第20話 俺の願望と欲望

 翌日俺は歩きながら高校へ向かって居ると見慣れた背中を見つけた。

 そして俺は少し早歩きで追いつき声を掛ける。


 「おはよう、あかね

 「あっおはよう、涼太りょうた


 俺はあかねの顔色を見て続ける。


 「体調良さそうだな」

 「うん、元気だよ」

 「そうか、それは良かったな」


 俺はそこまでで話を止める。

 理由は昨日の事が頭をよぎったからだ。

 俺はあかねに催眠術を掛け気になる人を聞いた。

 するとあかねは俺を指で指した。

 ただ、どのように気になっているかは俺はわからない。

 まあ、今すぐあかねの気になる人を俺は知る必要がないよな。

 そんな事を考え俺はこの思考をやめ超常現象部ちょうじょうげんしょうぶの話を振る。


 「話は変わるけどあかね、俺のクラスで起きている超常現象ちょうじょうげんしょうの話どう思う?」

 「う~ん、どうかな。勘違いしている場合もあるからわからない」

 「確かにな俺も半分はあかねと同じ意見だけど、少し期待しているんだ超常現象ちょうじょうげんしょうってやつに」

 「ふふふ、涼太りょうたは昔からそうゆうの大好きだったからね。でも、あまり無茶しちゃダメだよ」

 

 あかねが微笑みながら俺に話掛けてきた。

 ふわりと風が吹き少しだが茶色に染めた髪が風になびく。

 俺の心臓がドキリと跳ねあがる。

 やっぱり俺はあかねの事が…。

 いやいや、今は恋の話は後だ。

 俺が今一番興味あるのは俺のクラスで起こっている超常現象ちょうじょうげんしょうだ。

 さあ、今日もクラスで何か起こるかしっかり観察しないとな。

 俺はいつも通りに教室に入り自分の席へ着く。

 そして俺は明らかな違和感を感じた。

 

 なんだろうこのクラスの雰囲気は…。

 とてもギスギスしているような感じがする。

 誰がと言うより全体的に感じる。

 俺はこの状況を作り出した張本人を見つけるべく観察を続けた。


 そして俺はある男の行動で目を止める事になった。

 その男は事ある毎に自分の右手を相手の左肩へポンと乗せる行動をしていた。

 これは催眠術とは違う。

 昔、本とかビデオで見た動作に似ている。

 

 <暗示>

 暗示とは言葉や合図など“自分が望む状態”を相手に繰り返し伝える方法だ。

 

 あいつは相手の肩へ手を置く事を繰り返して望む言葉を伝えている。

 俺はそいつが周りを気づつけないように配慮する為にメッセージを伝える。


 「よお、陣野じんの


 俺が声を掛けるとゆっくりと陣野じんのは俺の方へ振り向く」

 

 「なんだ、上杉うえすぎじゃないか?なんか用か?」


 陣野じんのは何気ない様子で答える。

 俺は周りにいる人物に悟られないように言葉をつづる。


 「俺、超常現象部ちょうじょうげんしょうぶに入ったんだ。だけど部員少なくて廃部になりそうなんだ。良かったら二人で話をしないか?」


 俺は嘘を交えつつ話をする。

 俺が話すと陣野じんのはピクリと眉毛を動かす。


 「しょうがないな、上杉うえすぎの頼みだ話ぐらいは聞いてやるよ」


 陣野じんのは俺のメッセージを受け取ってくれたらしい。


 「それじゃあ、昼休み飯食べた後に屋上に来てくれよ」

 「ああ、いいぜ。それじゃあ昼休みな」


 俺は陣野じんのの言葉を受け自分の席へ向かって歩く。

 サイはフラれた。

 さあ、どうやって能力者と対峙するかだが保険は必要だろう。

 俺はその他に出来ることを考えながら午前中を過ごした。


 *


 「待たせたか?上杉うえすぎ

 「いや、問題ない」


 俺は屋上で陣野じんのと対峙した。

 俺は深呼吸してから陣野じんのに率直に聞く事にした。


 「俺は回りくどい事は嫌いだ。率直に聞く。お前はクラスの連中を暗示・ ・に掛けて何を企んでいるんだ?」


 俺の言葉に陣野じんのは豆鉄砲でもくらったように口をポカンと明け、少しのフリーズの後口を開いた。


 「はっ!?大丈夫か上杉うえすぎ。もしかして変な薬とか変な本に洗脳されていないか?」


 俺は陣野じんのの反応に少し驚いた。

 もしかして俺は勘違いしているのか?

 陣野じんのは加害者ではなく被害者の方なのか?

 俺はどう言葉を返していいかわからないのでありきたりの言葉を返した。


 「いや、俺は薬も変な本も読んでいないぞ」

 「そっそうか、それなら安心だ。それでお前からの話だが俺は何も企んでいないぞ。まあ、企んでいるんではなく自分をアピールしているだけだ」

 「アピール?」

 「ああ、高校生と言えば青春!青春と言えば彼女だ!俺は彼女を作るために友達をたくさん作る様に動いているだけだ!」


 陣野じんのは拳を作りながら熱く語ってきた。

 俺は陣野じんのの熱い語りに少し納得してしまった。

 俺もあそこまでやるべきではないかと。


 「たっ確かに陣野じんのの言う通りかもしれないな。俺も彼女欲しいしな」


 俺は陣野じんの言葉に同調する。

 陣野じんのは俺の言葉を受け少し俺に近づく。


 「流石、上杉うえすぎ。俺と一緒にアピールに参加して彼女を作らないか?」


 俺は自分を信じて陣野じんのの顔を正面から見る。

 

 「俺も彼女欲しいからアピールしようかな」

 

 俺の言葉と同時に陣野じんのが俺にさらに一歩近づく。


 「俺と一緒にアピールしよう」


 陣野じんのの言葉と共に俺の左肩に陣野じんのの右手がポンと置かれた。


 その瞬間に俺の中に陣野じんのの言葉が流れ込んできた。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る