187話 再会

「……随分と守護兵に興味を持たれている様ですね。と言うより、このアガルティア城を始めとする、私達の高度な文明が気になる、と言った所ですか?」


 「……ええ、正直此処までとは思っていなかったわ……」


 アリエッタの問いに、早苗は素直な感想を述べた。そんな早苗に薫子が補足する。



 「……早苗が見ている、この守護兵は貴女達の世界に有る兵器群とは性能差が何十世紀も格差が有る代物よ。しかもアガルティアからの無限バックアップも受けれるから、人類の兵器じゃ破壊する事すら出来ないわ。

 ……多重障壁を展開する上に、少しでも損傷すれば自動的に修復……アリエッタの説明通り、兵装類もエネルギーも空間を超えて大量に供給出来る……。

 それに、この手の兵器はアガルティアで大量生産する事が出来るしね。つまりは対抗勢力に対してばら撒いて時間稼ぎする目的の消耗品って事……」


 「……消耗品……」


 薫子がつまらなそうに答えた内容に、早苗は正直驚いた。こんなをオーパーツを前に、薫子は消耗品とこき下ろしたのだ。

 

 「……早苗も知っている通り……私達アーガルムの力は想い描いた通りの力を現象化する事が出来る。想像力こそが本当に凄いエネルギーなのよ。

 だからこそ、アガルティアではね……住んでいる私達こそが、最大戦力にして防衛力なの。目の前のレリスは確かに数が多くて便利だけど……、出来る事は限界がある。

 だから……私達はこのレリウスより全然強いわ。“思う”だけで破壊出来ちゃうからね。そこが人類との最大の違いなの。」


 「確かに……模擬戦でも私達や玲君の力は自衛軍を圧倒していたわ」


 薫子の言葉に早苗は模擬戦を思い出し納得した。そんな早苗に薫子は頷いて続ける。


 「……所で、無人の城下町は見ていてもつまらないでしょう? 次は王都の住民達を紹介するわ。アリエッタ……先ずはアソコに案内して」


 薫子の指示でアリエッタは、空間を移動する光の輪を生み出した。薫子は先行して輪をくぐり、早苗も続くのであった。




 ◇   ◇   ◇




 光の輪を潜り抜け薫子が辿り着いたのは、直径20m位の巨大な球体が浮かぶ広大な空間だった。


 その部屋の中心には、直径20m位の巨大な球体が浮かんでいる。球体は金属製だが、砂の様な微細な金属の集合体であり、白く波打つ様な動きを見せていた。


 巨大な球体は光が眩く走り表面の彼方此方を激しく点滅させたり、点灯したり生き物の様に明滅している。


 それでいて球体の微細な砂状の表面は波の様に形を変えていた。


 浮かんでいる球体の下には巨大なスピーカーの様な黒い円盤状の部品が花びらの様に配置され、球体と円盤との間に光が出たり入ったり忙しく動いている。


 円盤状の部品の周りに、美しく透明な球体が16個、金属の巨大球体に対し同心円状に配置されていた。


 美しい透明の球体の真下にも巨大なスピーカーの様な黒い円盤状の部品が配置され、透明な球体と円盤との間に光の粒子が飛び交っていた。


 美しい透明の球体の後方には真黒い六角柱が無数に立ち並んでいる。高さや大きさは様々だが、柱の表面には線上の光が表面に浮き出ており明滅している。


 その空間の中心に浮か球体は表面を激しく点滅させながら、さざ波の様に絶えず忙しく形を変えている。



 そんな不思議な球体の周りには美しく透明な球体が16個同心円状に並んでいた。


 巨大な球体と透明な球体の真下には黒い円盤状の部品が花びらの様に配置されている。


 16個の透明な球体の中には人影が見られる。アリエッタはその内の一つに近付くと、早苗の方を向き呟く。


 「……改めまして……早苗……これが本当の私よ……」


 そう言って見せられたのは透明な球体の中に眠る美少女……アリエッタだった。彼女は白い肌着のまま、球体内に漂っている。


真白い肌に髪型はドールバンクの容姿はそのままだが、その美しい肉体は透けておらず実体が有る。


 透明な球体の内部には薄青い液体が満たされている。その中に浮かんでいるアリエッタは白いシミーズの様な肌着姿だった。


 その姿は真白い肌にウエーブが掛かった銀色の髪を靡かせながら、微笑を口元に浮かべながら眠っていた。


 その幻想的な程、美しい姿を見た早苗は球体に眠るアリエッタと、自分に話し掛ける透けた姿のアリエッタ両方を見比べながら呟いた。


 「……その球体の中に居るのが、貴女の本当の姿って事かしら?」


 「ええ、今……早苗の前に立つ私は……この球体の中に居る私自身が……投影している姿よ……」


 「貴女はどうして……そんな所に居るの? そして此処は何……?」


 「早苗……貴女も聞いた通り、遥かな過去……私は小春の前世であるエニに助けられたの……。私だけじゃ無い……エニが救ってくれたのは私を含めて16人……

 私達を救った、殺されてエニは死んでしまった……。彼女のお蔭で、私達は救われ……その後、自分達の意志で……此処に居る。

 私達は体と心を後ろの光る球体……中央制御装置に繋いで……このアガルティア国全体を守っているわ……。マールドムでありながらアーガルムの私達の為に貢献し、そして私達を命懸けで救ったエニを見習い……彼女に恩返しする為に……」


 透明な少女アリエッタは自身の肉体が入った球体を指示した後、周りに配置されている他の球体も手を広げて見せる。


 早苗が見渡すと、中央制御装置である金属球体を囲む16個の透明な球体全部に人影が見える。それはまだ若さが見える少年少女達で、皆肌着姿のまま、球体に浮かんでいた。



 早苗が感慨深げに16個の球体を見つめていると、突然彼女の周りに透明な姿の少年少女が姿を現した。突如現れた彼らは早苗を取囲み口々に話し掛ける。


 「ねぇ、貴女! エニ、なの!?」

 「……エニである事は間違いないが……何か違う」

 「正確には……。エニは彼女の心奥で眠っているわ……」

 「そう……だね……。マセス様の意識と一緒に眠っているよ……」

 「だが、彼女はエニと肉体を同一にする者……」

 「だからエニだよ!」

 「エニ! 会いたかった!!」「「「「「エニ!!」」」」」


 いきなり彼らに取り囲まれた早苗は珍しく戸惑う。


 「ちょ、ちょっと……落ち着いて……!」


 行き成り現れた透明な少年少女に迫られた早苗は、珍しく戸惑い、上ずった声を上げるのであった。

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