175)唐突な来訪者
ファミレスのテーブル席でメイがジト目で小春に向かって文句を言う。
「まったく小春の所為で、私まで怒られたじゃない!」
「ごご、ごめんね、メイちゃん……色々一杯になっちゃって……」
メイに詰られた、小春は脳内で早苗に恨み言を言いながらメイに謝った。
「……まぁ、さっきの小春、凄く面白かったから良いけど……でも、あの男の子、大御門君だっけ? 小春は、その子と……本当に婚約しちゃうの?」
メイの問いに小晴は赤面しながら話す。
「う、うん……ずっと一緒に居たい人なんだ……ずっと前から好きだった……だから、もう決めたの……」
メイは小春の言葉を受けて、姿勢を正し真剣に小春に聞いた。
「小春、大丈夫? 場に流されてない? 私達、結婚なんて分らないけど、きっと大変な事だと思う。良く考えた上で決めたの?」
メイに問われた小春は、メイが心配してくれている事が分り、メイの目を見据えてしっかりと言い切った。
「……メイちゃん、心配してくれて有難う。でもわたしは玲人君と会う為に生まれて来たんだ。だから、何が有っても大丈夫だよ」
小春の強い決意の言葉を受けて、メイは小春の意志が固い事が伝わった。そして臆病で奥手な小春がここまで言う相手なら大丈夫だろう、と思い一抹の寂しさも感じたが、それでも素直に応援する事にした。
「……そっか……小春が決めたんなら仕方ないね……今度、その子紹介してよ……釘差しとくから」
「……あ、ありがとう、メイちゃん……必ず、玲人君連れてくね」
メイの応援に小春は礼を言い、そして玲人を連れていく事を約束した。
「約束だよ! それじゃ……この件は、お仕舞いにして……何か頼もうか?」
「うん、そうだね」
そうして二人でメニューを見ている時、脳内から今度は仁那が声を掛けてきた。
“小春、小春!”
(どうしたの、仁那?)
“その、おっきくて、いろいろ乗ってて、美味しそうなの食べたい! 替わって!“
(え?、このチョコパフェの事? こんなカロリー高そうなの、ダメだよ! 後で絶対後悔しちゃう!)
仁那が小春の見ているメニューを見て、いきなりチョコパフェが食べたいと言い出した。チョコパフェは確かに美味しそうだが、カロリーを気にして小春は断ったが……
“食べたい! 食べたい! 食べたい!”
(わ、分ったよ! 替わってあげるから、絶対変な事しないで! さっきも早苗さんの所為で店員さんに怒られちゃったし……)
“大丈夫! 食べさせてくれたら、すぐ戻るよ!”
(仕方ないなー それじゃ注文するから、その間、待ってて)
小春の制止は聞かず、仁那は脳内で大騒ぎした為に小春は根負けし、チョコパフェを注文し仁那に替わる事になった。
「わ、わたしはここ、此れで……」
「お、小春はチョコレートパフェ? カロリー爆高だけど、勇気あるね! ……何でそんな、顔引きつってるの?」
「……いやいや……大丈夫っす、どんと来いっす」
「力士かよ! んじゃ、わたしはコレで」
メニューに表示されているカロリーに恐怖して引きつる小春に対し、メイが注文したのはパンケーキだった。
こうして内心泣きながら注文したチョコパフェが来た時点で小春は仁那に替わった。仁那は歓声を上げながら、四方からチョコパフェを眺め廻した後、ご満悦の顔でチョコパフェを味わっている。
その姿を見たメイは感心して小春(本当は仁那)に声を掛けた。
「……凄いね……そんな嬉しそうにパフェ食う人初めて見たよ」
「うん!! スッゴク嬉しいよ!!」
「……小春がそんなにパフェ好きだとは初めて知ったよ、大体いつも控えめな奴頼むからさ……うん? なんだアレ?」
小春(中身は仁那)がチョコパフェを凄い勢いで食べているのを苦笑しながら眺めていたメイだったが、窓の外をふと見ると、不自然な存在に気付いて声を上げた。
メイが驚くのは無理もない事だった。窓の外には奇妙な格好をした3人が、揃ってメイと小春が居る方をじっと見つめていたのだ。
その3人の格好は、その場には不自然過ぎた。全員、濃い緑色のローブを着こみ、ローブの下には、紋様が刻まれた金属製の胸当てを装備している。
顔には上部だけを隠すハーフマスクを被っているが、単眼を象った様な不気味な模様が描かれていた。
「こ、小春! 凄い気合い入ってる奴居るぞ!」
「ちょっと待って、メイちゃん! 食べ終わったら小春に替わるから……」
メイの叫びを無視して仁那はチョコパフェに夢中だ。しかもメニューを見て、別なパフェを注文をしようとして呼びボタンを連打している。
そうこうしている内に、ローブ姿の3人はこっちの方を見ながら、ファミレスに入って来た。ズカズカと店内に入ろうにした所、さっきの女性店員が、慌てて応対する。
「お、お客様、少しお待ち下さい。3名様ですか? 喫煙席と禁煙席が御座いますが?」
奇怪な格好にもめげず、女性店員はマニュアル通り3人に応対する。
すると3人の内一人が、すっと指差し静かに言った。
「彼女に用がある」
その声は涼やかな女性の声だった。指差した席は小春達が居る方だった……
「な、なんだ、あの恰好」
「コスプレか? 完成度高いな、オイ!」
「お母さん! 凄いよ! 騎士だよ!」
「し! 指差して見ちゃダメ!」
店内に居る客達がヒソヒソと噂する中、ローブ姿の3人は2杯目のパフェを貪る様に食べる小春(仁那)の横に勢ぞろいして立ち尽くしてる。
そして3人が3人共、小春(今は仁那)の方を揃って見ている。その姿は異様としか見えない。見られている小春達は……
「お、おい……小春さんよ……何か、このコスプレ集団、小春の方メッチャ見てるけど知り合いか何かなの?」
メイが異常な状況に怯えながら、小春(仁那)に問うた。丁度仁那は2杯目のパフェを食べきった所で、漸くメイの怯えに気付き答えた。
「あー! 美味しかった! ゴメンね、メイちゃん、今小春に替わるよ!」
「うん? 小春に替わる? どういう事?」
そう言って仁那は目を瞑った。メイが仁那が言った言葉が分らず首を傾げていると仁那から突然、替わった小春は周囲の状況が分らない様で不満を呟いている。
「……仁那の奴、パフェを2杯も食べて……今日の晩御飯、抜かなくちゃ……うん?……うわあ!?」
いきなり、仁那から替わった小春は自分の横に立ち竦んでいる不気味な仮面を被ったローブ姿の3人が居る事に今更ながら、気付いて驚いて叫ぶ。
奇怪な3人組は小春達が居るテーブル脇で立ち竦んでいたが、3人が何やら話し合っているのが聞こえてくる。
「おい、ローラ……ほんとに、この小さいのが、そうなのか?」
「小さいは失礼だろう? キャロ……転生されて容姿が変わられたのだ……確かに以前と余りに違うが……間違いないのだろう、レーネ?」
「うん、ローラ……アリエッタ様より受けた情報と合致する……何より……発する波長が……懐かしい感じがする……」
奇怪な3人はそんな事を囁きながら、通路上突っ立たまま小春の方を見ながら囁き合う。
対して小春とメイは、突然現れたローブの3人組に驚いて顔を引きつらせながら、固まっていたのであった……
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