第9話 超常現象部に入りました

 俺は全身から冷や汗が出る。

 あっあれ?

 今って夏だったかな?

 確か俺の記憶だとまだ春の4月だと思うんだけど、俺の額や脇そして背中に汗が出て来る。

 俺はどうもあかね…いや、あかね様の地雷を踏んでしまったらしい。

 いや、あかねさんこれは事故ですよ。

 事故の原因を作ったのは俺ですが…。

 俺は素早く脳を回転させる。

 声を掛けてくれたメガネ男子に返事をするかそれともあかねの機嫌をとるか。

 いやいやそんなの考える必要などないだろう。

 俺は体を直ぐにあかねに向ける。

 俺は苦しい動揺を落ち着け声を出す。


 「あかね、これは事故…そう、事故なんだ。まあ俺が原因なんだけど。とっとりあえず落ち着こうね」


 俺は優しくあかねに声を掛ける。


 「涼太りょうた、扉を突然開けた事はまあ配慮が足りなかったで済むわ。でも…水着の子をどんな顔をして見ているのよ!鼻をでれぇ~と伸ばして!このスケベ!」


 やっちまった。

 俺の不手際からあかねを怒らしちまった。

 だけどなんで俺が水着女子をガン見しただけであんなに起こるんだ?

 はっきり言って女子の心はわからん。

 とりあえず今は謝ろう。


 「ご、ゴメン。だけどしょうがなくないか?いきなり水着…いや、ビキニを付けた女子が目の前に現れたら俺も男だから見とれちゃうだろ?」


 あかねはどう言うべきか考えている様子だ。

 そして『はぁー』と大きなため息をついてから口を開く。


 「まあいいわ。でもそんなに水着が見たいなら夏になったら一緒にプール連れて行ってあげる。そうすれば涼太りょうたの好きな水着女子が見放題でしょ。それまで我慢しなさい」


 なっなんだ?

 あかねは何を考えているんだ?

 って言うか俺達人前でどんな変な会話しているんだ?

 しかもお互いに名前で呼び合っているし…恋人通しとコレ勘違いされるんじゃないか?

 いやいや、そんな事を考えているばあいではない。

 とりあえず口をポカンと開けて茫然と見つめるメガネ男子と水着女子に声を掛けなければ。


 「もっ申し訳ない変な所を見せて。あの部活見学に来ました」

 「あっそっそうなんだ。じゃあ良かったら見学していってよ」


 メガネ男子は立ち直ったのか返事をしてくれた。

 俺はメガネ男子へのフォローが終わると直ぐにあかねに振り返り小声で声を掛ける。


 「とりあえず部活見学しよう。さっきの俺の行動についての意見は後で聞くから」

 「わっわかった」


 あかねは少し不満そうな顔をしたがなんとか了承してくれた。

 そして俺は再度メガネ男子に顔を向けて話しかける。


 「それで今は何をやっているのですか?」

 「今はねちょっとした実験をしていたんだ」

 「実験ですか?」

 「ああ、ここは超常現象部ちょうじょうげんしょうぶだからね。気になる事があれば何でもチャレンジしているんだ。まあ、実験は失敗したんだけどね」


 メガネ男子は苦笑いをしながら話した。

 俺は実験の内容を突っ込もうと思ったが俺はそれは部活に入っていいからでいいと思い、部活内容をメガネ男子に聞く事にした。


 「そうなんですか。それで部活内容をお聞きしてもいいですか?」

 「ああ、いいよ。超常現象部ちょうじょうげんしょうぶは名前の通りに気になる事があれば案を出し合って、それを実際に実験してみて現象を確認すると言う事をやっているんだ。もし現象が確認出来れば専門協会へ資料を提出する流れかな」


 なるほどね。

 趣味も兼ねた部活って感じだな。

 ここはそんなに部則ぶそくも厳しくなさそうだから良さそうだな。


 「そうですか、それで部員はたくさんいるのですか?」

 「いや、恥ずかしいが3年生がもう既に引退してしまい。現在は僕と水着の子の二人だけなんだ」


 おっこれはさらに好都合だ。

 人が少なければ部活内でボッチになる事もないだろう。

 俺は入るとしてあかねにも聞いてみないとな。

 俺はメガネ男子からあかねに顔を向け聞く事にした。


 「あかね、俺この部活に入ろうと思うんだけどあかねはどう思う?」

 「わっ私は…」


 あかねは少し考えてから口を開く。


 「涼太りょうたがいいならいいんじゃない。私は付き合ってあげるよ」


 あかねは先ほどの態度とは違い柔らかい雰囲気で言ってくれた。

 良かった。

 少しは機嫌が治ったみたいだな。


 「ありがとうあかね


 俺は笑顔であかねに答えメガネ男子に入部を希望する。


 「あの僕達二人この超常現象部ちょうじょうげんしょうぶに入部したいんですけど」

 「ああ、喜んで歓迎するよ。それじゃあこの入部届に記入してね」


 メガネ男子が入部届を出してくれたので、俺とあかねはそれに記入した。

 メガネ男子は俺達が記入した入部届をマジマジと見ながら話をした。


 「えっと、1年1組の上杉涼太うえすぎりょうた君と1年2組の進藤茜しんどうあかねさんだね。ようこそ超常現象部ちょうじょうげんしょうぶへ。僕は2年で部長の石田いしだだ。そして同じく2年のくすのきさんだ。よろしくね」


 「あっよろしくお願いします」

 

 俺とあかねは同時に挨拶をした。


 「部活は週の内火と木の2回だ。授業後にこの部室に集合して。後、気になる現象がある場合はその時に提案してほしいかな。まあ文化部だから厳しいルールとかはないから気軽に参加してね」


 そして俺とあかね超常現象部ちょうじょうげんしょうぶを後にした。


 「なんか予想よりゆるーい感じの部活だね」

 「そうね。でも涼太りょうたもその方が楽でいいんじゃない?」

 「そりゃあ厳しいと俺逃げちゃうからね」

 「あはは、涼太りょうたらしいね」


 俺達は学校を後にしてそんな話をしながら自宅へと歩いていた。

 そして俺は前の事を思い出して少し試したくなった。

 妹穂香ほのかの催眠実験が成功してから俺は少し自信を付けたからだ。

 俺はあかねにはほとんど催眠が効かないとなっている。

 そう、あかねに最後の催眠を掛けたのは中2の頃だったな。

 あの時俺は有頂天になっていた。

 そんな時に俺は調子に乗ってあかねに催眠術を掛けて見事に失敗した。

 しかも俺の黒歴史になるのだが、あかねの胸を触ろうとして見事にほっぺを引っぱたかれた苦い記憶だ。

 まあ今回はあかねにエッチな事をしようとする訳ではない。

 ただ、自分の超能力の実力を試すだけだ。

 さあ、勇気を出せ涼太りょうた

 俺はあかねに声を掛ける。


 「あかねちょっといいか?」

 「ん?何?」


 あかねは笑顔で俺を見る。

 そして俺はすっと右手をあかねの目の前に出し中指を弾いて『パチン!』と音を鳴らす。

 するとあかねの目がピクンとする。

 催眠に掛かったのか?

 非常に分かりにくいがとりあえず命令を出そう。

 でもせっかくの命令なんだから俺が幸福な命令を出そう。

 

 「あかね、俺と手を繋いで家まで帰るぞ」

 

 あーやっちまった命令だ。

 まあ、しかしテストだからまあいいか。

 あかねはなんだか頬を赤くしたように見えたがすっと俺の左手を掴んできた。

 せっ成功だ。


 あーなんだろうこの感覚。

 とても心が落ち着く。

 それになんだろう少しあかねに近づいたせいかなんかいい匂いがするような気がする。

 俺はやっぱりあかねに惚れているのかな?

 まあ、まだ高校1年になったばかりだ。

 俺も彼女が欲しいが慌てる事はないだろう。

 俺はせっかくあかねと手を繋いでいるのにそんな事はそっちのけで自宅へ向けて歩くのだった。

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