第17話 発熱とお見舞い

 俺は体調の悪いあかねに寄り添いながら保健室に向かいながら歩く。

 あかねは今まで我慢していたのかさらに息遣いが荒くなる。

 そしてあかねがふら付いていたので俺は茜の腕を取り俺の肩へ回し持ち上げる。


 「ちょっちょっと涼太りょうたなっ何をっ」


 あかねは動揺しながら声を上げる。

 俺はあかねの動揺を無視するかのように足を進め言葉を掛ける。


 「体調が悪いんだから黙って俺について歩けよ」

 

 あかねは俺に何か言いたそうに俺を少し睨むが、やはり体調が悪いのかそれ以上は何もせずに歩いていた。

 そして俺とあかねは目的地の保健室へ到着した。

 俺は直ぐに保健室のドアをノックする…が、応答がない。

 俺は保健室のドアを引いてみると鍵は掛かっておらずスッとドアは開いた。

 俺とあかねは保健室に入り確認するが保険の先生はいない為、俺はとりあえずあかねを空いているベッドに寝かせることにした。

 あかねはゆっくりとベッドに入り横になった。

 俺はあかねがベッドに入るのを確認するとあかねに告げる。


 「俺は保険の先生を呼んで来るから少し我慢して待っていてくれ」


 俺はあかねにベッド脇で告げ歩こうとした瞬間に、俺の制服の端をあかねが掴んできた。

 そして潤んだ瞳で口を開く。


 「行かないで」


 俺はその言葉と行動を見て赤面する。

 なっなんだこの感情は!?

 俺の心はどうなっているんだ?

 いやいや、その前にこのあかねの行動は熱によるものではないかと思った。

 俺はそっと俺の制服の端を掴んでいるあかねの手を握って言葉を掛ける。


 「大丈夫だ、すぐに戻って来るから待っててな」


 俺はあかねの手をベッドの上へそっと置いてやり保健室を出た。

 そして早歩きいや、廊下をダッシュして職員室へ向かった。


 *


 「少し熱があるようね、自分で帰れる?それとも親御さんを呼ぶ?」


 保健の女の先生を俺が呼んで来てあかねの熱を計り、保険の先生が症状を見てあかねに語り掛ける。

 あかねは少し考えた後に「自分で帰ります」と保健の先生に伝える。

 俺はその言葉を聞いて保健の先生へ告げる。


 「俺の家は彼女の家の隣なので俺が送って行きます」

 「そう、それならお願いしようかな。それじゃあ進藤しんどうさん一応マスクを付けて帰るようにね」


 保健の先生は戸棚から1枚のマスクを取り出しあかねへと手渡す。

 あかねは受け取ったマスクを装着してゆっくりとベッドから起き上がった。


 「それじゃあ進藤しんどうさんをお願いね」

 「はい、わかりました」


 俺は保健の先生に挨拶しあかねと共に保健室を出てそのまま学校を出た。

 あかねはいつもより足取りは遅いが1歩1歩確実に自宅へと歩みを進める。

 マスクをしているせいなのか俺と得に会話をする事はない。

 そしてあかねの自宅前に来た時にあかねは口を開く。


 「涼太りょうた、今日はありがとう、またね」

 「ああ、早く風邪直せよ」

 「うん」


 あかねはゆっくりと自宅へと入って行った。

 俺はそれを見届け俺も自宅へと帰った。


 あかねがあんな風に体調を崩すなんて初めてだな…俺は風呂に入りながらそんな思いにふけっていた。


 *


 翌日俺は学校へ向かう途中に携帯にメッセージが届いた。

 俺は携帯をチェックすると送信者はあかねだった。

 あかねが俺にメッセージをくれるなんて何か月ぶりだ?

 前のメッセージは中学3年の…まあ、いいかそんな事は。

 俺はあかねからのメッセージを確認した。


 『今日は大事をとって休むね、昨日はありがとう』


 短い文だったが要件はわかった。

 俺は『お大事に』と一言だけ返した。

 少し冷たいような感じもするが俺とあかねはメル友ではない。

 用事があるなら直接言うのがいつもの流れだからだ。

 まあ、病気なら仕方ないなと思いつつ俺は学校へと向かった。


 *


 俺は1日中同じクラスのある人物を注意深く観察した日だった。

 何故かと言うと超常現象部ちょうじょうげんしょうぶに俺のクラスで変な事が起こっているとの情報が入ったからだ。

 そして俺はクラスで一番最初に声を掛けた3人の内の一人陣野大輔じんのだいすけを観察していた。

 しかし残念ながら今日と言う日は得になにも起こらなかった。

 まあ、起こらない方が俺は安心するのだが。

 

 俺は学校からの帰り道にコンビニに行って果物のゼリーやヨーグルトなど体のいいものを購入した。

 これは今日学校を休んだあかねへの差し入れだ。

 正直こんな事をするのは初めてだ。

 俺は購入した商品を持ってあかねの家へ向かって歩みを進める。

 俺はなんでこんな気持ちになったのかを考えながら。

 そんな事を考えているとあっという間に目的地に着いてしまった。

 俺は着替えてからにしようと思ったが俺は思いとどまった。

 あくまでもついでに寄ったと言う感じの方があかねも気が楽だと思い、俺は学生服のままあかねの家のチャイムを鳴らす。 

 

 チャイムを2度ほど鳴らすとインターホンに声が聞こえた。


 「はい、どちら様ですか?」

 「あっ隣に住んでいる上杉うえすぎですけど、あかねさんのお見舞いにきました」

 「えっ!涼太りょうた!?」

 「その声はあかねか?」


 俺はてっきりあかねの母親が出たと思い丁寧な言葉を発したのにあかねだったとは…。


 「ちょっと待ってて、今家開けるから」


 そこでインターホンからあかねの声が消え『ガチャリ』と言う音と共に家の扉が開いた。


 あかねは上下ジャージの様なラフな服装で出て来た。


 「おう、体調は大丈夫なのか?」

 「うっうん、熱もないし大丈夫だよ」


 俺は心の中で安堵した所で右手に持って来た物を思い出した。


 「あっこれ体にいいと思って買って来たんだ」


 俺は右手を伸ばしてあかねに袋を手渡す。

 あかねは俺から袋を受け取るとチラリと中身を覗いていた。

 

 「あっ私の好きな物がいっぱいある」

 「そうなんだ、それはよかった。それじゃあ俺は…」


 そこまで言った所であかねが話に割り込んできた。


 「ねっねえ!少し寄って行かない?」

 

 よっ寄るってどうゆう事だ?家に入ると言う事か?

 俺が返事をせずにマゴマゴしているとあかねが言葉を続ける。


 「今、親いないからさっ遠慮しなくていいよ」

 

 親が居ないって…俺は正直迷った。

 親が居るとかいないとかではなくあかねの家に入るかで迷っていた。

 俺が少し考えにふけっているとあかねは突然俺の腕もって力を入れて来た。


 「涼太りょうた、さっ入って入って」

 「えっ!」


 俺は少し強引に家の中へと引っ張られてしまった。

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