第7話

 数日間、私達はお互いに交わす言葉も無く過ごした。

ぺペンギンさんも今は恒例になっていたジグソーパズルもしなくなった。


「しかしなぁ、美咲ちゃん居らへんかったら、パズルも全然、面白ろないな」


「・・・・・・・・・。」


「無口な奴と一緒にやっても面白ろないしな」


「・・・・・・・・・。」


 そして検査結果を聞く日がやってきた。

私達、ぺペンギンさんをポケットに入れて。

私は、医師が用意してくれた部屋に通され、向かい合って座った。


「検査の結果が出ました。率直に言ってあまり良い状態とは言えません」


「どういうことか教えてください」


「はい、ここにある検査結果を見ると肝機能がかなり落ちていることが分かります」


「どうして今まで分からなかったのでしょう?」


「これまでに疲れやすいとか、何か普段と違う事は有りませんでしたか?」


「妻からは何も聞かされていません」


「ご主人から見ても普段と変わらない生活であったと思われるんですね?」

「はい、今回の偶発的な事故があるまでは普通に暮らしていました」


 言って直ぐに、普通に暮らす、なんと偉大な生活なのだろう、そう思った。


「そうですか」


「・・・・・・・・。」


「では、先に病名をお伝えしますが、この病気は現在でも難病指定されている病気で、原発性胆汁性肝硬変、と言います。お話を伺ったところ、症状がなかったということで、無症候性原発性胆汁性肝硬変と思います。この場合、厄介なことは、症状が出なかった期間に病気が進行している可能性が高いということです。私達は検査結果を見て直ぐに病理検査を依頼しました。肝臓を数ミリほど取って、肝臓の状態を直接、顕微鏡で見る検査です。これで現在の奥様の肝臓の状態が把握できると思います。ただ最悪の場合も考えていてください。病気が進行していれば急性転化も有ります」


「其れって?」


「残念ですが根治療法がありません、我々の今の力では対症療法として病気の症状を抑えることしかできません」


「余命? 長く? どうなの、ですか?」


「それを今、調べているところです。病理検査の結果で変わりますが、先ほどお伝えしましたように無症候性の場合、自覚症状がないので其の期間に、かなり進行していることも想定していなければなりません。其の場合、黄疸などの症状が現れ始めた時点で、持って数日、とお考えください。しかし。これは最悪の場合です。私達の予測よりも進行が遅れていれば、適切な治療とともに、ごく普通に生活していけます」


「・・・・・・・・。」


「よろしいでしょうか?」


「はい、どうかよろしくお願いします」


「勿論です、できる限りのことはさせていただきます」

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