第14話 峨々

『まずは基本的な魔力の用途だけど、坊やもそれは分かるわよね?』


当たり前だ。知らない人間の方が少ないだろう


(あぁ、スキルや魔術を使う時だろ?流石にそれぐらい分かる)


『そう、その2つよね。でも魔術を使う人って少ないわよね?多分坊やの世界でもそうだと思うけど、あれってなんでだと思う?』


確かにそうだ。実戦レベルで魔術を使う者など、研究者か【魔術師】スキルを持つ者ぐらいだろう。


(確かにそうだな、日常的に使われる簡易魔術以外だと、特に実戦レベルの魔術は魔力の消耗が激しいから、スキルとの両立は困難だ。それならいっそ魔術なんて使わずに使い慣れたスキルをメインにした方がいい。ってことじゃないのか?)


あと、いつまでも坊や呼びはキツい


『...驚いた。坊や、じゃなくて、あなた、割と聡明なのね...いいじゃない!賢い男の子は好きよ♪』


割と、は余計だ。ただ褒められるのは嫌いじゃない。アルザードからは散々ダメ出しを食らっていたから、この反応は新鮮だ

あと、坊や呼びを止めてくれたのもポイント高い


『うん!これなら、前置きは必要なさそうね!じゃーここからは、本題。魔力の伸ばし方についてよ』


そう聞くと思わず力み走るペースが上がってしまう。


『...そんなに飛ばして大丈夫なの?』


(あぁ、大丈夫だ。問題ない)


『うわ、問題ありそー...まぁ、いいわ。魔力の伸ばし方だけど、大まかに言うと3種類あるわね。』


(3種類もあるのか!)


『えぇ、そうよ。今あなたがしているのは、1つ目の“ひたすらスキルや魔術を使い続ける”ね。地道だけど、一番確かよ。人によっては成長限界までこの方法でたどり着く人もいるわ』


(...待て、成長限界ってなんだ)


初耳だ。そんなこと、聞いた事もない


『あぁーそっか。確かに、魔力って筋力と違って成長が体感で分からないから、知られてないのも無理ないわね』


『簡単なことよ。文字通り、魔力の成長には限度があるの。個人差があるから一概に言えないけどね』


それは、もしかすると俺の魔力が能力の同調すらできない量で頭打ちになる可能性があるってことなのか


『...その心配をしてたってことね。確かにそれだとちょっと厄介なことになるけど、解決策がないわけじゃないわ。それに、あなたの初期量から考えると、その可能性は低いと思うけどね』


(そう、だよな。でも、その解決策については教えてくれないか)


『言われなくても、教えるつもりよ。なにせその解決策こそ2つ目の方法なんだから!』


成長限界の解決策であり、魔力を伸ばす方法でもある。本当にそんな都合のいいことがあるのか


『もちろん!その方法はね、【魔力増強】スキルを持った人に協力してもらうことよー!』


思いもよらない方法に思わず足を止めてしまった。


(...つまり、他力本願、てことか?)


再び走り出した俺はマーリンにそう問いかける


『まぁ、ぶっちゃけそうよね。能力の同調ができない量で成長限界来ちゃったら、それで何とか同調できる量まで持ってって貰うしかないわ』


(...まじかよ)


頭を抱えたくなるようなことだ。何より問題なのは、【魔力増強】なんてスキル聞いたこともないってことだ。

もしかすると、【共鳴者】と同じように、俺の世界にはないが、マーリンの世界にはあった。みたいなことも十分有り得る


『そうなのよねぇ~。そこがネックだから、“反対派”が台頭して来ちゃったし...あ』


あって言ったぞ、この女。

しかし、──“反対派”。マーリンの言葉から、この単語は俺に関わることだと思う


(...“反対派”って、なんだよ?)


『...あら?アタシ何か言ってた?』


(誤魔化そうたってそうはいかねぇぞ?ずっとグチグチ言い続けるからな)


『...はぁー、考えが共有されるって不便よねー。こういうのも筒抜けになっちゃうものね...』


『...本当は言いたくなかったけど、あなたと同調した“勇者”の全員が全員、あなたに力を貸そうとは思ってないってことよ』


告げられた内容は、ただでさえ厳しい俺の道のりに、まきびしをぶち撒けるかのような内容だった。

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