第12話 訣別
あれから、森を抜けた俺はメリッサとイザベラさんの家に向かい、2人に遺品のペンダントを渡し、事情を説明して、心からの謝罪を2人のに向けた。
それで許してもらえるとは欠片も思っていなかった。俺が2人の立場なら、行き場のない感情を目の前の人間にぶつける以外にはどうしようもないと、そう思うからだ。なのに──
「そっ、か...お父さん、最期まで人のために生きたんだね...だったら、だったら...!ッしょうがない、よね...!」
そう言って、泣き崩れるメリッサ。
「...メリッサ...ごめんね、お兄さん。この子お父さんっ子でねぇ...みっともないとこ見せてごめんねぇ...!」
イザベラさんも、涙を堪えきれなかったようだ。...これが、俺の壊した幸せだ。しっかり、目に焼き付けないと
「...なんで、謝るんですか...謝るのは俺の方だ...!俺のせいで、ご主人が亡くなったというのに!」
「あんたのせいじゃない!!!」
「!!」
「あんたのせいじゃない!あの人はね、昔から困った人に手を差し伸べずにはいられなかったんだ、だから、あの人は、エドは!自分の意志を全うしただけなんだよ!」
「それをあんたのせいだなんて言ったら、エドは、ただ不幸だっただけじゃないか...」
「!それ、は...」
そう言われたらもうこれ以上謝ることなんて、できなかった
「...分かったかい?あんたはエドの最期の勇姿を目にしたんだ、それをそんな悲劇みたいに語らないでおくれ...」
「...はい、彼の親切さは、きっと“勇者”でさえも讃えるはずです」
「はは、勇者様のお墨付きだなんて、それほど名誉なことはないね...ありがとね、気を使ってくれて...お兄さん、あんた心優しい子なんだね」
「いえ、俺なんて全然です...」
そう言って、俺は足を再び森へ向ける
「...行くのかい」
「はい、俺にも、やらなければならないことができたので」
「そうかい...じゃ!達者でね!また、いつかこの街に立ち寄ることがあったらいつでもおいで!歓迎するよ!」
「ッ!はい!ありがとうございます!」
そして、今まさに森へ向かおうとしたその時
「待って!!」
メリッサの声が俺を呼び止めた
俺は足を止め、振り返る
「名前!お兄さんの名前!聞いてなかったから!」
そう言えば、まだ名乗っていなかったのか。すっかり名乗った気になっていた。
「まだ、名乗ってなかったな...俺は、ジェームズ。ただのジェームズだ」
「ジェームズ...分かった!ジェームズさん!忘れないからね!」
「ッありがとう!俺もきっとメリッサとイザベラさんのことを忘れない!」
「うん!またね!ジェームズさん!」
そして、俺は2人に背を向け再び森へと向かう。
もう馬車はいらない、これからは、俺は俺の足で歩んでゆく。たとえどれだけ厳しい道のりだったとしても。
(そうだ、俺は、もう逃げない)
心に、確かな光が宿ったことを感じた。今は小さな種火でも、いつか──
魔王の脅威から人々の幸せを守れる極光にしてみせると、俺は誓いを確かなものにした。
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