第18話 Boiled in sweetened with soy souse.




 涼太は朝から忙しい。

板長は、朝からは来ない。

今、居るのは、青い目の副板長と板前、そして板前見習いの涼太だけだ。

板前見習いは、朝からやるべき事をやりながら、何やらグツグツと鍋で煮込んでいる。

その様子を時々、青い目が伺っている。

きりの良いところで、板前見習いは、味を整えた出汁を小皿に取り、その味を確かめる。

心の中で「よし!」とガッツポーズをとりながら蓋を閉める。

隣の青い目が微笑んでいるように見えた。


 忙しく働いた後の開店前のひと時だ。


「今日の賄い料理は涼太が作ってくれた」


 板長は、仕入れなどの支出、売り上げの収入、そんな経営に関わる金銭の計算を終えて、今はカウンター席に座っている。

隣には青い目の副板長、そして前回の天麩羅の判定をした時には居なかった日本人の板前の菅野が座っている。

涼太は、目の前の三人に魚の煮付け料理を出した。

殆ど同時に三人が目の前の魚料理に箸をつけた。

三人は、口の中でモゴモゴとしていたが、ゆっくりと口の中の物を飲み下した。

店長は、煮付け料理の横に置かれた水を飲むと、


「菅野、どうだ?」


 と隣に座っている板前に聞いた。


「はい、板長、うちの店と若干味付けが異なりますが、大筋ではよく出来ていると思います」


 板長は、ゆっくり頷くと、副板長に同じ質問をする。


「ジャック、お前はどうだ?」


「ハイ、イタチョウ、アジツケ、チョットチガウ、デモ、キホンガデキテマス」


「うん、俺もそう思う。但し、この料理、今すぐに店に出す訳にはいかない」


 板長は、そう言うと今度はジャックを見ながら言う。


「副板長、うちの店の味付け、今日から教えてやってくれ」


「ワカリマシタ」


 そう答えると、ジャックは、ニヤリと笑って涼太に目配せをした。

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