177)カリュクスの騎士-1
ファミレスに突如来た、割烹着姿のブロンド美少女シャリアがローブ三人組と同じテーブル席に立ち、彼女達を問い詰める。
「……トルア卿から連絡を受けてみれば……まさかカリュクスの騎士であるお前達がもう来ているとは……お前達は一度アジトに来てから着任する手筈になっていた筈……さて、お前達……此れは一体どういう事だ?」
通路に立つシャリアは他の客の邪魔になりそうだが、何故か女性店員の柴田は厨房の奥から見ているがシャリアの方を見ているが注意しようとしない。それどころか熱っぽい眼差しを一心にシャリアに送っている。
そのシャリアに問われた三人組の内、レーネと言われた少女が口を開く。
「……私達は一目、マセス様とエニに会いたかったんです……たった一目だけ……その心算でしたが、その姿を見ると……もう我慢が出来ませんでした……」
レーネに続いて ローラと呼ばれた少女も声を出す。
「我等にはマセス様とエニに返しきれない恩が御座います。その二人が今だ健在で、尚且つ一つの存在となった、と聞かされた時は何としても会わずには居られない、と常々思っておりました……」
「……アタシも同じっす……」
ローラに続いてキャロと呼ばれた少女も呟いた。
3人の言葉を聞いたシャリアは微笑んで3人に諭す。
「……お前達の気持ちは良く分るが……我等が眠っている間に余りに長い時が過ぎた……その間にマールドムの国も大きく有り方を変え、異質なモノとなった……その為、このマールドムの地では、我等は身の振り方を考えねばならん」
「「「ハイ」」」
シャリアが諭した言葉に3人が素直に従う。それを見たシャリアは満足そうに頷き、今度は小春の方を向いて声を掛けた。
「……どうもお初にお目に掛かります。私はシャリア、いえこの地ではシャリア=ブラントと言います……貴方様は石川小春様ですね?」
小春の方を向き直った割烹着を来たブロンド美少女のシャリアは小春に話し掛ける。対して小春は小さな声で答えた。
「は、はい……わたしが……い、石川小春です」
「……貴方様の事を知らない者等、私の周りでは唯の一人も居りません……私は漸く貴方様にお会いする事が出来ました……この出会いに心より感謝を」
そう言ってシャリアは何と片膝をついて、頭を垂れた。すると、ローブ姿の奇怪な3人組も同様に通路側に来て、皆が一斉に片膝を付いて頭を垂れる。慌てたのは小春だ。
「ええ!? ななんで!?」
「……小春……実はお嬢様とか?」
「そんな訳無いよ!?」
驚いた小春に対し、メイが冷静に冷やかす。小春はこんな所で片膝を付かれたら堪らないとばかり、立ち上がって制止させ様としている。
周囲の客もそのシャリアと謎の3人組の様子に驚いているが、遠くから見ていたシャリアに憧れる女性店員の柴田も、その様子を見て口に手を当て狼狽していた。
小春が慌てる様子に気が付いたシャリアは立ち上がった。ローブの3人組もシャリアに従い音も無く立ち上がる。
「今日の所は人目も有りますので、一度出直します。私達は貴方様のお住まいの傍に越して参りますので、どうか良しなに。それでは小春様……改めて、後ろの者達には任務の際にご挨拶させます故に、今日の所は失礼いたします……」
シャリアはそう言って、背後に居た奇怪な3人を引き連れファミレスを出て行った。会計の際、対応した女性店員の柴田にシャリアは笑顔で手を振り、柴田を蕩けさせていた……
「……小春……何なの? あの人達?」
「……多分だけど……安中さんの関係者みたいだから、軍関係の人達だと思うの……」
「ふーん……変わった人達だったね……おっと、もうこんな時間か……一度ここ出ようか?」
小春とメイはそんな話をしながら会計をしようとすると、散々迷惑を掛けた女性店員(柴田)が担当した。
小春とメイは気恥ずかしさの中、そそくさと会計を済ませ店を出ようとすると、女性店員(柴田)が声を掛けてきた。
「……お客さま……」
小春とメイは今日仕出かした事に、もう一度注意されるかと思ったが、女性店員(柴田)は勤務時間にも拘らず、小春の手を取って満面の笑顔で言い放った。
「お客様! またの来店を是非にお待ちして居ります! 特にシャリア先輩と共に!」
思いっ切り、個人都合で懇願された小春とメイはお店のモラルが心配になったが、苦笑いを浮かべてファミレスを出たのであった。
◇ ◇ ◇
その後メイと小春は本屋に立ち寄って互いのお勧めの漫画を買いに言ったり、ショッピングモールで小物を見たりして結構な時間を過ごした。
時間はもう夕暮れ近くになった為、二人は互いの家に帰る事にした。
「それじゃ! 小春、今度は例の軍人彼氏連れて来なよ! 私が説教してやるから!」
「あはは、玲人君は怒られる様な事はしてないよ……うん?」
ここで小春はお別れの挨拶をしようとして動きを止めた。早苗が脳内である替わって欲しいと伝えてきた為だ。一瞬どうしようか小春は考えたが、何か理由が有ると考えて早苗と替わる事にした。
「……それじゃメイちゃん……お別れね」
そう言って早苗(小春を演じている)はメイに右手を差し出し握手を求めた。対してメイは照れながら握手して別れを言った。
「……何だよ……小春ー、照れるじゃん! じゃー私は帰るわー」
そう言ってメイは帰って行った。早苗は小春の振りをしながら手を振って見送っている。
小春は脳内で早苗に問い掛けた。
“早苗さん……どうして、最後わたしと替わってって言ったんですか?”
(……あの子はいい子よね……奥田さんのお孫とは思えない位……だから、守ってあげたかったのよ?)
小春は早苗の言う意味が分らず問い返した。
“どういう……まさか!? ニョロメちゃんをメイちゃんに!?”
(そうよ……あの子は気付いていないけど……危うい立場なの……奥田さんのお孫で、私達と縁が有る時点でね……だから“保険”を掛けただけ。何も悪い事する気は無いわ)
早苗の説明を受けた小春は素直に早苗に礼を言った。
“……そう言う事なら、分りました……有難う御座います……メイちゃんの事を考えてくれて……”
(……もう、私と小春ちゃんは同じ存在……だから、小春ちゃんの友達は私の友達よ! だから気にしなくて良いわ……)
“はい、有難う御座います!”
(お礼は結構よ……所でそろそろ帰りましょうか? もう一度小春ちゃんと替わるわ)
そう言って、早苗は小春と替わり家路に着いたのであった。
◇ ◇ ◇
メイと会って数日が過ぎたある日……小春は一人で駅前に買い物に出かけた。その家路の途中、駅を降りて自宅へ歩いて帰り、丁度大きな公園横を歩いている時だった。
突然、仁那が小春に脳内で大声で話し掛けた。
“小春! 小春! 誰か付いて来てる!”
(え! だ、誰!?)
小春は仁那が叫んだ内容に驚き聞き直す。
“……分らないけど……多分男の人……”
(……え!? な、何それ……怖い……)
男が付いて来ている、と聞いて小春が怯えた感情を持った時だった。早苗がピシャリと小春を叱りつけたのだった。
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