6)最後の戦い-2(最強の存在)

 ディナの攻撃にも巨像は全く揺るがず、逆に巨大化した状況に驚くディナ。


 「そ、そんな!?」



 驚愕したディナが叫ぶ。すると頭上から静かなマニオスの声が聞こえてきた。


 「……だから、無駄だと言ったのだ……俺が作る巨像は、知っていると思うがお前達が纏う鎧や手にしている武器と同じで意志力で作り上げている。俺にとっては武器でも有り、纏えば鎧になるんだ……だから俺が意志力を送る限り、破壊されたとしても砂や空気を吸収し変換して素材として再生する。

 其れに……ディナ、お前は本気となった俺と戦った事等、無いから知らないだろうが……俺の巨像は攻撃を受けるとその衝撃を直接エネルギーに転換し、成長・強化する……」


 自慢でも何でもなく事実だけを静かに淡々と話すマニオスを見て、ディナは力なく笑って呟いた。


 「……だからこそ貴方様は、最強無比なのですね……」


 「……違う……俺はこの巨像をまともに戦いに使ったのはマールドム本国とゲユラヒーエ国を滅ぼした時の2回だけだ……何故なら、この巨像は強力過ぎる……だから俺は……巨像を使わずに全ての俺は戦いに勝ってきたんだ……」

 「!!…………」


 ディナはマニオスが静かに語る事実を聞いて自分が12騎士長で有りながらマニオスの真の力について何も知らなかった事に絶望した。

 確かにマニオスは今まで巨像を使った事は無かった。ディナが見たのは一度だけ、マールドム侵略軍が居た国を大地ごと消滅させた時だった。あの時は12騎士長である自分が心の底から恐怖した……


 マニオスは真の力である巨像を使わずとも最強無比だった――


 そんな相手に一体何が出来るだろうか……


 (……私は一体誰と戦う心算だったのだろうか……マニオス様は強過ぎる……絶対に勝てる訳がない……私は、私達は何と言う無駄な事を……)



 ディナは力無く脱力していると、マセスの前やディナの前に5人の騎士長が立ち塞がった。地上に居た、強化されたマールドムの兵士達は粗方無力化された様だ。


 ディナの前に来たのはガリアとロティだ。二人はディナの事を心配そうに見ている。ディナにとってガリアは親友だった。そのガリアがディナに対し首を振り、降伏を促している。

 そんな友人の様子を見たディナは苦笑し、武装解除して上空に居るマセスに向かって口を開く。


 「……マセス様……もう諦めましょう……彼ら12騎士長なら我等でも太刀打ち出来ましょう……しかし、マニオス様いえ、お館様は余りに強すぎます。

 ……お館様、全ての責はマセス様を止めれなかった配下である私に有ります。どうぞ私に断罪を」



 そう言ってディナはマニオスの前に移動し深く頭を下げた。それを見たマニオスは微笑みながらディナに返答する。


 「元より、お前達を責める気など無い。全ての責は俺にある……」


 そしてマニアスはマセスに優しく話し掛ける。


 「お前達は勇敢だった……俺はお前達に一切の罪は問わない。俺が最初から奴らマールドムを滅ぼせば良かったのだ……だからお前達は悪くない」


 そう言ったマニオスに対しマセスは……



 「……今まで有難う、ディナ。貴方には苦労を掛けたわね。最後の命令です。アガルティアに投降し、そしてウォルスと幸せに暮らしなさい」


 そう言って、自身が手にしている錫杖に意志力を込め真白く輝かせた。そして、前方に居たマニオスに錫杖を振りかぶり攻撃した。

 マニアスは恐るべき速さで迫りくる錫杖をあっさりと躱した。すると勢い余った錫杖から光が放たれ……


 “バヒュン!!”


 遠くの地上に命中した。


 “ガガガガアン!!”


 錫杖から放たれた光により巨大な火球が生じ大爆発が発生した。


 マセスの渾身の一撃をあっさり躱したマニオスは微笑みながらマセスに話す。


 「……無駄な事はよせ、マセス。俺はお前の剣であり盾として常にお前の前に立ち戦って来た。対してお前は後方支援が主な戦い方だ……お前では何をしても俺には勝てんぞ……」


 「……関係ありません、マニオス……貴方があくまでマールドムを滅ぼそうとするなら……私は貴方の前に立ち塞がり、それを止めるまで……エニが、最後まで諦めなかった様に……私は唯の一人まで戦い続ける、エニの想いの為に!!」


 「フフフ、真っ直ぐなお前らしい……それでこそお前だ……エニは常に平和を望んでいた。だからこそ俺もマールドム殲滅は譲れん。転生して来るエニの為にも、今を生きるお前達の為にも、俺は当主としてマールドムを殲滅する!」


 「……参ります……マニオス!」

 「……来るがいい……マセス!」


 そう言いあってマセスとマニオスは切り結んだ。



 「!!……皆、ご免なさい! マセス様の元に行かないと!」


 その様子を見たディナは、周囲に居た5人の騎士長達に謝ってマセスの元に向かった。残る騎士長もマニオスの所へ向かおうとしたが……


 「お前達は来るな!! 此れは俺とマセスの問題だ!!」


 マニオスに制止された。



 その様子を過去映像で見ていたエニは大声マセスとマニオスに叫ぶ。


 「違う!! 違うよ!! わたしが! 望んだ事はこんな事じゃ無い!! 御二人が戦い合うなんて! わたしはただマセス様と! マニオス様と! 皆と! 幸せに暮らせれば其れでよかった!!」


 しかしエニの言葉は彼らに響かない。


 ……エニの想いを逆撫でする様に、マセスとディナとマニオスは戦い続けた。



 どれ位戦い続けただろうか……長く激しく3人は、いや一人対二人だったが、激しく切り結んだ。地上には沢山の大爆発の痕跡が生じており、戦いの激しさを示していた。

  


 マセスとディナは肩で大きく息をして、大きく消耗して居る様だ。よく見れば傷だらけだ。恐らく自身の攻撃による爆発による物だろう

 対してマニオスは二人を相手しているのにも関わらず、全く平気そうで涼しい顔をしていた。彼らの眼下にある巨像は胸の部分まで形成し、そこで成長を止めていた。


 ディナが降伏した時点でマニアスが一度成長を止めたのだ。ただその巨大さは高い山の様であった。頭部から完成している胸の部分まで300~400mは有る。その為、上空に居てもその存在感に圧倒されるのだ……

 


 「……もう十分だろう? お前達では何をどうやっても俺には勝てん……諦めろ」


 降伏を迫るマニオスに対しマセスは、


 「……マニオス……」


 一言呟いて、歯噛みして武器を握りしめた。

 

そこにマニオスの前に5人の騎士達が二人の前に立ち、あっという間にマセスとディナを拘束した。


 “ガッ!”


 「「……!!」」


 拘束されたマセス達は優しく騎士長達に扱われる。


 これでこの戦いも終わりかと思った時、悲劇は起こった。ディナが操りマセスが強化していたマールドムの兵士が死体の山から十人程、動き出した。

 5人の騎士長達に蹂躙された彼らだったがマセスにより強化されている為、生き残りが居たのだ。


 生き残った兵士は、もはやディナの操作から外れていた。今の彼らにあるのは復讐心だ。マセスの“扶翼”は精神力も向上させる。従って、先程まで絶望し無気力だった兵士達は、アーガルム族に家族を、仲間を殺された恨みを増強させ、アーガルム族全員に対して復讐心に燃えていたのだ。


 兵士の一人が剣を手にして、マニアスでは無くマセスに狙いを定める。兵士が呟く……


 「……化け物共め……みんな殺してやる!」


 そう言って、兵士は思いっ切り剣を投付けた。


 “ヒュン!!”


 人外の力を与えられた兵士の投げた剣は鋭く、戦い終わって油断していた彼らは全く気付いていなかった。



 過去映像を見ているエニ以外は。エニは叫んだ。


 「避けて! マセス様!」


 しかし当然声は届かない。


 “ザシュ!!”


 そんな音と共にマセスの背に兵士が投げた剣が突き刺さった。


 「かふっ」


 マセスは口から血を流し、空中から落下した。



 エニは落ちて行くマセスの映像を見て叫ぶ。


 「!! マセス様!!」



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