210)廃倉庫での来襲-21(小春組VSドルジ④)
アーガルムの武器を新たに手にした仁那に対し、不敵な笑みを浮かべてドルジは誘う。
そんなドルジに仁那は頷き、右足にグッと力を込める。すると両足に巻かれた黒いリングが回転し出した。
“ヒイイン!”
「行くよ! 列断旋風脚!!」
そんな掛け声と共に仁那は駆け出して、ドルジに向け右足で上段回し蹴りを食らわした。
“ドゴン!!”
この上段回し蹴りは最初にドルジに防がれた技だ。今回も難なく受け止められた。しかし……。
“ヒイイン!”「うぬ!?」
右足の黒いリングの回転が急激に音を立てて早くなり、左手で受けたドルジをそのまま薙ぎ飛ばす。
“ドゴオゥ!!”
仁那の上段回し蹴りを受けたドルジは吹っ飛び、大きく後退した。
仁那は黒いリングの力による為だろうか、瞬間移動かと思う程の速さで彼に肉薄し追撃する。
『破岩豪拳! 豪天爆山脚!』
仁那はドルジの間合いに難なく入り、目に見えない程の素早さで、正拳突き、前蹴りをを放つ。余りの速さにドルジが反応できない程だ。
『絶断豪斬破!!』
続く連撃の最期に、仁那は鋭い手刀を放った。ドルジは其れを斧の柄で受けたが……。
“バキン!”
黒いリングにより強化された仁那の手刀は、頑強すぎる凶悪な斧を綺麗に切断した。
「……ほう……」
予想外だった仁那の攻撃力に、ドルジは嬉しそうに呟く。
『まだまだ!』
“ガシィ!”
対して仁那はそう叫んで、ドルジを掴む。すると彼女の両手両足の黒いリングが音を立てて激しく回る。
“ヒイイン!”
『うおりゃああ!!』 “ブオン!!”
仁那はドルジを掴んで空中に放り投げた。黒いリングの力により、仁那の意志力は更に高められ、巨漢の男ドルジを天高く飛ばした。
無論、この程度でドルジがどうにかなる筈が無い。先程仁那のド派手な連撃を受けても傷一つ付けれなかった事より、それは明らかだ。
恐るべき強敵相手に、手加減などする余裕は無かった。その為、仁那は間髪入れず最大攻撃に依る追撃を加える。
仁那(体はアンちゃん)は右手を挙げて叫ぶ。
『消し飛ばせ! 黒丸!!』
仁那は叫んで薙いだ。すると仁那の右手に装着されていた黒いリングが離れ、白く光りながら音よりも早く飛んだ。
そして仁那が“黒丸”と呼んだリングは輝きながら、空中に飛ばされているドルジに激突し……大爆発を起こした。
“ドガガガガアアアン!!”
この爆発は、先程の豪那虹色流星弾による攻撃よりも、さらに大きな火球を生み出し、夜の闇を太陽の様に明るく照らす。
生じた爆風により廃工場の屋根が吹き飛んだりと、地上にも大きな影響を与えた。
これで流石に決着した――。空に眩く光る大きな火球を見て、そう感じた仁那だったが……。
空を見ていた仁那(体はアンちゃん)の背後に、何かが瞬時に現れ……。巨大な得物を振り降ろす。
“ザギン!”
『……え?』
甲高い音が響いたかと思うと……仁菜は自分の姿勢が保てず、崩れ落ちて行く状況を自覚する。
“斧で自分の体を切られた”そう認識できたのは崩れ落ちた際、アンちゃんの綺麗に切断された下半身ボディを黙視できたからだ。
足元に転がる形となってしまったアンちゃん。ドルジの斧で上半身と下半身を真っ二つにされた様だ。
そんな状況の中、仁那(体はアンちゃん)の頭上から、興奮したドルジの声が聞こえた。
「……実に見事な攻撃……。あの速度の連撃と火力……、感嘆致しました」
上半身だけとなった仁那(体はアンちゃん)が首を上げて、ドルジを見ると……、筋骨隆々の肉体に傷一つ見られない。
あれ程の攻撃を与えても、この怪物に傷一つ付ける事が出来なかったのだ。
「仁那殿が此処まで戦えるとは……。12騎士長である我と十二分に戦える事を見知り……このドルジ、甚く感じ入りました。この力ならば、従騎士にも届きましょう。本来であれば、続けて仕合いたい所では御座いますが……此度は、“雛”の少年との仕合が本命ゆえ、ご容赦を」
ドルジは上半身のみとなった仁那に向け、興奮した面持ちで称賛の声を上げた後、踵を返して倒れたままの玲人の元へ向かう。
玲人との戦いをドルジはあくまで続行する心算だ。
『ま、待ってよ! オジサン!』
上半身のみとなった仁那(体はアンちゃん)は動く事が出来ず、玲人の元へ向かうドルジへ、叫んで制止するが……ドルジの足は止まらない。
『ま、拙い!! あのオジサンは、また玲人と戦う心算だ! 止めないと!』
焦る仁那が、一人叫びながら這って玲人の元へ向かおうとする。そこに……意識の奥から小春が仁那に呼び掛けた。
“仁那……わたしに替わって。何とか、あの人を止めて……玲人君を守って見せるわ”
(だけど、小春……どうやって? もうアンちゃんは壊れちゃって戦えないよ……)
“仁那ちゃん、此処は小春ちゃんにお願いしましょう。私達の力ではアイツを止めれなかったしね”
心配する仁那を、意識奥から早苗がなだめた。
“二人共、大丈夫……わたしのやり方でやってみる。それじゃ替わるね”
こうして仁那と意識を切り替えた小春は、首を動かして先ずは動けない自分を観察する。
完全に上半身と下半身は分断され、意識が宿っている上半身は地面に転がったままだ。
『……先ずは此れを何とかしないと……』
小春は寝転がった状態から右手を挙げ、意識を高める。すると……その手には錫杖が現れた。小春自身の武器だ。
そして小春が意志力を込めると錫杖が光り出し、上半身が浮き上がる。取敢えずコレで移動は出来そうだ。
『さぁ、ノンビリしてらんない!』
小春はそう呟いて、上半身だけとなったアンちゃんボディを浮かしドルジの元へ急ぐのだった。
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