出会い
まず目を引く、金色の髪。
次に気になる、腰の長剣。
さらに気付く、その美貌。
──一見すると男性とも女性とも判断がつかない。整った顔立ちが作る表情は穏やかで、どこぞの誰かとは大違いである。
年齢も若そうではあるが、しかし纏う雰囲気は老齢のそれ。落ち着き払い、周りを気遣い、されど自分の立ち位置はただそこに居るだけで主張する。
ただ。
ただただ、不思議が人の形をして歩いているような。
そんな印象を受ける、その人物は。
「……? ああ、失礼。無体な警戒をさせるつもりは無いのですが……。私もはじめは似たようなものでしたので、どうにも放っておけなくて」
まだ疲労が滲むレウィンに、話しながら手を差し出す。
あまりに自然に現れた助力に、なんの警戒もなく手を重ね、ぐい、と引かれる体を強引に立たせ。
「誰もが一度は通る道、のようだね?」
「そういう事ですね。──クラウと申します。宜しければ、名前だけでも」
ちらりと後ろに目をやる。
──警戒を隠そうともしない黒い男。溜息ひとつを溢しつつ、仕方の無い事かと軽く諦め。
「レウィン。一応、新人冒険者だ」
名乗りを返す。
その言葉に、にこり、とわかりやすく笑みを浮かべる金髪の麗人。
「では、レウィンさん。目的地は道具屋との事ですが、こちらに心当たりが二軒ほどあります。どうか見失わないよう、気をつけながらついてきてください」
「ん? いや、道案内は──」
「顔を知らない人であれば、固定客にする為にどこもかしこも引き込みに来ますよ。私がいれば話は別で、さらに貴方も固定の店を作れば『こちら側』です」
「──ああ」
あたりをくるりと見回す。
先程までの客引き、人だかりは、言われてみれば消えている。騒がし過ぎたそれは、いつの間にか通常の喧騒へと遠のいている。
理由など、特に考える必要も無いだろう。
「ゼファー。
「……お前がそうだって言うんなら、従うけどよ」
ため息をひとつ。
ずっと放たれていた重苦しい気配は、ただそれだけで鳴りを潜める。
ただし、決して目は合わない。本能的な物か、或いは。
気を許す事は無いという、無言の意思か。
「……嫌われてしまいました?」
「嫌ってはいないぜ。多分。……なんか気に食わないだけでな」
「それは一般的に嫌いって言うんじゃないかな……」
青年のぼやきに小さく笑い、するりと麗人は背を向ける。
先導。数歩先を行く様に、はじめは僅かばかりに足早に、しかし常に後ろを気にしながら。
その気遣いに感謝しながら、人混みの隙間を縫いながら、二人はクラウの背中を追いかけていく。
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