第4話 しょうがないですよー。博士の趣味で仕様ですからねー。
待って待って?
どう言うことですか?
意味が分からないのですけれど……!
何故お母さんは、すんなりとロボの存在を受け入れている訳?
全く目前の状況が理解できない。いや、脳が、身体が、心が、この事実を拒絶している。
「あなたっ! お母さんに何をしたの?!」
「えーと、人間界の言葉で表現すれば洗脳かな。あかねちゃんと私は、二卵性の双子。で、私が妹……って言う設定だって博士が言ってた。てへぺろ」
また出た素人童貞クソニート。
二卵性の双子とか、どんだけ強引な設定なのだ。顔が似てないから、一卵性じゃなくて二卵性の双子設定と言うことか。安易すぎる。
「なんで二卵性なの?」
「あーね。一卵性にしたら、どのあかねちゃんを選んで良いかわからなくて困るんだってさー。てへぺろ」
「きっも!」
どんな理由だ。でもまあ、私似のロボットが何体も居るなんて、それはそれで迷惑な話だ。
結果、ロボと似ていなくて良かったのかもしれない。
私が黙々と考えている間、ロボは大人しく待っていた。けれど、流石に長くて待ちきれなかったのか、ロボは一方的に淡々と話し出した。
「それで、私は生まれてからこの方ずっと原因不明の病気で入院していた」
「え、いきなり何よ?」
戸惑う私の様子を気にせずにロボは無表情に話を続ける。
「それで、ある日、難病が治るミラクル的な出来事があって、奇跡的に急激に元気になっちゃって、今日、退院して家に帰ってきた……って設定だ。って博士が言ってた。てへぺろ」
「なんだそのB級ライトノベルでも無いような緩い設定は?!」
私の言葉を聞いて、ロボは不服そうに首を左右にコキコキと傾げる。
「そうなんですかー? 博士は完璧なミッションだ。って言ってましたけれど。てへぺろ」
「何を言っているのよ。完璧どころか不完全にもほどがあるわ。そんなつまらないことで、お母さんのこと洗脳しないでよっ!」
さすがの私もブチ切れそうになるが、ロボは至って冷静さを貫いている。感情が無いかのように、ってロボなんだから当たり前なのだけれど。
「まあ、もうやっちゃったものは取り返しがつきませんからね。これから気を付けるってことで許してくださいな。てへぺろ」
「もう、本当にやめてよね」
大体、さっきの お母さんへの洗脳だって、たまたま偶然上手くいっただけで、今後失敗する可能性は大いにある。そもそも お母さんだって正常に洗脳が行われたと言う証拠は何処にもない。
「まーまー。細かいことは気にしないでくださいよ。私も無事家族に受け入れられたことだし、良かったじゃないですか」
「それが良くないって言ってるの!」
「あははは。あかねちゃんは面白い人ですね。さて、もう寝ましょうよ」
「面白くなんてない。それに寝るって何よ。……ああ、充電するってことか。どこまで図々しんだ、このロボは」
「充電くらいさせてくださいよー。私ったら今日は色々と無理して偉かったから、そろそろバッテリーが切れちゃうっぽいんですよ。てへぺろ」
爆弾発言を次々に披露した挙句、のほほんと気安く充電を要求するロボ。数々の急展開に身体がついて行かず目眩がする。もう脳が付いて行かない。物事が考えられなくなってしまった。
もう、いいや。
私は半ば諦めて、部屋の隅にあるコンセントを指差しロボに伝えた。
「はあ。コンセントはそこにあるわ。勝手にどうぞ」
「ああー。残念ながらコンセントはいらないのですよね。てへぺろ」
「え、充電って電気から動力を摂取するんじゃないの? コンセントの形状が違うってこと?」
「あーうーん。形状が違うというか充電形式が違うかな。まあ私に任せておいてくださいよ。てへぺろ」
この調子で、次々に私の周りの人々を洗脳していくのだろうか。家族はもちろん、学校の友達、先生、おじいちゃんおばあちゃん……キリがない。もう気が遠くなってきた。
「あかねちゃん。パジャマと下着借りますね。てへぺろ。」
そんな私の気も知らずにロボは、マイペースにチェストの引き出しをパカパカと開ける。
って、おい、やめてくれ。
乙女の領域に土足で踏み入らないでくれ。
色々と見られて都合の悪いものが、所々に入っているのだ。
「ちょ、ちょっとー!」
「いいからいいから。おかまいなくー。てへぺろ。」
構うわっ!
むしろお前が構ってくれ。
だけれどロボは、迷わずクローゼットの扉に指を掛ける。そう、私の魅惑のBLワールドが広がる鍵付きクローゼットに。
「そ、そこはダメっ!」
「お、おお? どーしたんですかー。おかまいなくー」
いやいや、だからロボが構わなくても、私が構うんだってば。例えロボでも、魅惑のBLワールドのことを知られてはならないのだ。
私は慌てて、その場を取り繕う。
「その中は散らかってるから開けないでね。ね。ね」
「ふーむ。そうなんですかー。まあ良いですけれども。てへぺろ」
「ほらっ、下着とパジャマ。これ使って!」
「あー。ありがとうございます。下着探しは、宝探しみたいで面白かったのですが、ネタバレされた気分で少し残念ですね。てへぺろ」
「いいから、早く着替えて早く充電して!」
「はいはい。わかりましたよ」
ロボは、鼻歌を歌いながら、一気に躊躇なく服を脱ぎ去り、着替え始めた。
このロボ遠慮だけでなく羞恥心も全くないな。
――それにしても綺麗な身体をしている。
私は、ロボのことを下から上まで身体の隅々まで凝視した。
今まで服に隠れてはいたが、透き通るような白い肌に加え、何より胸が大きい。デカい。腰も括れて足が長い……完璧なプロポーションでモデル体形だ。
具体的に例えるなら、ファッションモデルと言うよりは、グラビアモデルかな。
とても、彼女いない歴イコール年齢の博士が作ったロボとは思えない。何を参考にして作ったんだ羨ましい。と言うくらいには、細部にわたって完璧に作られている。
「ちょっとー。あまり見ないでくださいよー。恥ずかしいですよー。てへぺろ」
一糸纏わぬ丸裸のタイミングになってから、私のことを批難するロボ。いや、批難するなら服を脱ぐ前にしなよ。
まるで裸をみられたら、恥ずかしいとロボがシステム的に判断を行った結果、義務的に言葉を発しているかのようだった。
あくまでも形式的で無表情に私を批難しているようで、実際には何も考えていない風に見えた。
「そう言えば、博士って、彼女居ない歴=年齢ってことは童貞?」
「ちがいますよ。」
「え、どういうこと?」
私は混乱する。
うーん。彼女は居ないけどセフレは居るってパターンか……?
この博士、実は凄いイケメンで、固定の彼女は作らない的な。親が超金持ちで、博士はお坊ちゃま的な。
私が色々と妄想を繰り広げているとロボは私の疑問に対してサラっと答えたのだ。
「この小説はR15とかR18指定していないから詳しくは言えないけれど、そこら辺は金で解決したみたい。もちろん親の金だけどねー。てへぺろ。」
「うわー最低」
あ、でも金で解決って、どういうことだろう。やっぱりセフレ的な……いやいや、これ以上深く追及しないほうが良さそうだ。それこそR18に引っかかってしまう。
それにしてもロボは、繊細な身体をしているし、私だって、ロボと言われなければ、彼女のことを今でも人間と思っていることだろう。
だけれど、ロボを作った博士は、技術的には頭脳明晰で手先が器用な人らしい。多分、やる気を出せばニートなんて簡単に脱出できるに違いない。
とは言え、このロボを作ったこと自体、ニート脱出への第一歩なのかもしれないけれど。
まあ、そこら辺は私にとっては、どうでも良い話だ。
「さーて! あかねちゃん寝ようよ!」
「あ、うん。そうね。早く寝ないと明日ヤバいわ。じゃあ、あなたは床で寝て」
ロボに人権を与えることは無い。
ここは私の部屋なのだ。何と言われようとベッドは私が使わせてもらう。
だがしかし、ロボはサラッと言ってのける。
「あかねちゃんと一緒に寝ないと私ってば充電できないんですよ! てへぺろ」
「一緒に寝ないと……? どう言うこと? そもそも充電ってアダプターとか使ってコンセントから電気でするんじゃないの? コンセントなら、そこにあるわよ?」
「残念ながら電気からの充電ではないのですよー」
「え、どう言うこと?」
「あのクソ博士が、電気からの充電。そんな普通の仕様を許す訳がないのですよ。まあ、一応、ごはん食べたら充電される仕様でもあるのですけれどね。でもご飯だけじゃ100%満充電は行えないのですよ」
ちょっと何を言っているのかわからない。
ごはんを食べて充電できるのなら、まあ、最悪キッチンに行っておにぎりでも作ってあげるか。
「満充電じゃなくてもいいんでしょ? 今、おにぎり作ってくるからちょっと待ってて」
「あ、ちょっと違うんですよね~。てへぺろ」
「は?」
私は、ロボの奥歯に物がつっかえた様な遠回しな表現にイラついた。
「何と言いますか、そこら辺は博士のくだらないプライドと言いますか。なんともかんともな感じで。てへぺろ」
大体、ご飯が食べられるなら、それで満充電できるようにしてしまえば良いじゃないか。
それとも部位毎に充電の手段を変える必要があるのかな。本当に面倒くさい設定を作る博士だな。
「あなたの言う100%満充電を行う手段って何?」
「まーまー。百聞は一見に如かずですよ。早く寝ましょうよ。マジ充電やばいです。激やば死にそう。てへぺろ。」
いきなりグイグイ来るロボの勢いに負けて、私は急かされるがままにパジャマに着替えはじめた。
まあ確かに、もう時計の針は夜中の3時を回っているし、さすがに寝なければ明日の学校に差し支える。
と言うことで、私はパジャマに着替え終わり、ベットの上で仰向けに寝転がった。
ロボは私が横になったことを見届けて、ロボも続いてしれっと掛布団を捲って私の隣に横になった。シングルベットだから2人で寝るには少し狭いけれど、お互いに細身だから何とか眠れるかな。決して快適とは言えないけれど。
と、突然ロボが顔に手を当てて泣く素振りを見せた。
「あかねちゃーん! これじゃあ100%満充電できないよう。うえーん。」
「え、どう言うこと?」
「そっちむいて。ね?」
もう、てへぺろに満足したのか、今回は言わないな。
そして、流れる様にロボは私のことを自分とは反対向きの方向に寝返るように促したのだ。
ロボに背中を向ける形で横たわる。これはこれで落ち着かない。
――チョン
――チョン
私の脇腹にロボの指があたる。
「な、なに?」
「んーと。充電の準備ですよ。てへぺろ」
ロボは、私の左胸の下に左手を潜らせる。そして、同じようにロボは、私の右胸の上に右手を通してきたのだ。
ロボは横の姿勢で、私を挟み「前に習え」の姿勢になる。
「え、え、何、何?!」
一体、ロボは何をしているの?!
するとロボは、両手を胸に向けて……
――私の胸を鷲掴みにした。
……え、なに?
どう言うこと?!
「ちょっとっ!! なにすんのよ!!」
「えへへー。私はね? あかねちゃんの人肌から、もっと言うと、おっぱいを揉むことで満充電される仕様になっているのですよ。えっへんてへぺろ」
「!! いや、マジありえない! やめて!」
「んんー。しょうがないですよー。博士の趣味で仕様ですからねー。他のことを差し置いても、これだけは譲れないそうですよ。と、言うことで、おやすみなさーい。てへぺろ」
「どんな趣味よ! 変態っ!!」
今、ロボから発せられたてへぺろは、本当に照れ隠しのように聞こえた。
挙句、ロボは挨拶と共に黙り込んでしまった。つまり、パソコンのようにスリープ状態に入ったと言うことなのか。
って、それにしても胸を揉むことで充電を行う仕様と言うのは勘弁してほしい。
だって、背中にはロボの柔らかい巨乳が当っているし、私の胸を揉むロボの手のひらが微妙に動いて、不定期に私の乳首を刺激する。
――……あんっ!
だって、生まれてから今まで他人から胸を揉まれることなんて、触られることなんて無かった。だから、初めての経験で思わず声がでてしまうのも仕方のないことだよね。
うん。
仕方がないよ。
それにしても、こんな状況で眠れるのかな?
いや、眠らなきゃ!
結果、私はロボに胸を揉まれて、悶々としながら、朝を迎えることとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます