第19話 茜《あかね》と催眠術

 私は進藤茜しんどうあかね


 今私は涼太りょうたの行動…いえ言葉にどう答えようか考えている状態だ。

 なぜこんな事になったかは昨日の放課後に話はさかのぼる。


 涼太りょうた超常現象部ちょうじょうげんしょうぶに行く前に4組へと足を運んだ。

 そしてちょっとかわいく有名な、皆川涼子みながわりょうこを呼び出した。


 はぁ!?

 なんでこの女に声を掛けているの?

 涼太りょうたはいつからそんな男の子になっちゃったの?

 昔の涼太りょうただったら女の子を見るとすぐに照れちゃう可愛い子だったのに…。


 そして呼び出した皆川涼子みながわりょうこと共に超常現象部ちょうじょうげんしょうぶに行ったの。

 そこまではいい。

 だけど、いきなりの入部。

 私と涼太りょうたの領域に入って来た。

 私は叫んだ。


 「なんで頭数合わせのような存在を連れてくるの?そんなの涼太りょうたらしくないよ」


 だけど涼太りょうたに「あかねらしくないぞ」

 なんて言われて私は黙った。


 そしてあの女は涼太りょうたの事を下の名前で呼んだ!

 私は頭に血が上り部室を出た所で涼太りょうたに詰め寄った。


 「涼太りょうたはあの皆川みながわさんの事どう思っているの?」

 「どっどうって…どうも思っていないよ!」


 そして私はふら付いてしまった。

 後でわかったんだけど私は頭に血が上り過ぎた事によって熱が出た。

 我らながら情けない。


 でも、その後の涼太りょうたの行動は素早かった。

 ふら付く私の腕を取り涼太りょうたは持ち上げてくれた。

 ちょっとビックリして声を上げたけどうれしかった。


 そして保健室に連れてってもらいその後私は涼太りょうたに送ってもらい自宅に帰った。

 私はその日の出来事を思い出し抱き枕を抱えてベットで転げ回った事は秘密。


 私は体調はどうもなかったけど次の日は学校を休んだ。

 私は涼太りょうたに携帯でメッセージを送った。


 『今日は大事をとって休むね、昨日はありがとう』


 返事は『お大事に』と一言だけだった。

 冷たいと思った…思ったけどその心は夕方に一瞬で晴れた。

 涼太りょうたはお見舞いに私の家を訪ねてくれた。

 お土産…いや、お見舞いの品を持って。

 

 私は直ぐに帰ろうとした涼太りょうたを強引に引き留めて家に連れ込んだ。

 私にしてはちょっと強気な行動だったけど、責める時には責めなきゃね。


 家に上げてから私は今一番涼太りょうたに聞きたい事を聞いた。


 「皆川みながわさんの事とか少し聞きたくて…」

 だけど涼太りょうたの返事は得に変化なく安心した。


 そして私は涼太りょうたが帰ろうとした時に私は思いっ切って聞いた。


 「涼太りょうたって今好きな人いるの?」

 「なんでそんな事突然聞くんだ?」

 「えっただなんとなく気になったからだよ」

 「好きかどうかは分からないが、気になる人はいるかな…」

 「だっだれ!」

 「いっ言う訳ないだろう!あかねこそ好きな人いるのか?」

 「わっ私も気になる人がいるよ」

 「誰?」

 「教える訳ないでしょ」


 涼太りょうたの気になる人が超絶気になる。

 そして不安になる。

 もしかして皆川涼子みながわりょうこなの?

 あの子スタイルいいしすっごく可愛いし…。

 私はそんな事を考えていると涼太りょうたがたまにする行動をしてきた。


 私の目の前に右手を出して指を『パチン!』と鳴らしてきた。

 あーいつもの催眠術の真似事まねごと

 そして質問してきた。


 「あかね、お前の気になる人を言え」と。

 

 私は考える。

 ここで何言ってるの?と言えはそれでこの話は終わってしまう。

 だけど、いつも通りに催眠術に掛かったフリをすれば私に被害はないんじゃないかと思った。

 そして私は決断する。

 言葉ではなく態度で示そうと。


 私は催眠術に掛かったフリをして右手をスッと涼太りょうたを指を指す。

 私は心の動揺を抑えほぼまばたきをせず涼太りょうたを見つめる。


 私は動揺を押さえるのに成功したけど涼太りょうたは動揺を全面に出していた。

 目を大きく開き口も開きアワアワしている。

 私は思わず口に笑みを浮かべそうになったけど抑える。

 ふふふ、これで私の作戦は成功。

 もし涼太りょうたが催眠術を解いたとしても私は何の事?と、とぼければいいだけ。

 あとは男の子の涼太りょうたに任せよう。

 

 ◇◆◇


 あーなんだ!なんだ!

 俺はあかねに催眠術を掛けてあいつの気になる人を言えと命令した。

 するとあいつは右手を出して俺を指で指してきた。

 どっどうなっているんだ?

 

 もしかして俺の催眠術が効きすぎて言葉ではなく態度に変化してしまったのか?

 すっ凄すぎるぞ俺!

 いやいや、今はその事は後でいい。

 

 あかねの気になる人がこの…俺!?

 確かにあかねとは小6からの友達兼幼なじみに近い状態。

 幼なじみにしては期間は短いがそんなのは関係ない。

 俺がそう思えばそうなんだ。

 

 だが俺はここで失態に気づく。

 どう気になるかが問題だ。

 ただ但に俺の行動が気にるのか俺自身が気になるのか…。

 ここはもう一歩踏み込んで質問するべきか。

 

 俺は考える。

 いや、ここから先はやめておこう。

 俺は俺自身の欲望の為にこの催眠術を使うが、相手の心を暴くような事をしてはいけない。

 しかもそれがあかねならなおさらだ。

 悪い奴らなら心が痛まないがか弱い?女にそんな事は出来ない。


 俺はとりあえず心を落ちつけてからあかねの催眠術を解除する。

 俺が指を鳴らすとあかねはハッと我に返った。

 そして腕をゆっくり下ろして考えている。

 俺は悟られないように声を掛ける。


 「そっそれじゃ明日は学校に来いよ」

 「あっうっうん、たぶん大丈夫」


 俺は話題を変えあかねの返事を聞き立ち上がる。

 そして俺はあかねに見送られてあかねの家を出た。 


 あかねか…。

 俺はボソリと呟く。

 少し真剣に考えようかなと。

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