じしんの手紙

 何事もなく日常は過ぎる。

 最後の手紙が送られてきてから数日、俺が返事を送ってから一日経った。

 住所を見る限り、そう遠くない場所だったので既に届いているだろう。


 俺はというと、久しぶりにネクタイを締めていた。

「東堂、遅れるよ」

 玄関にひょこっと現れたのは幼馴染の佐々木。ガタイがよく、面倒見のいいやつだ。

 こいつがいなかったら、単位……いや、出席日数すら足りなかったと思う。

「こっちの屋敷の方が近くて迎えに来やすい」

 そう言って佐々木は、歯を見せニカっと笑った。こういう真っ直ぐなところは尊敬してる、見下ろされるのは癪だけど。


 目的を終えた俺たちは、帰路についた。寄り道をしたいと駄々をこねる佐々木を撒き、家まで急ぐ。

 届くならばきっと今日なのだ。

 俺は一昨日送った手紙に、会うことができないか、と書いた。手紙でのやりとりではなにかと不都合が多い。かと言って電話では前のようになってしまうだろう。

 住んでいるのは近くのようだし、会えば筆談でも何でも話す術はある。

 きっと会ってくれるーー確証がなくとも、自信を持った俺は郵便受けを開けた。

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