245)対レリウス戦②

 前原と沙希のエクソスケルトンに迫った歪な人型兵器レリウスを、前原は足を破壊して地に手を付かせる。



 『やった! 案外、足は脆いぞ!』


 『この調子で両手も破壊しましょう』



 二人は声を掛けあって倒れたレリウスに向かい、エクソスケルトンの重機関銃で攻撃しようと構えた時だった。



 球体ボディに光が一際忙しく駆け巡ったかと思うと……破壊され飛び散った筈のレリウスの足が、瞬く間に再生される。



 『そ、そんな!』

 『……もう一度だ』



 「……無駄ですわ……。結界が施されていない手足に目を向けたのは、良い事ですが……そもそも必要が無いから施されてないだけの事……。手足を構成する金属板は、地中や大気中から材料を取りこんで、幾らでも生成されますもの……。何より自在に飛べる、このレリウスに足など不要です。

 ……初手は貴方達に譲りました。次手は此方の番ですね」



 再度レリスに攻撃を仕掛けようとした前原達にアルジェは、割って入って淡々と説明する。



 そして彼女が話し終えたと同時に……レリウス頭上に浮かぶ3つの球体の1つが赤く輝き……突然、光線を放った。



 “ビュン!”



 すると沙希のエクソスケルトンの腕がバッサリと切断された。


 『な!?』


 「……今のは当然、手加減しています……、このレリウスが本当の能力を発揮すれば、此処一帯は焦土と化し、原型を留めないでしょう。大量生産の消耗品であるこのレリウスですが……この程度の事は可能です」



 アルジェがそう呟いた後、レリウスは右腕を大きく振り上げる。



 “ガギン!!”



 レリウスの振り払った腕に前原と沙希のエクソスケルトンは吹き飛ばされた。



 「……こんな程度ですか……13000年前のマールドムに比べ、練度も技術も落ちているとは分っていましたが……正直ガッカリです」



 吹き飛ばされた前原達のエクソスケルトンを見て、アルジェは残念そうに呟く。そんな中……。



 “ダーン!”



 銃撃音が響き、レリウスが爆炎に包まれる。



 “ダァーン! ダーン!”



 続き銃撃音が響き、レリウスは爆発し炎に包まれた。にも拘らず、傍に居るアルジェはピクリとも表情を変えず呟く。



 「……成程……焼夷榴弾とか言う弾丸ですね……ですが、レリウスには何の影響も有りません」



 爆炎は暫しレリウスを包んだが、直ぐに炎は消える。そこには何のダメージを受けていないレリウスの姿が有った。



 焼夷榴弾の弾丸はレリウスのバリアに全て防がれた様だ。



 「……放って置いても覚醒の儀に影響は有りませんが……少々気になります。レリウスよ……相手の方に配慮しながら、反撃なさい」



 そう命じたアルジェに反応し、レリウスは頭上の3つの球体の1つより輝く光線を高台に向けて放つ。



 “ビュン!”



 光線が放たれた高台は爆発し、炎が上がったのだ。




  ◇  ◇  ◇




 “ドドドン!”



 「うおお!?」


 所変わって……美術館を見下ろす場所に有る高台では、レリウスの光線により爆発が生じ、近くに居た伊藤は飛び退いて難を逃れた。



 「何だ、あの化け物は! 此方の場所を正確に把握して反撃してきやがった……」



 そう呟いた伊藤は、作戦指揮通信車に連絡を行う。



 「……こちら、伊藤……狙撃は失敗だ。焼夷榴弾でもダメージは与えられず。奴の死角から再度狙撃を繰り返す」


 『了解、奴は危険だ。此方から最適場所を指示する。それまで奴から距離を取れ』


 「了解」



 伊藤は短く答えた後……遠くのレリスを睨む。



 「両手足をぶちぬいて転がした後に、榴弾を叩き込むか……。見ていろ、化け物め」



 伊藤はそう呟いた後、移動を開始するのであった。




  ◇  ◇  ◇




 “ギン! キン!”


 

 美術館から少し離れた遊歩道にて……。玲人とフィルは黒針と剣で斬り合いながら駆ける。



  「フッ!」



 玲人が飛び上がりながら黒針を生み出して、投付けたが……フィルは両手の剣で全て叩き落とす。


 次いで彼は高く飛んで玲人の間合いに入り、上から斬り掛かるが玲人の黒針により防がれる。



 両者は距離を置き、向かい合った。



 「……やるな、君は……」


 「とんでもないです……」



 暫しの沈黙の後……。素直にフィルを称えた玲人だったが、彼は照れ臭そうに俯いて謙遜した。



 「……もう、止めないか……と言ってもダメか?」


 「……はい……師匠より任された、大事なお勤めなので……。僕なんかでは……役不足、ですけど……」


 「何を言う……。正直、君の強さに驚いている……。この前戦ったドルジと言う奴と同様にな……。君の様な小さな子でも……その強さ……アーガルムは、途轍もない存在だ」


 「はい……貴方が守った者達ですから……。僕と姉様を救って下さった様に! だからこそ……僕は貴方が目覚める為に……一生懸命、戦います!」




 玲人に掛けられた言葉に感極まったのか……フィルは感動に震え叫んだ。彼の体は白く光り……強力な波動が発せられる。



 此処に来て、更にギアを上げた様だ。一瞬でその姿は搔き消え、玲人はフィルを目で追えなかった。


 玲人の右側より突然、白い光を薄く纏ったフィルが現れる。玲人は間髪入れず黒針で切り付けたが……。



 “バギィ!”



 玲人は真下から、いきなり蹴り上げられた。上空に蹴り飛ばされた玲人は、今度は背後より斬り付けられる。



 咄嗟に、何とか黒針で防いだものの……間髪入れず、左横から殴り付けられ、地上に激突したのだった。



 目に見えない程の速度で繰り出されるフィルの連続攻撃に、玲人は躱す事も出来ずまともに喰らって地上に激突する。


 起き上がった玲人の頭上から白い光を纏ったフィルは迷いなく斬り掛かって来た。


 「く!」


 玲人が迎え撃とうと構えた時……背後から突然攻撃を受けた。予測不能な攻撃に玲人は成す術も無くマトモに喰らったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る