第100.5話 閑話 〜セラヤのひとりごと〜

100話突破記念、セラヤの独白です。

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 私の名前はセラヤ。

 魔女の塔で騎士様にお仕えする二人のメイドの一人。いえ、私達のちょっと変わった境遇を考えると、一対のメイドの半分、と表現するほうが適当でしょうか。

 姉のシリスと私は双子で、物心つく頃にはすでにお互いの考えていることがわかるようになっていました。いえ、わかるというレベルではありませんね。お互いの見聞きしたものごと、考えていることまでがまるで自分の体験や思いのように時間差なしで感じられるのです。

 ですが、普通の姉妹はそうではないとあるとき気づいてしまってから、お互いの友人や家族などにそのことを隠すのが次第に憂うつになり、結局私たちは親元を遠く離れて暮らすことにしました。

 そんな時、住み込みのメイドを探していると聞いて応募したのが今の職場、魔女の塔です。


 魔女の塔の主は、ヤーオ族の女魔道士というお話でした。ですが、彼女がその言葉通りの存在でないことはすぐに知れました。

 鉄馬を乗りこなし、強大な魔法を操る魔女様は、実はこの世界の人ですらなかったのです。

 そのことを知ってからは、私達と魔女様はお互いの秘密を共有する運命共同体になりました。秘密はやがて勘のいいスリアン殿下に気づかれてしまいましたが、あの方もまた他人は言えない大きな秘密をお持ちの方でしたので、互恵関係は大変うまく続いておりました。

 ですが、魔女様が突然故郷にお戻りになって塔は主を失いました。

 私たちも、いずれ別の仕事を探さなくてはならないのではないかと恐れていましたが、そこにお越しになったのが新しい主、サイ様です。


 見た目は十才そこそこの、やはりヤーオ族の少年です。ですがその身体に宿る魂は私達よりずいぶんと大人です。魔女様に匹敵する大きな魔力を持ち、発現する魔法の精密さでは魔女様をも上回っているのではないでしょうか。

 私は最初、この方があまり好きになれませんでした。

 私達があまりにも魔女様に心酔していたせいで、魔女様とお別れした喪失感が、後釜としてお越しになったサイ様に対する反発に繋がっていたというのは自分でもよくわかっていました。

 その上、サイ様にはどこか得体の知れない所があり、それをなんとなく恐ろしく感じたのです。

 ですがあるとき、私達二人の秘密について、それが二人が持つ護符おまもりが引き起こしていることを一瞬でお見抜きになり、大事にしなさいと言われてからはサイ様に対する見方がだいぶ変わりました。

 サイ様は、成熟した魂を持ちながら、一方でどこか不安定で、とても危なっかしく見えます。

 それは恐らく、家族に恵まれず、また唯一信頼していた幼なじみにこっぴどく裏切られた過去が深い影を落としているのではないでしょうか。

 スリアン殿下もそのあたりを大変気にされて、サイ様に対してはこまごまと気にかけていらっしゃるようです。あるいは、殿下はもう少し深いお気持ちをサイ様に対してお持ちなのかも知れません。


 何はともあれ、私達姉妹は、塔がサイ様の心安らげる〝家〟であり続けるように、これからも変わらずつくしていきたいのです。


 そう、私達は魔女の塔のメイド、サイ様の家族なのですから。


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