可能性の手紙

 指定された時間より、だいぶ早くにカフェに着いた俺はソワソワしていた。これから手紙の送り主に会うからだ。

 感情の内訳は、緊張5、興奮1。残りの4は知らない。きっと携帯と共に家へ置いてきたんだろう。

 兎に角、俺はそれくらい焦っている。

 よく考えてみると、俺が持っている相手の情報は、嘘か本当かわからない住所、高校生一年生であること、そして俺に人生を書いて欲しいことだけ。

 手紙がただのおふざけで、中身が嘘な可能性は十分にある。送り主がここに現れなくてもおかしくはない。最悪の場合、すっぽかされるだけでは済まないかもしれない。でも、今更後悔をしても仕方ない。

 腹を括った俺は三杯目のコーヒーを注文した。

 

 待てど暮らせど、待ち人は来ない。約束の時間から既に二時間は経っている。やはりいたずらだったか。期待していた分、残念に思えた。

 カフェを満喫できたことを素直に喜び、席を立とうとしたその時。

 ーーカランコロン

 店のドアに吊るされている鈴がなった。その音で俺は少し冷静になる。


 送り主は、俺のことをどれだけ知っているのだろうか。手紙を送ってきたのは住所を知っているから。それ以外は……、


 ……もし俺の顔を知らないとしたら?

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