回想の手紙

 ーーえ?

 肩を叩かれて、現実に引き戻される。

 『いつまでそんな顔してるの?』

 目の前には呆けた希望の顔。

 ーーそれはこっちが聞きたいくらいだ。

 「別に俺、父親がそうなだけで、俺は違うから。 俺が書くなんて、そんなこと……」

 動揺、しているのだろうか。どんどん早口になっていくのが自分でもわかった。

 『別に今じゃなくていい。 それより、洸さんの部屋見せて』

 希望が見せてきたパソコンの画面にはそう表示されている。こんなことで気を使わせるつもりはなかったのに。

 希望を連れて、以前書斎だった部屋へ向かう。父の場所。父だけの場所。入るのはあの日以来か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る