244)対レリウス戦①

 小春達が人知れずアンちゃんを使って玲人を支援しようとする中……この者達も動き出した。



 『そこまでにして貰おう』



 エクソスケルトンに搭乗する前原はスピーカー越しで声を掛けフィルにエクソスケルトンの銃を向ける。



 前原と梨沙は目の前の小さな少年に対し、一切油断していなかった。何故ならば、たった今玲人に攻撃した技……ドルジに負けぬ破壊力だったからだ。



 対象が危険な存在と判断して、エクソスケルトンで取囲む二人だったが……肝心のフィルはキョトンとした顔で困惑している様だった。



 そんな時、玲人が燃える木立の中から飛び出し……フィルの前に立った。



 ブスブスと黒いスーツから煙が上がっているが、彼のダメージは少なそうだ。




 「前原さん、沙希さん。心配をお掛けしました、自分は平気です」



 玲人はそう言うとフィルに向かい飛び掛かった。対するフィルも嬉しそうな顔でガッツリと組合い……激しい技の掛け合いになった。



 玲人はフィルの攻撃を牽制しながら木立の奥へと消えた。フィルの攻撃が前原達や美術館に及ぶのを懸念したのだろう。



 フィルも木立の奥へ消えた玲人を追う。前原と沙希もエクソスケルトンで玲人の支援に向かおうとしたが……。




 「……ちょっとお待ち下さい……。貴方達の相手は……このレリウスと、申し上げた筈です」



 そう言ってアルジェが前原達のエクソスケルトンの前に歪な巨人レリウスを割り込ませる。



 『改めて見るとデケェ……!』


 『浩太! このデカ物が脅威なのは間違いない! 榴弾で破壊しよう!』


 『しかし……実弾での攻撃許可は出ていない……』



 眼前に立ったレリウスの巨大さに改めて驚く前原に、沙希は攻撃を促すがテロリスト戦を想定した戦闘の為、実弾による攻撃許可は受けていなかった。


 躊躇する前原だったが……。



 『……こちら安中……前原曹長、敵性兵器への攻撃を許可する。但し美術館への誤爆を加味し、対戦車ミサイルの使用を禁ずる。近接攻撃を中心とし、敵性兵器を牽制しつつ美術館から引き離せ。増援部隊の到着まで、何とか持たしてくれ』


 『りょ、了解!』


 本部に居る筈の安中からの、タイミングを見計らった様な的確な指示に、前原は驚きながら返答した。


 巨大な未知の兵器に、対戦車ミサイルが使えないのは痛いが、美術館への影響を考えると、安原の指示に従うしかなかった。



 前原は指示通り牽制を行う為、近接戦闘でレリウスを攻撃する事を決めた。


 彼はエクソスケルトンの拳を握りしめ、まずはレリウスの胴を成す球体を殴りつけた。



 ところが……。


 

 “バイン!”



 前原が放ったエクソスケルトンの拳は、レリウスと呼ばれる巨人に接触する前に……透明な壁の様な膜に防がれ、ダメージを与える事が出来ない。


 エクソスケルトンの拳は、軽く振り回しただけで、自動車をペシャンコに拉げさせる程の破壊力が有る。


 相手が6m程の巨体で有っても、鋼鉄の拳でふら付かせる事など簡単だと、前原は考えていたのだ。



 『こ、これは!? 玲人君達が使う、バリアーか!』



 前原は悔しそうに叫びながら再度、拳で殴り続けるが又も障壁に防がれる。



 『だったら! これよ!』



 エクソスケルトンの打撃が通らないと判断した沙希は、腕に隠されたブレードを伸ばし、突きを放った。



 超硬度のブレードによる突きは、鉄板すら貫通する筈だが……ブレードは弾力の在る透明な壁に防がれ、貫通しない。



 『ブレードもダメか!』


 梨沙はそう叫んだが、諦めず再度ブレードで攻撃した。前原も沙希に続き攻撃を続行する。


 二台のエクソスケルトンによる攻撃を、ただ沈黙して受け続けたレリウスだったが……胴部の中心に光る一つ目の様な器官を、一際輝かした。



 すると胴となっている球体にて忙しく走り廻っていた、光の動きが更に激しくなる。


 そして、突然……両腕を激しく振り回した。


 

 “ガキン!”



 振り回した腕でエクソスケルトンは火花を散らして大きく後退させられる。



 『クソ! 仕方ない、距離を置き銃撃する!』



 そう叫んだ前原は、エクソスケルトンの肩に装備された重機関銃を発砲する。



 “ダダダダ!!”



 重機関銃の弾は人体に放てばバラバラになる程の威力だ。これならレリウスの障壁も貫通できると考えた前原だったが……。


 銃弾は障壁に阻まれ、何の痛痒もレリウスに与えない。


 

 だが、前原は発砲を続ける内に有る事に気が付いた。



 銃弾を浴びせる内に前原は、レリウスに展開されているバリアーが胴部の球体を中心に球形状になっている事が分った。その範囲は両手足の先には届いていない事も。



 『足を狙う! 足にはバリアーが展開されていない!』



 そう沙希に叫んだ前原は、レリウスの脚部に向かって重機関銃を発砲する。沙希も前原の指示を受け、銃撃を開始する。


 金属板が連なって構成されたレリウスの足は、前原の読み通りバリアーによって保護されておらず、金属板に銃弾が貫通し、次々に破壊されていた。



 前原達の攻撃により、巨大なレリウスは姿勢を崩した。



 『効いている! 思った通りだ、アイツの手足は攻撃が通るぞ!』


 『了解!』



 前原に続き、沙希も銃撃を続ける。



 2台のエクソスケルトンによる攻撃で、両足を構成する金属板は破壊されたレリウスは立てなくなり、遂に両手を地に付けて倒れるのであった。

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