第16話 初部活動

 俺は廊下を皆川涼子みながわりょうこあかねと共に部室へ向けて歩いている。

 俺にチラリとあかねの顔色を伺う。

 あかねの目線は横を歩く皆川涼子みながわりょうこを鋭く見つめていた。

 俺はなんとなくだが一波乱ありそうな予感がした。

 そして俺達3人は超常現象部ちょうじょうげんしょうぶの部室へやってきた。


 「皆川みながわさん、ここが超常現象部ちょうじょうげんしょうぶだ」


 俺はポニー皆川みながわに声を掛けると部室の扉を開ける。

 扉を開けると予定通りにメガネ男子である部長の石田いしだ先輩と、女子のくすのき先輩が椅子に座っていた。


 「失礼します」


 俺達3人は部室に入り部長達の前に腰を掛ける。

 俺達が座ると同時に部長が声を掛けて来た。


 「上杉うえすぎ君、それで、そちらの女性の方は?」

 「あっこちらは皆川涼子みながわりょうこさんで、超常現象部ちょうじょうげんしょうぶに入ってくれる方です」


 俺は自信ありげに部長に答える。


 「そっそれは本当かい?上杉うえすぎ君!?」

 「えっええ、ただ、彼女は頭数合わせで実際の活動は…」


 俺は最後の方の言葉をにごした。

 俺は先輩が次の言葉を発すると思ったが俺の予想は外れ横にいるあかねより声が上がった。


 「なんで頭数合わせのような存在を連れてくるの?そんなの涼太りょうたらしくないよ」


 あかねは俺を少し睨むような風に声を上げる。

 俺は正直ビックリした。

 あかねはいったいどうしてしまったのだろうと。

 だがこのままでは俺はマズイと思いあかねに声を上げる。


 「落ち着けあかね。どうしたんだ?あかねらしくないぞ」

 

 俺が声を掛けるとあかねは少し失敗してしまったかのようにうつむいてしまった。


 「いいかあかね皆川みながわさんがこの超常現象部ちょうじょうげんしょうぶに入ってくれればこの部は廃部にならなくて済むんだ。わかってくれ」


 俺はそっとあかねの肩に手を置く。

 あかねは分かってくれたのか静かに頷く。

 そんな様子を残りの3人が見つめる。

 俺は恥ずかしくなり直ぐにあかねの肩から手を離す。

 そして部長の方へ向き直る。


 「すみません、お騒がせして。それで先ほど話した通りにこちらの皆川みながわさんがこの部に入ってくれます」

 

 部長は俺の言葉を聞いてポニー皆川みながわに向き直る。


 「本当に入ってもらえるのかな?」

 「ええ、入ります。たださっき涼太・ ・が言った通り名前だけですけどね」


 俺はその言葉を聞いて体がビクンとする。

 ポニー皆川みながわから下の名前で呼ばれたからである。

 そしてふと視線を感じるとあかねが上目づかいで俺を睨んでいる。

 おいおい、どうなっているんだ?

 俺はポニー皆川みながわに下の名前で呼ばれるような事はしていないぞと。


 「よかったこれで廃部は逃れるよ。それじゃあこの入部用紙にクラスと名前を書いてもらえるかな」


 部長はレターケースより入部届を出してポニー皆川みながわの前にボールペンと共に置く。

 ポニー皆川みながわはボールペンを手に取るとサッと記入を終える。

 部長は記入された用紙を見て確認すると声を上げる。


 「これで皆川みながわさんは今日から超常現象部ちょうじょうげんしょうぶの部員だ。よろしくね」

 「はい、よろしくお願いします」


 ポニー皆川みながわは部長に挨拶すると次に俺の方を向く。


 「それじゃあこれで約束は守ったから、私の約束もよろしくね涼太りょうたくん」


 ポニー皆川みながわは俺にウインクするとサッと席を立ち「じゃあお先に失礼します」と言い部室を出て行ってしまった。


 残された俺に緊張が走る。

 なんかあかねの目が怖い。

 俺は後で上手くあかねにポニー皆川みながわの事を説明出来るかと考えていると部長より助け船があった。


 「それで上杉うえすぎ君達いいかな?」

 

 俺は助かったと思い直ぐに返事をする。


 「はい、大丈夫です」


 俺が答えるとあかねも部長の方へ向く。

 部長は右手人差し指でメガネをくいっと持ち上げてから話始める。


 「実は1年1組つまり上杉うえすぎ君のクラスで変な事が起きているとの情報があった」

 「変な事ですか?」

 「ああ、情報によると昨日まで仲の良かったグループが突然いがみ合ったりとか、グループだけではなく人通しでも仲が悪くなるケースがあると言うんだ。まるで超常現象ちょうじょうげんしょうの様な出来事が起こっているらしいんだ。この情報はくすのきさんの中学の後輩が1組に居て偶然にも教えて貰った情報なんだ」


 俺は先輩からこの話を聞いた瞬間にある人物の顔と名前が浮かんだ。

 ただ、それには確証はない。

 けれど俺の直感がそうではないかと語っている。

 

 「それでなんだけど、上杉うえすぎ君にはクラスでの調査をお願いしたいんだ」

 

 俺は先輩にどう返事をしようか迷った。

 俺の情報を与えるか…しかし、俺の直感でしかないので口走るのもどうかと考える。


 「あっ調査と言っても友達とかかぎ合わる必要はないよ。ただ但に教室で何が起きているかを正確に把握してもらいたいだけなんだ」


 「わかりました。俺も興味があるので調査します」

 「ああ、頼むよ。それで進藤しんどうさんは2組だったよね」


 部長はあかねの方へ向く。


 「はいそうです」

 「進藤しんどうさんの2組でも同じ事が起こるかもしれないので目を光らせてもらえるかな」

 「ええ、わかりました」

 

 あかねの返事を受けた所で部長は俺達二人に視線を向ける。


 「これが君達にとって初めての部活動の活動になるけど、あまり張り切りすぎないように」


 俺とあかねは部長に頷き部室を後にした。

 そして部室から少し歩いた所であかねが声を掛けて来た。


 「ねぇ涼太りょうた、あの皆川涼子みながわりょうこの事を教えてよ。なんで日曜日駅前に一緒に居たか」


 俺は目を開いて驚いた。

 え!駅前で皆川涼子みながわりょうこと一緒に居たところをまさかあかねに見られていたとは。

 俺はあかねに何処まで話そうかと考えたが本当の事を話す事にした。

 そして俺は校舎の裏でポニー皆川みながわを助けた事、そのお礼で食事をし部活に誘った事を話した。

 ただ、唯一ポニー皆川みながわを守る事は秘密にした。

 理由は俺が喧嘩が強いと言う事をあかねに知られたくなかったからだ。

 話を聞いたあかねは何とも言えない顔をしていた。

 そしてゆっくりと口を開いた。


 「涼太りょうたはあの皆川みながわさんの事どう思っているの?」

 「どっどうって…どうも思っていないよ!」


 俺は柄にでもなく少し大きな声を出してしまった。

 あかねは俺の動揺を見透かしたのか言葉を続ける。


 「ほっ本当に何も思ってないのね…」


 あかねは頬を赤らめ?

 なんかあかねの様子がおかしいぞ。

 頬と言うより顔全体が少し赤いような…そしてなんとなく息遣いが荒いような…


 「あかね、もしかして体調が悪いのか?」

 「ちょっちょっと熱っぽいかな」

 

 俺は直ぐに考えた保健室に連れて行くか、それともあかねを自宅に送って行くか。

 ここは学校だとりあえず保健室に行くべきだ。

 俺はすぐさまあかねを保健室に連れて行く事にした。

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