第10話 いきなり部員不足はないでしょ

 翌日俺とあかねは放課後、超常現象部ちょうじょうげんしょうぶへとやってきた。

 俺とあかねが部室に入ると既に先輩方がいて、メガネ男子の石田いしだ先輩が声を掛けてくれた。


 「おっ!さっそく来たな後輩君。それじゃあ早速だけど話をしようか」

 俺とあかねそしてメガネ男子の石田いしだ先輩と女神のくすのき先輩の4名がテーブルに座り話合いが始まった。


 「本当は上杉うえすぎ君達が入部する際に聞く事なんだけど、君達がこの部活を選んで入った理由を教えてもらえないかな」

 俺は当初催眠術の事を話そうと思ったが心の中に留めた。

 

 「きょ、興味があったんですよ。超常現象ちょうじょうげんしょうってゆう事に。それで入部を希望しました」

 俺はありふれた答えだが返答をした。


 「なるほどね。それじゃあ進藤しんどうさんはどうしてかな?」

 メガネ男子の石田いしだ先輩は次にあかねに声を掛けた。


 「私はその…」

 あかねは俺の方をチラリと見て少し恥ずかしそうに答えた。


 「りょう…上杉うえすぎ君の幼馴染で付き合いで入りました」


 あかねさん!?それ言っちゃあダメなような気がするんですが。

 まあ既に喋っちゃった事を取り消す事はできないからしょうがないけど…でも、絶対に先輩達は俺達の事誤解するんじゃないかな。

 俺にあかねが変な顔をしているのか慌ててメガネ男子の石田いしだ先輩は声を上げた。


 「あっいいよ、いいよ。ただ聞いただけだからそんなに気にしなくて」

 メガネ男子の石田いしだ先輩は両手で気にしないでとの仕草をしながら答えた。


 「それじゃあ二人の入部希望も聞けた事で本来は超常現象ちょうじょうげんしょうについて語りたい所だけど、実はこの部の問題点を君達に話そうと思う」


 メガネ男子の石田いしだ先輩は一息吐いてチラリと隣にいる女神のくすのき先輩を見てから話だす。


 「この東高の部活をやるには規則が存在する。それは部員の人数だ。運動部は最低10名そして文化部は最低5名の部員が必要となる。そして我が超常現象部ちょうじょうげんしょうぶは3年生が引退した事で現在君達を含めて4名となる。これは部則ぶそく違反となる。しかし、救済措置として夏休み前の6月30日前までに部員を揃えれば問題はなくなるが、もし部員が揃わない場合は残念ながらそこで廃部が決定する」


 俺は聞きながらなんだそれ!?と思った。

 せっかく入った部活がわずか3か月程度でなくなるのか?と。

 だけど、俺のようなボッチな人間に部員の確保なんて無理だろう。

 ならばあかねならば可能なのか?

 いや、あかねは俺が入ったから付き合ったに過ぎない。

 もしこの部活をやりたいなら俺自身が部員を集めるしかないけどまあ成り行きに任せよう。

 今までの人生もそうしてきたように。


 「わかりました。出来る限り頑張ってみます」

 俺は今俺が言える範囲の言葉で返事をした。


 「ああ、頑張って。期待しているよ」

 俺とあかねはメガネ男子の石田いしだ先輩の言葉を聞いて部室を後にした。


 「なっなんかすごい事になっちゃったね」 

 俺はあかねと歩きながらそんな言葉を掛ける。


 「うん。そうだね。涼太りょうたはそれでどうするの?」

 「え!?俺はどうしようもないよ。まあ、成り行きに任せようかな」

 「それっていつもの涼太りょうたね」


 あかねはふふふと笑いながら話すのだった。


 ◇


 俺の高校生活は得に変わる様子はなかった。俺が当日話しかけた能力者陣野じんの、メガネ上野うえの、チビメロン木下きのしたともに友達と言うよりは顔見知りの知り合い程度にしか発展はしていなかった。


 そんな時に俺に日直が回ってきた。

 まあ、俺の苗字が『う』から始まるから直ぐに回って来る事は分かっていたが。

 そして俺の相方の女子は美脚びきゃく斎藤さいとうえりかだ。

 おお、その短いスカートからスラリと出ている脚が美しいです。

 ああ、斎藤さいとうさん、俺をケダモノでも見る目で見ないでください。

 俺ってそんな変態チックな目であなたを見ていたのですか?

 はい、その通りです。

 俺は常にエロい目で斎藤さいとうさんの脚をガン見していました。

 あっ斎藤さいとうさん俺を置いておかえりになるのですね。

 後はケダモノ君でやっといてと言う事ですね。

 大丈夫ですよ俺は口答えをしないでしっかり日直の後片付けをしておきます。

 それではお気をつけてお帰り下さい。

 俺は斎藤さいとうさんが歩く後ろ姿…いや、短いスカートをガン見しながら見送った。

 くれ上がってパンツが見えなかと期待したが残念ながら叶いませんでした。

 俺は斎藤さいとうさんが帰った後に日誌に掃除のチェックマークを付けそしてサインをして職員室へと返却した。


 時刻は既に16時30分を過ぎていた。

 ああ、いつもなら家でゴロゴロとゲームでもして遊んでいるのにな。

 俺は鞄を持って昇降口で外履きの靴に履き替え帰ろうと思った。

 このまま真っすぐに直進すれば正面の門の出口で校舎裏へ回れば裏門の出口だ。

 正直若干正面の方が俺の家に近い。

 だけど、いつも通りに帰っていては何も違いはないよな。

 部活の部員の事もあるし…俺はせっかく遅くなったので少しくらいは変わらないだろうと思いかかとを返して裏門の方へ足を向けた。


 俺はこの展開を望んでいたのか?

 俺が裏門の方へ歩いていると校舎の陰の方で言い争うような声がした。

 声は男女のものだ。

 どうせバカップルの言い合いだろうと思ったが少し興味があり、俺は足を忍ばせてそっと校舎の陰から声の方を覗く。


 そこに居たのは男と女の二人だ。

 俺は顔を見たが当然だが知らない顔だった。

 俺の知る人数なんてこの学校に10人いるかどうかだから、まあ当然と言えば当然だ。

 そして言い合いはまだ続いていた。


 男「なんで俺の誘いを断るんだよ。皆川みながわさんも彼氏いないならいいじゃないか!」

 女「そっその、彼氏がいないからと言ってなんであなたと遊ばなければいけないんですか?」


 はぁ~ただのナンパ男と女のやり取りか。

 まあ放っておいても自然と収まるだろう。

 いやいやちょっと待てよ。

 これはいい実験台になるのではないか?

 以前自分に掛けた催眠術で今度は勇気の方ではなく力…要するに喧嘩が強いと意識させるんだ。

 おおわれながらいい案じゃないか。

 例え喧嘩になったとしてもここは高校内だから、数発殴られるだけで殺されはしないだろうしな。

 よし、じゃあ早速実験だ。

 俺は自分の鞄から少し大きめの手鏡を出す。

 そして俺は右手を鏡と俺の顔の間に持ってくる。

 そして『自己催眠、涼太りょうた、お前は喧嘩が強くなる』、俺は指を『パチン!』と音を鳴らす。

 

 おっなんだか自信がついたような感じになったな。

 よし、それじゃあ早速行動に移しますか。

 俺は校舎の陰から足を踏み出して口論をしている男女の元へ行く。

 最初に気づいたのは男の方だ。

 男が俺の方に振り向いたので女の方も俺に気づく。

 男の身長は俺と同じ位で顔は…まっ負けました。

 いやいや、喧嘩に顔は関係ないでしょ。

 そして男は俺に向かい声を上げた。


 「なんだ!?てめぇ!関係ない奴はどっか行けよ!」


 おー!まぁ当然(テンプレ)の様な言葉だな。

 自己催眠を掛ける前の俺ならすぐに回れ右をしてどっか行ったけど、今の俺は強いのだ(笑)。

 

 「男から嫌がらせをされている女子をほっとけるなくてね、つい声を掛けたんだ」


 自分で言っていても超さむい言葉だがまあいいだろう。

 しかし女の方もえっ!なんて顔してるんですけど…もしかしてお邪魔君でした?

 まあ、お邪魔でももう目の前に来ちゃったので許してね。


 「はぁ!?ヒーローのマネ事でもしてるんかお前!」

 「聞こえなかったのか?むさい・ ・ ・男から責められている女子を助けに来たのさ」

 

 ああ、なんて素晴らしいあおり文句でしょう。

 こんな事言われれば大抵の人は怒ります。

 えっ!?俺はどうかって?

 そんなの決まっていますよ。

 僕チキンなんでさっさと逃げますよ。

 だって…痛いの嫌じゃないですか(笑)

 と言う脳内会議は終了し

 俺のあおりに男は当然のように激怒した。


 「なめんな!」


 そして想定通りに男は俺に右手で殴り掛かってきた。 

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