208)廃倉庫での来襲-19(小春組VSドルジ②)

 ドルジに連続攻撃を放つも、何の痛痒も与えられ無かった早苗(体はアンちゃん)は再度攻撃を仕掛けようとするが……。


 “待って。お母さん……。あの人と戦うには私の方が向いている。だから……”


 突然、意識の奥から仁那が呼び掛ける。


 (でも、仁那ちゃん……)


 “お願い、お母さん。小春とお母さんの気持ちは……私も同じ。だから負けない”


 (……分った、私達全員で、アイツをコテンパンにしましょう。後はお願いね……)


 “有難う、お母さん”


 仁那の覚悟を知った早苗は、自分が小春と替わった様に、仁那と意識を入れ替えた。


 「……人形の中身が、入れ替わったな……。今度は……おお、貴女はマセス様の転生体か!」


 『私は……そんな名前じゃ無いよ、スイカのオジサン……私は仁那だよ。……所で、オジサン……どうしても、玲人と戦う心算なの?』


 「我は、オジサンと言う名では無い……仁那殿。我はドルジ……アガルティア12騎士長が一人だ。そして……問いに答える、我が此処に来た目的は唯一つ……。お館様の覚醒の為に、“雛”の少年と仕合う為だ」


 『そう……分った。だったら、私がオジサンを……止めるしか無いね』


 あくまで玲人と戦うと言うドルジに、仁那は静かな口調で答えていたが、内心は怒りと強い使命感を感じていた。



 『じゃあ行くよ、オジサン!!』


 仁那(体はアンちゃん)は立っているドルジに向け、駆け出す。


 『豪破掌!』


 叫んだ仁那は肉薄したドルジの顎に掌底を喰らわせようと右手を突き上げる。


 “ガッ!”


 しかし、それは瞬時にガードしたドルジの左手に止められた。


 『ならば!  爆豪波撃!』


 次いで仁那の繰り出したのは、膝蹴りだった。


 至近距離から放たれたその技は鋭く、仁那が操るアンちゃんは鋼鉄の体を持つ為、人体がマトモに喰らえば内臓破裂は免れない恐るべき威力を秘めていた。



 だが……。


 “ガイン!”


 仁那(体はアンちゃん)が接近した状態で放った膝蹴りは、ドルジの胸に命中したかに見えたが、刹那に彼が構えた斧の柄にあっさりと防がれる。


 『くっそー! 続けて行く!! 破岩豪拳! 豪天爆山脚! 豪迅拳!』


 難なく防がれた膝蹴りの後、仁那は続けて、正拳突き、前蹴り、裏拳を連続で放ったがドルジは顔色変えず、斧や腕で余裕で防ぐ。



 『うぐっ! あ、当たりすれば良いのに!』


 全く攻撃が通らないドルジに、業を煮やした仁那が悔し紛れに叫ぶ。するとドルジは……。


 「…………」


 “スッ”


 黙って目を瞑り、構えを解いた。全くの無防備だ。当然、仁那はこのチャンスを逃がさない。



 『隙あり!! 列断旋風脚!!』


 仁那(体はアンちゃん)は、好機とばかりに……棒立ちしているドルジの頭部に上段の回し蹴りを決める。


 “バカン!!”


 恐るべき速さで繰り出された仁那(体はアンちゃん)の回し蹴りは生身の人間が喰らえば一撃で絶命する威力だった。


 何せ鋼の体で出来た戦闘用アンドロイドの脚に、仁那が能力で思い切り強化している一撃だ。


 コンクリートの塊ですら、命中すればスイカの様に頭部ははじけ飛ぶだろう。



しかし……。


 「……うむ……マセス様の御無体振りを……この身に受ける事が出来て……実に光栄の極み。マセス様を救って頂いたエニ、いや……小春殿には幾ら頭を下げても足りぬ」


 会心の一撃だった渾身の回し蹴りはノーガードで受けたドルジに全く効いていなかった。


 『そ、そんな効かないの!?』


 「マセス様、いや……今は仁那殿か……。見事な切れの技であった。後方支援を常とするマセス様が……この様に、体術を用いて戦われる姿……、実に感慨深い!」


 『そ、そんなこと聞いてないよ! 豪砕撃!!』


 “ガギン!”


 何やら感激しながら呟くドルジの顔に、仁那は容赦なく肘打ちを放つ。


 放った肘打ちは鋭く、能力付加も有り岩をも簡単に粉砕する威力があった。だが、マトモにこの攻撃を受けたドルジは又も何のダメージも無い様だ。



 『それなら、最終奥義で倒すまで!!』


 今迄の攻撃が何の痛痒も与えていない事を理解した仁那は、叫びながら大きく後ろに下がり大技でドルジを倒す事を決めた。


 仁那(体はアンちゃん)は全力でドルジに向かい走り出した。


 『飛天豪崩脚!!』


 仁那はそう叫んで思いっ切り飛び蹴りをドルジに放つ。対してドルジはガードもせず突っ立っていた。


 仁那が操るアンちゃんの飛び蹴りは能力付加で強化されている事も有り、巨漢の男、ドルジを蹴り飛ばした。


 ”ガガァン!!”


 大きな音を立ててドルジは吹き飛び、背後に有った廃倉庫跡に突っ込む。


 『続けて行く!』


 そう叫んだ仁那(体はアンちゃん)は両手を高く上げた。強力な意志力を両手に込めると、両手の平は眩く白く輝き指の先端に真白く光る球体が10個生まれていた。


 『超奥義! 豪那虹色流星弾!!』


 そう叫んで両手の平をドルジが居る廃倉庫跡に振り降ろした。すると指の先端の光弾は廃倉庫跡に全弾、超高速で飛び……。


 “ガガガアアアァン!!”


 耳をつんざく大音響と共に、大きな火球が生じ爆風が吹き荒れる。この技は仁那が持つ最大火力の攻撃だ。


 その火球を見ながら仁那は油断なく構える。


 早苗の連撃を堪えたドルジだ。この攻撃でも倒れないかも分らない、と思ったからだ。


 だが、同時に仁那が持つ最大攻撃を直撃させたのだ。流石に効いただろう……と考えていた仁那だったが……。


 炎の中からドルジがユラリと進み出る。仁那の予想に反し、彼には全く何のダメージは受けていない様だった。


 『参ったね……でも、オジサンを玲人の元に行かせられないよ……』


 その様子を見た仁那は、悔しげに呟いて……ドルジの元へ向かうのだった。


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