193)廃倉庫での来襲-3(テロ殲滅戦①)

 廃倉庫に潜伏する真国同盟に対する殲滅戦……。


 先ず初めに、前原浩太兵長がエクソスケルトン(強化外骨格)組による強襲が実行された。彼の操るエクソスケルトンは廃倉庫正面のトラック搬入用入り口から突入を開始する。


 エクソスケルトンは全長3m程の高さと総重量4トンの巨体だ。その巨体を持って先ず廃倉庫搬入用入り口のシャッターを破壊した。


 “ガシャーン!!”


 そんな破壊音と共にあっさりとシャッターは破壊され、高照度のLEDライトを爛々と輝かせて廃倉庫内に突入する。



 「て、敵襲だ!!」

 「自衛軍の奴らか!?」

 「強化外骨格だと!? 何でそんなモンが此処に!?」

 「知るか!! とにかく迎撃しろ!!」


 真国同盟のメンバーたちは口々に叫びながら所持していたアサルトライフルで発砲する。


 “ダダダダダ!!”


 しかし、高強度の装甲を纏うエクソスケルトンには全く意味が無く弾かれる。


 “キン! キキン! キン!”


 「だ、ダメだ!! 撤収しろ!!」


 真国同盟のメンバーの誰かが叫び、廃倉庫の裏側出口から脱走しようとしたが。


 “ガガゴン!!”


 そんな音と共に、裏側出口から、泉沙希上等兵が操作するエクソスケルトンがドアを破壊しながら突入しようとしてきた。


 「し、しまった! 囲まれた! 構わん、窓から脱出しろ!!」


 そんな叫び声と共に、真国同盟のメンバーは窓から飛び出そうとした……


 “ターン!”


 “アギャ!!”


 そんな射撃音と同時に窓から飛び出した真国同盟のメンバーが悲鳴を上げながら、足を抑えて蹲った。


 “ターン!” “ターン!”


 続けて何処かから、軽い射撃音が響く。


 “ギャア!!” “グアア!!”


 すると窓から飛び出した真国同盟のメンバー達は悲鳴を上げながら転がった。




  ◇    ◇    ◇

 



 そんな状況を遠方に停車している偽装作戦指揮通信車の中に居る志穂は飛ばしている無人機から状況を見ていた。


 「ヒヒヒヒ……ダルマの射撃に連中慌ててやんぜ……ゴム弾とは言え、痛いらしいしな……姉御ー、そろそろ我らが“殲滅兵器”の出番じゃねぇ?」


 志穂はさも嬉しそうに梨沙に話し掛ける。対して梨沙は落ち着いて返答する。


 「……そうだな……行けるか? 玲人?」

 『……はい、坂井少尉……自分はいつでも出動できます』

 「それなら、玲人。廃倉庫内のテロ組織を殲滅してくれ」

 『……了解』


 玲人は感情を消して答え、出撃した。


 こうしてテロ組織に対し、最強の人間兵器による一方的な戦闘が始まった……。



 廃倉庫に居る真国同盟のメンバー達は正面と背後からのエクソスケルトンによる突入により窓から脱出しようとしたが、狙撃により八方塞がりとなった事に苛立ち、ヒゲ面で筋肉の塊りの様な男が叫ぶ。


 「ちくしょう!! 何処かから狙撃してやがる!! 窓からは拙い、ハチの巣にされるぜ! 仕方ない! LAM(携帯対戦車弾)でデカ物ぶっ飛ばせ!」


 ヒゲ面の男の声で真国同盟のテロリスト達は落ち着きを取り戻したようだ。


 どうやら、ヒゲ面の男はこの部隊のリーダーの様だ。


 リーダーの指示で真国同盟のテロリスト達は廃倉庫内に駐車していたランドクルーザーからLAM(携帯対戦車弾)を引きずり下し、一人の男がランチャーを右肩に担いで構えて、正面から突入してきた前原のエクソスケルトンに狙いを定める。


 ちなみにLAMはカウンターマス装備により後方爆風が無い為、室内でも使用が可能な無反動砲だ。廃墟が多いこの国ではテロリスト達は室内で使用される場合が多いため、LAMを使用していた。

 

 その様子に気付いたエクソスケルトンに乗る前原は焦って叫ぶ。


 「拙い! 一旦下がるか!?」


 前原の叫びに廃倉庫裏面から突入していたもう一体のエクソスケルトン操縦士の沙希は冷静に前原に返答する。


 『落ち着いて、浩太! 通信聞いてなかったの!?』


 「今それどころじゃ……うん? 通信? あー……LAMにビビッて忘れてたよ……こっちには“彼”が居たな! なぁ、玲人君!」


 前原は姿の見えない最強の殲滅兵器に声を掛ける。すると落ち着いた静かな声が聞こえてきた。



 『……はい、前原兵長……LAMのロケット弾が発射した際に無力化しますので問題は有りません。ですが作戦では不測の事態も考えられますので前原兵長と、泉上等兵のエクソスケルトンに念の為、障壁を展開します』


 前原の問いに玲人が通信で落ち着いて返答した。そして玲人が答えた後、間髪入れずに前原と沙希のエクソスケルトンに、白く輝く光の球体が発生し、エクソスケルトンを包み込んだ。


 「お、来たよ! バリアー!」

 『玲人君、いつも有難う!』


 障壁が展開された事で、前原と沙希は感謝の声を上げた。対して礼を言われた玲人は前原と沙希に冷静に話した。


 『前原兵長、泉上等兵、御二方は連中の逃走ルートを抑えながら催涙弾で連中を撹乱して下さい。エクソスケルトンに装備されている軽機関銃は出来るだけ発砲不要です。今回、低致死性のゴム弾を使用としているとはいえ、至近距離では殺傷してしまいます。ですので自分が停車している全車両を4台破壊しつつ、敵性歩兵部隊を纏めて処理します』


 玲人は准尉という立場より現場で前原と沙希に指示を出す。ちなみに玲人の姿はステルス迷彩機能で周囲の風景と同化して姿が見えない。


 玲人は何の感情も持たずに話したが、話す内容は飛んでもない事だ。車両を4台破壊しながら、20名近いテロリストを一度に無力化する事等有り得ない事だった。


 その事を分っている前原と沙希は動揺を隠せず、返答する声に態度が出てしまう。


 「お、おう……玲人君、了解した」

 『……相変わらず、メチャクチャね……一応了解したわ』


 前原と沙希の動揺した声にも玲人は関せず短く答えて行動を開始する。


 『それでは……開始します』



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