第2話 Brooklyn, NY, United States.
「おい涼太、この味付け、どこで習ってきた」
「はい、板長。本店の板長に教えてもらいました」
「ここは何処だ?」
「はい、アメリカです」
「作り直しだ」
「はい、済みません」
杉浦涼太は、合点が行かない。
本店の店長、兼総板長に教わった通りに味付けをするが、アメリカ、ニューヨーク支店の此処、ブルックリンでは、どういう訳だか支店長に認められない。
支店長、兼板長は、自分の作った料理の味を涼太には教えない。
本店の板長に推薦状をもらってアメリカまで来て、何年になるのか。
初めて支店に来た時は、支店長に褒められた。
元々器用だった涼太は、此処で飾り包丁の腕を見せた。
数人しかいない板前達が、其の腕前に屈服せざるを得なかった。
そして、店長でさえも驚きを隠せなかった。
しかし、料理全体の味付けに関しては、首を縦に振ってもらえる事が無かった。
涼太は半ばふて腐れていた。
支店の味付けもろくに教えてもらったこともないのに、この味付けでは無い、と言われるばかり。
さらに涼太には自負がある。
本店店長の出汁の取り方、味付けの仕方、全て習ってアメリカに来た。
なのに支店長は首を縦に振ろうとしない。
一体、何が気に入らないのだ。
そんな憤り、それよりも今は、自分自身に遣る瀬なさを覚えている。
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