第13話 決心
森を駆ける。地道なことだがスタミナは全ての基本だ。戦いに限ったことではなく日常的にも持久力を必要とする場面は多々ある。例えば今まさに俺がしているように、長い道のりを自分の足で進むことになった時とか。
(かといって、ベイリオンまで走り続けるってのはだいぶ無茶なんだけどなっ!)
2人と別れた後、アルザードが俺に言い渡したのは走り込みだった。別にこの森を駆け抜けろと言った訳ではなかったが、きっと“勇者”なら、これぐらいなんてことなく走り抜けるハズだ
(俺は器じゃない!だから、多少無茶でも、焦らなきゃいけないんだ...!)
魔王が悠長に俺の完成を待つとは考えられない。今この瞬間にも、刻一刻と世界は終わりに近づいているんだ。
(焦れ!もっと焦れ!俺!!)
『焦るのはいいけどよ、オーバーワークは負担にしかならねぇぞー。適度に焦れ、身体壊したら、それこそどうしようもねぇ』
(だからって、周回遅れの俺が、ペースなんて言ってられねぇ、だろ!)
俺は走りながら、ずっとアルザードと話していた。スキルや魔力は使えば使うほどに成長していく。こうしてアルザードと会話しているのが、現状、最も効率的なスキルと魔力の伸ばし方という訳だ。
『少なくとも、お前が自分の力で同調できるだけの魔力になれば、やりようもあるんだがなぁ』
(現実逃避すんな!教えてくれ、俺はあと、どれぐらいで同調を使える!?)
『あー、そうだなーこのまま行けばあと、1、2年ってとこか?』
(長すぎる!もっと効率的なのは!?魔術をやってみるとか!)
『魔術か...俺はその辺詳しくねぇからな。詳しい奴に代わるか?』
(そうしてくれると、助かる!俺はまだ自分の意思で同調相手をコントロールできないッ!)
そう、自覚はあったが俺は俺の意思で同調相手を選んでいない。【共鳴者】の主導権は“勇者達”が握っている。
『んじゃ、代わるわ。じゃーな坊主、こいつほど魔力に詳しい奴は、そういねぇ』
そう言うと、アルザードの気配が俺の頭から消えた。
『へぇー!坊やもとうとう、アタシの力を借りたくなった?』
アルザードと取って代わるように聞こえてくる透き通るような女性の声。当たり前だがそりゃ、女性の“勇者”もいるか
『じゃーまずは自己紹介しときましょうか!アタシはマーリン!“理の勇者”とも呼ばれていたわ!』
(“理の勇者”...てことは、あんたが魔力に精通している“勇者”なのか)
『その通り♪可愛い坊やでずっと気になってたのよね~!なのに、粗暴なアルザードが独り占めにしてて話せなかったじゃない?』
なんか、今までのやつらと違う
(え、えぇーと、ありがとう、ございます?)
『うんうん!そういうウブな感じ、めっちゃイイ!』
やり辛い...こういう話がしたいわけではなかった。
(あの、魔力のことについて教わりたいんだけど...)
『んー?あぁ!そうだったわね!ごめんなさい、アタシ、興奮しちゃってた』
『じゃ、気を取り直して、魔力について教えましょうか』
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