第18話 邂逅

まず宿を探す。と決めたはいいものの、この人混みの中、宿の場所の見当などつくはずがなかった


(というか、方向感覚が怪しくなってきた...)


なにせ四方八方を人に囲まれているのだ。ただでさえ土地勘が無い中、とりわけ背丈が高いわけではない俺は完全に途方に暮れていた


『大国の首都とはいえ、この人混みは異常だな。何か催し物でもあるんじゃねぇのか?』


確かに、人の往来が多い街とはいえ、ありえない人の数だ。今日この街で何か催し物があるというのは間違いでないかもしれない


(そうだな、誰かに聞いてみるか)


ついでに宿と冒険者ギルドの場所も教えてもらおう。そう思った矢先──


「なぁ!あんた!冒険者だよな!?」


後ろから聞こえた大声にギョッとして、思わず振り返った。そこには、俺より少し年上ぐらいの金髪の青年と、如何にも歴戦の冒険者といった出で立ちの大男がいた。大男は腰に大振りの無骨な剣を佩いており、オブラートに包んでも話しかけ辛い雰囲気を漂わせていた。

その証拠に周囲の人々も二人を避けている。だが、先程の声とは余りにも印象が違うように感じる。もしかすると、金髪の青年があの大男に声をかけたのか。だとすると随分肝の据わった青年だ。俺なら絶対話しかけようなんて思わない。

青年は大男に何かを猛烈に語っているようだ。

どうにも常ならぬ様子で、どこか焦りがあるようにも感じる。大男の方は青年の勢いに気圧されている、と言うよりは少し引いているような様子で話を聞いている。大男はかなり迷惑そうに話を聞いていたが、だんだん険悪な雰囲気になってきている


「~!!なんでだよ!”銀氷の穿ち手”だぞ!?結成からたった2年でBランククランになった大型クラン!今じゃ一番の有望株!そこに入れるかもしれないってのに、どこに断る理由があるんだよ!!」


「全部だよこの野郎!てめぇさっきから好き勝手言ってるがな、そもそも俺は別のクランに入ってるんだよ!!」


「!な...!だ、だったら最初からそう言えばいいじゃないか!」


「てめぇが話を遮るからだろうが!最初からそう言おうとしてたわ!俺を引き抜きたいってんなら、ギルドを通して正式に要請を出せ!話は終わりだ」


「ッ...」


(怖ぇぇ...なんつー迫力だよ)


『ほーん...あのデカい方は結構やるぞ。具体的に言うと俺の百分の一ないぐらいだな』


(それって...かなり強くないか?)


『あぁ、まー俺にかかれば二秒で十分だがな!ハハハハ!!』


(...)


こいつの自画自賛は今に始まったことじゃないが、やっぱうざいな。特に嘘偽りないところが。

それより、あの青年だ。どうやらクランの勧誘をしていたようだが、あの焦り様はいったいなんなんだろうか?本当に有望株なら入団希望者に困らないと思うのだが。


(...まぁ、訳あり、なんだろうな)


『あ?...あぁ、あの金髪の兄ちゃんか。ありゃダメだな。基礎は出来てそうだが...それより坊主、これはチャンスだぞ』


(ん?どういうことだ?)


『あの兄ちゃんは、どういう訳か入団希望者を必要としてるわけだろ?それこそあんな様子になるほにな。だったら今の俺たちには渡りに船だ。冒険者になる必要があり、本当に大型クランなら宿に代わる拠点もある。うってつけだろ?』


(!確かにその通りだ!それに、クラン所属の冒険者ならギルドの恩恵も最大限活用できる!)


そう、クランに所属していればパーティの編成や、クエストの受注等、個人で活動するとどうしても面倒になる手続きをクラン所属の庶務が代わりにこなしてくれるので、その分鍛錬に集中できるという訳だ。

更に、本来であれば受注できないような高ランクのクエストでも、適正ランクの冒険者に同伴するという形で参加できる。強くなるための道を最短で駆け抜ける必要がある俺にはこれ以上ない好条件だ。


(よし!そうと決まったら早速声をかけるか!)


そう思い立った俺は、未だ失意に項垂れる青年に声をかけたのだ。あんなに焦ってたんだから、きっと俺が声をかけても受け入れてくれるに違いない。と、楽観しながら

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そういえば、【共鳴者】とかいうハズレスキルのせいで実家を追放された話したっけ? 佐藤。 @SuperSugar

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