第6話 運命
『長え回想は終わったか?ジェームズ、だっけか。目ぇ覚ませ、こっからは現実の話をしよう』
俺の意識を包み込んでいた闇が、その一言で明転する。
(どう考えても気絶していい場面じゃなかった!盗賊は!?...いない?どういうことだ...さっきのは走馬灯で、本当に死んじまったのか?俺...)
だとすればここはあの世か、天国にしろ、地獄にしろ、随分と湿気ている。これじゃ成仏なんてできやしないだろう。なんて考えている最中だった。
『だからァ!現実の話をしよう!って言ってんだろーが!!』
突如、怒号のような声がどこからか聞こえて来た。
(!?なんだこの声...俺に言ってるのか?まるで頭に直接響いて来るような...いや、というかこの声は、)
『お前以外誰がいるんだよ!!』
その声は、やはり気絶する寸前に聞こえて来た声と一緒だった。
『ようやく認識したかよ...混乱してるのか知らねーが、戦士としちゃ三流もいいとこだぜ』
(あんた、なのか?俺を助けてくれたのは)
『あん?まぁな!お前の弱っちい体でも、あれぐらいわけねぇぜ!』
...言葉の多いやつだ。自信に溢れた声からは強者の風格が漂っているが、人格者という訳ではなさそうだ。
『おい、坊主。心の声がダダ漏れだぜ』
ん?そう言えば心の声が聞こえているようだったな
(なぁ、あんた一体なんなんだ?声は聞こえるのに、姿は見えない。俺の理解を超えているんだが...)
『へぇ~?人格者ではなさそうな俺に聞くって?』
(うっ...なぁ、悪かったよ。改めるから、どうか教えてくれないか)
『まぁ、これ以上ややこしくしてもしゃーねぇからな。喜べ!特別に俺様が手ずから教えてやるよ!』
...我慢だ、我慢。
『簡単に言えば、俺の存在はお前のスキル【共鳴者】によるものだ。』
(あんたの存在が、【共鳴者】の能力だって?)
『そうだ。”俺の世界“では【共鳴者】は特別相性の良い生物と同調して互いの能力を高めるスキルだった』
(ちょっと待て!あんた、【共鳴者】の能力を知ってるのか!?エノク司教ですら知らなかったスキルなんだぞ!)
『そのエノク司教ってのが誰だか知らねーが、【共鳴者】のことで俺より詳しいやつはいねー!断言できる。だから“あいつら”の代表として、わざわざ俺が出張って来たんだ』
(【共鳴者】に詳しい...?なんか、色々聞きたいことはあるけど、あんた、本当に何者なんだ...)
『お、聞いちまうか!?いいぜ!教えてやる!数多の竜を駆り、音より速く敵を討つ!古今無双とは俺のこと!人呼んで、“竜の勇者”アルザード・アルビオン!お前と同じ、【共鳴者】を授かりし者だ』
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