除は大事でしょ? 本音は殺してやりたかったんだけど。子供って事で、手加減してあげたのよ? 我ながら優しい対応だわ」


 “もっと、やり方が在るでしょう!?”


  意識奥から呼ぶ小春に……早苗はドヤ顔で答え、更に小春を怒らせるのだった。




 そんな中……ゴミ箱から這い出た恵美は憎しみに満ちた目で呟く。



 「……よ、よくも……やってくれたわね……。唯では済まさないわ……!」



 恵美は、ゴミを払いつつ激怒しながら早苗(体は小春)に向け言い放つ。


 取り巻きの少女達も怒り心頭の様子だ。



 彼女達の様子を見て由佳は青い顔をして怯える。今まで受けたイジメの影響で、すっかりと心が折れてしまっている様だ。



 対する早苗(体は小春)はつまらなさそうに呟く。



 「……やっぱり……腐ったミカンは 腐ったままね……。ホント……殺したくなるわ……」


 「はぁ? 私らに何したか、分んないけど……私はヤバイ筋に知り合いが居るわ。そいつらに頼んで、お前を無茶苦茶にしてやる……!」



 懲りて無い様子の恵美達を見て、早苗(体は小春)は心底呆れながら呟くと、恵美は怒りで震えながら答える。



 「……仕返しすら、自分の力で出来ないの? ホント、どうしようも無いガキね? まぁ先ずは、自分が何も出来ないガキだって事……改めて自覚して貰いましょうか。貴女達が良く知ってる道具で、分りやすく丁寧に。アリたん、出て来て」


 「はいはーい!早苗っち! ずっと見てたけど……やっぱり殺っちゃう?」



 早苗が呟くと同時に、可愛らしいアバター姿のアリたんが、空中に現われて問う。



 「……殺すのは簡単だけど、小春ちゃんが怒るからね。……だから社会的に死んでもらうわ。アリたん……さっきまでのコイツらがやらかした記録映像……それをメールで添付して送ってあげて?   

 それと有名どころなSNSで晒してよ。家族、親戚、友人や学校の生徒や教師……。コイツらに縁のある人間全て……もちろん、本人達自身にも分る様にね……」


 「あーい! ちゃんと説明文章と一緒に、映像はテロップと音声付きで万引きも強制してる所から、ゴミ箱にダイブしてた所も入れちゃうよ! 

 もちろん、早苗っちと、イジメられた子は完全に分らない様に消しとくからね! あらゆる端末で見れる様に、色んなソースに延々垂れ流しちゃおう! これから大変だろうけど、自業自得って事で仕方ないね!」


 「そうそう……PTAやら教育委員会やら、警察にもね。由佳ちゃんのパパとママにも忘れずに……。最後に……薫子姉様と、弘樹兄様にも送っておきましょうか」


「はーい、任せて! 大御門弘樹氏は、忠実な早苗っちの下僕だけど……一応、大御門財閥の当主として私立上賀茂学園の経営者兼理事長だもんね。

 薫子様は学校医しながら、理事もやってるし。何より薫子様に伝えておけば、万事上手くしてくれるよ! ……はい、送信完了!」



 早苗に指示された、アリたんは彼女に答える内に……送信とアップロードを終わらせてしまった。




 アリたんは、恵美達が由佳に行った暴行や万引きを強制している映像や、ゴミ箱に突込んた映像に解説コメントを追記してメールソフトや各種SNSに投稿した。



 アガルティア城の中央制御装置と、リンクしているアリたんなら……どんな情報処理も一瞬で完了させる事が出来る。



 アリたんがメールソフトやSNSに投稿した、恵美達の悪事映像……。その反響はすぐに現れた。



 突然、大量の通知音が路地裏に鳴り響き……恵美達は自分の携帯端末を見て愕然とする。



 「何!? な、何なのよ! コレ!?」

 「そ、そんなの……噓……!」

 「どーすんだよ! こんなの学校行けない!」



 携帯端末に届いた、友人や家族からの問い合せメールを……恵美達は見て慌てふためくのだった。


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