第6話



 私達は、二人きりの部屋に帰ってきた。

独身の時に戻ったと思えば其れ迄なのだが、独身の時のぺペンギンさんと二人きりの部屋より寂しい。

心配だ、大した事がなければ良いのだが。


「なぁ、まだ結果も出てへんのに、そない落ち込むなや」


「・・・・・・・・。」


「落胆するような事ってな、大概が突然やって来るもんやねんで」


「・・・・・・・・。」


「前にも似たことようなこと言うたと思うねんけど、いつまでも悩んでるよりかさぁ、この訪れてきた不運を、どうするか?ちゃうん。未来が幸運としてやってくるには、今の自分に何ができるかを考えるべきなんちゃうかなぁ」


「でも、今の私に、何ができるんですか」


「そーかなー、お前は最悪の場合ばっかり考えて落ち込んでるやろ」


「でも、何も心配するは事ない、と思っていて、もしものことがあったら辛すぎます」


「分かるよ、前に話した時って、お前自身の事やったからな。今度は自分以外の人のことやもんな。でもな、何も出来ひん、困ったなぁ、やだーどうしよー、じゃなくてな、そうか今こういう事か、ほなら自分はどう行動するべきか、ってこういう時こそ考えなあかんのちゃう?」


「私には、できません」


「そーかー、でも最悪の事ばっかり考えるのは良うないと思うで。お前の考えてる最悪って、もしも美咲ちゃんが居らへんようになってもうたらやろ」


「そこまでは考えていません」


「それ具体的に考えてへんだけで、もしそうなったらって、どっかで思てるから落ち込んでると思うねん。お前らはな、結局はな、最後の、最後の土壇場で、「行かんといてくれー」とか言うて、結局はな、散々にな、泣き叫ぶねん。そうならへんために何かをせなあかんのに、何もせん、を選んだんは、お前、やのに」


「・・・・・・・・。」


「今、この時点で、最善って何んやねん。落ち着いて考えるんもええんちゃうか」


「・・・・・・・・。」


「ほな、ワイは、一杯引っ掛けて寝るわ」


「こんな時に、よく飲めますね」


「せやな、この家にシングルモルトは置いてないしな」


「無いなら寝ればいいじゃないですか」


「それがあるねん、こうゆう時がきた時に、お前はワイの言うこと聞かんと一人で拗ねてる筈やから、其の時は一人で飲んでくださいねってな、美咲ちゃんがポケットウイスキーくれてんねん」


「・・・・・・・・。」


「ほな、お先に」


「・・・・・・・・。」


「もう一本あるけど、分けたろか?」


「要りません!」


「良かったわ、このボトルはな、お前が居らへんようなった時、美咲ちゃんと二人で飲むって約束して買うてくれた大切な一本やねん」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る