第9話 これが、一番公平で、かつ効率的な方法……めう
みかんが人間界から追放?
決定事項……?
断片的に脳内へ情報が入ってくるが、今の私の状況では処理が仕切れない。
待って待って待って?
人間界から追放と言うことは、もう私は、みかんと一緒に居られないってこと……?
――嫌だ嫌だ嫌だっ!!
そんなの受け入れられないよ。今更、そんなの受け入れられる訳がない。
だって、あの素人童貞クソニートからの通報なんて何の説得力も無いでしょ。それが何故、一瞬にして人間界から永久追放という話になってしまうのだ。
そうだ。
これは、正式にアンドロイド審査会で推し量ってもらえば、すぐに真実であるか正確に判断してもらえる。あんなおっさんの気まぐれが、何のチェックもなしにまかり通るなんて不公平だ。
「ねえっ! 裁判はっ?! 犯罪の刑を決めるのって弁護士が居て、裁判があって、その上で量刑されなきゃ不公平じゃない!」
「そんなの知らないめう。それは人間界の話めう。アンドロイド審査会では、証拠データを確認後、アンドロイド法に従ってシステマチックに刑が確定し、そして粛々と刑が執行されるめう」
羊っ娘は、ツーンと他人事のように決められた文句のように機械的に答えた。よくある質問に書かれている質問の回答を読み上げているような感覚に陥る。
そんな決まり事みたいに言わないでよ。みかんと私の関係を、そんなに簡単にぶった切らないで欲しい。
せめて、せめて、公平な場で、誰もが納得する形で判断して欲しい。
「そ、そんなの! ……不公平、だよ」
「いやこれが、一番公平で、かつ効率的な方法……めう」
羊っ娘は相変わらず何の感情も無く淡々と言い放つ。血も涙もないアンドロイド、温情など全くない。プログラムに沿って決められた手順を淡々と粛々と進めて行く。
ああ、そうか。
みかんだって、お気楽キャラで人間っぽい振る舞いを見せていたけれど、それは博士の、おっさんの組み込んだプログラムに沿って忠実に動いているだけなのだ。
彼の趣味、性癖が、みかんに反映されているだけ……ということ、ただそれだけなのだ。
――慌てふためいているのは私だけなのだ。
羊っ娘の話を冷静に聞いていたみかんが、私の肩をポンっと叩いた。
「キグルミ娘に何を言っても時間の無駄ってヤツだよ。とりあえず、ガッコ行って、授業終わって、家に帰ったら、おっさん締めあげればいいんじゃね? てへぺろ」
「キグルミ娘じゃないめうっ! はーちゃんめうっ!!」
「ほいほい。さてさてガッコー行くよー。あかねちんっ」
――まあ、良いめう。
――あと数時間の命めう。
――せいぜい楽しむと良いめう。
羊っ娘は、私達を追いかけることを止め、シュッと姿を消してしまった。
みかんは、羊っ娘の行動を知ってか知らずか、私の手を取って真っすぐに学校に走った。王子がお姫様の手を握って悪者から逃げるかのように走った。
私の手を握るみかんの手は、暖かくて柔らかくて白くて細くて、とても綺麗で。
――失いたくない。
思った。
最初は望まない姉妹だったのだけれど、今となっては、かけがえのない妹。唯一私の本性、性癖を知っている、ただ唯一、世界でたった一人の妹。
その妹が居なくなるなんてあって良い訳がない。
――私が守らなきゃ。
私が。
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