第6話 ロボから出された条件
「じゃーあー。アタシがあかねちゃんの秘密を他に漏らさない条件はーあ。じゃかじゃかじゃか……てへぺろ」
本当にふざけたヤツだ。
ロボだから仕方がないのかもしれないけれど、真顔なのに緊張感が全くない。
だけれど、ここで彼女のことを怒らせて機嫌を損ねる訳にもいかないし、私は歯を食いしばりグッと気持ちを堪えた。
ロボは一体、どんな条件を出してくるのだろう。ロボが出してくる条件と言ったら、何だろう?
全く想像がつかない。
昨日遭遇したばかりで、ロボの動向を読む方が無理な話か。
覚悟を決めよう。
背に腹は代えられない。
私が腐女子であることを吹聴されないためだったら何でもやってやる。やって見せようじゃないの。
「なに? 早く言ってよ!」
「何だと思う~? てへぺろ。」
「早く言って! 私のことバカにしてるの? 私は真面目に聞いているの! 茶化さないで!」
こいつ、本当に性格悪いな。
博士の性格が、そのまま反映されてしまっているのかもしれない。ロボの振る舞いを見ていると、博士が女からモテない素人童貞クソニートと言うことが会わなくてもわかる。
イライラして目が血走っている私に対して、ロボは慌てる様子も無く冷静かつ穏やかに私のことを諭すのだった。
「まーまー落ち着いて。そんな大したお願いじゃないし、心配しなくて良いですよ。お願いは1つ。
「……え? それだけ?」
「うん。それだけ」
ロボの意地悪に、そして少し照れた様に微笑む姿、とてもキュートに見えた。
最初に出会った時よりも表情の変化が、少しずつ増えている気がする。それにしても条件が、ロボが生活しやすい環境づくりか。
ついさっきまで私はロボのことを家から追い出そうとしていたのに、追い出すどころか一緒に生活しなければならない。真逆の方向に話が向かっていってしまっている。
だけれど、この秘密を。BLワールドのことを、絶対に他人にバラされる訳にはいかない。
私には、もう選択の余地は無かった。
そう言えば、さっき「てへぺろ」言わなかったな。
「てへぺろは言わないのね」
「てへぺろの使い所を少しずつ学習しているのだよ。シリアスな状況下では言ってはいけないのかなーって。これでもアタシ
「今シリアスなのに、てへぺろ言ってるじゃない! ああ、最初、あなたは無表情だったのに、少し笑うことができているのもAIのお陰と言うことね。」
「AIのお陰……うん正解! あかねちゃん賢いね~。それでアタシの条件に対する答えを聞かせてくれるかな。てへぺろ。」
うーん……
選択の余地は無いと言っても、これからずっとロボと生活することを考えると厳しいものがあるよな。
でも、やっぱり秘密をバラされる訳にもいかないし、まずここは了承しておいて、後の流れで何とかするしかないか。
「……わかったわ。あなたが生活しやすい環境づくりに協力……する」
「わーい! あかねちゃんありがとう!」
ロボが両手を広げて、私に飛びつき抱きついた。そんなロボの無邪気な姿に、
私のクローゼットにあるBLワールドが、ロボにバレてしまったけれど、これから一緒に生活することを考えたら、早めにバレて
それにしても、抱き着いてきたロボの体温、サラサラの髪、柔らかくてしなやかな身体、胸の感触……本当に人間と変わらない。ロボだと言われなければわからないほどの精密さだ。
突然妹が出来てしまったけれど、16年間ずっと一人っ子で過ごしてきて、兄弟が欲しいと思うことも無かった訳ではない。私はそっとロボの頭を撫でた。
「よろしくね、みかんちゃん。」
「!!!!」
「どうしたの?」
「嬉しい! 名前呼んでくれて嬉しいよ―!」
ロボは、私から少し離れて私の両腕を掴み、驚いた顔をしてみせた。
これもAIのチカラってヤツなのかな。嬉しい感情、悲しい感情……これからどんどん吸収していくのだろうな。
赤ちゃんが少しずつ成長していくみたいに。これから姉妹として接することにしよう。せっかく双子の妹ができたのだ。可愛い妹が。
「さて、そろそろ朝ご飯だよ。クローゼットの鍵は必ず閉めてよね。」
「了解だよー。ろっくくろーぜっとーっ! えい。てへぺろ」
ロボがクローゼットを指差して呪文を唱えると、ドアノブからカチャリと音がして施錠される。
便利な機能だな。
鍵を持って歩く必要がない。それどころか、
さて、朝ご飯。お母さんは、ロボのことを覚えているかな。
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