改めの手紙
俺が手に入れた彼女の情報は2つだ。高校生であることと、声が出ないこと。なにか既視感があることに、気づきはしないだろうか。追加できる項目は表情筋が機能していないことくらいである。
「できれば、君の話も聞きたいな」
話し始めてから、ずっと相手の質問攻めでなにも聞くことができない。やっと隙を見つけ、聞くことができてもはぐらかされてしまうのだ。
「小玉さんて、俺のこと嫌い?」
そのくせこの質問には、はっきりと答えた。性格が悪そう、だと。
ーーわかってるじゃねぇか。
俺は喧嘩がしたくて家まで連れてきたんじゃない。そう心を落ち着かせる。
すると希望は聞いてきた。
『私はあなたのお父さんに用があるんだけど。 どこにいるの?」
普通だったら、答えない質問だった。いや、答えられないの方が正しいか。人に聞かれる事なんて滅多にない質問。
「父さんはもうここにはいないんだ」
『じゃあどこにいるの』
「場所は教えられないし、君に会わせることはできない」
何度言っても希望は食い下がらない。どうしても堪えきれなかった俺は吐き捨てた。
「なんでそこまで俺の親父にこだわるんだよ。やっぱり有名作家だったからか? ま、だから会いにきたんだろうけど」
希望は怯んだのか、一瞬顔を顰める。しかしすぐに元に戻り、その顔で思いがけない提案をしてきた。
ーー『べつにあなたが書いてくれてもいい』
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