第8話 扉はノックをしてから開けよう

 時は流れ授業が終わり放課後となった。

 俺は直ぐに高木たかぎに声を掛ける。


 「高木たかぎそれじゃあ早速部活巡り行こうぜ」

 「おう、それじゃあ行こうか。で、運動部と文化部どちらから回る?」

 

 俺は考える。

 俺は運動が苦手だから運動部はないだろう。

 だけどせっかく高校に入ったのだからどんな部活があるかだけでも見といた方がいいかなと思い返事をする。


 「そうだな、たぶん俺は最終的には文化部に入ると思うから可能性の薄い運動部から行こうか」

 

 俺達は教室から出ると見知った女子が目の前に立っている事に気づく。

 進藤茜しんどうあかねだ。

 進藤茜しんどうあかねは俺の横の家に住んでいる女子で俺に催眠術の切っ掛けを作ってくれた子だ。


 「進藤しんどうどうかしたのか?」

 「あっりょう…上杉うえすぎ君」


 おいおい、今俺の事を二人でいる時のように名前で呼ぼうとしただろう。まあここには高木たかぎしかいないからいざとなったら口留めをすればいいか。


 「今から部活見学行くからよかったら一緒にどうかなと思って」

 「あいいぜ、問題ないよな上杉うえすぎ


 高木たかぎはさらりと進藤茜しんどうあかねに返事をし俺の方を向く。

 まあ、3人でも特に問題ないかと思いおれは高木たかぎに返事をする。


 「ああ、それじゃあ行こうか」

 俺達3人は予定通りに運動部から回る事にした。


 「高木たかぎは中学同様にサッカーをやるのか?」

 俺は歩きながら話をする。


 「ああ、俺春休みから既にサッカー部に顔を出していて、もう入部届出してあるんだ」

 「流石東中のエース高木たかぎだな」

 「エースは中学までだよ。高校じゃあしたからスタートだよ」

 「いやいや高木たかぎならすぐにレギュラーになれるよ」

 「おう!期待に答えられるようにがんばるわ」


 俺と高木たかぎが話している間、進藤茜しんどうあかねは微笑みながら俺達を見ていた。

 俺達は野球部から陸上と見て隅でパフォーマンスをしているサッカー部の所に来た所で高木たかぎが声を掛けられた。

 

 「おう高木たかぎじゃねぇ~か」

 「あっ先輩」

 「今よぉ新一年生相手にパフォーマンスしてるからお前も参加しないか?先輩達へのアピールにもなるぞ」

 「あっ参加させて下さい」


 高木たかぎは先輩に返事を返すと俺の方へ振り向き両手を合わせて声を掛ける。


 「わりぃ上杉うえすぎ、後は二人で回ってくれ」

 俺はまあしょうがないなと思い高木たかぎに返事を返した。


 「わかった、じゃあな」

 俺は高木たかぎに返事をしかかとを返した。

 そして俺は進藤茜しんどうあかねに声を掛ける。


 「まあ、そうゆう事だから二人で文化部行こうか」

 「うん!行こっか」


 あかねは俺に笑顔で答え二人で文化部のある棟へと歩き出した。


 「そう言えばあかねは何部に入るか決めたのか?」

 「私は…涼太りょうたと同じ文化部にしようかな」


 あかねは後ろで手を組み体を傾けて、俺の顔を下から覗き見るようにしてきた。

 あかねの少し栗色の髪の毛が重力により片方に垂れ下がり、いつも隠れている形のいい耳が俺の前に現れる。

 俺はあかねの耳に目を奪われながらもどう返答しようかと考えた。

 だけど、見れば見るほど…可愛いじゃねぇーか。

 こんなにあかねって可愛かったか?

 中学の頃とそんなには変わっていないと思ったけど…あー考えれば考えるほど照れて来る。

 こうゆう時は昔の事を思い出して対処しよう。

 あっそう言えばあかねは中学時代バスケットボール部だった事を思い出した。

 

 「あかねは中学と同じバスケはやらないのか?」

 するとあかねは体を起こして頬を膨らまして俺を少し睨む。


 「涼太りょうたは私と一緒の部活は嫌なのね」

 「ち、違う!そうゆう意味で言ったんじゃない」


 俺は両手振りながらアピールする。

 

 「じゃあ、どうゆう意味で言ったの?」

 「いやいや、あかねのような運動神経がいい女子が俺みたいな運動神経のないやつと一緒の文化部に入るのはもったいないかなと思って…」


 俺は最後の方歯切れ悪くあかねに言い訳をする。

 

 「涼太りょうた…そうな風に自分をさげすまないで。私はただ涼太りょうたと同じ部活なら高校生活は楽しくなるかなと思ってね」


 あかねは優しくそして少し寂しそうに微笑みながら俺を見つめてそんな事を言ってくれた。


 俺みたいなウジウジした奴が幼なじみでお隣通しでゴメンなあかね

 もっとイケメンでユーモアある奴だったらもっとあかねの青春は輝いていたかもしれない。

 でもあかねは俺がどうゆう男かわかって言葉を掛けてくれている。

 なら俺はそれに答えないと男じゃないよな。


 「ゴメンわるかったよ。本当は俺もあかねと同じ部活なら楽しいと思っていたんだ。でも、その…照れ臭くてな…」


 俺は左手で頬を少しかきながらあかねから少し目をそらしながら答える。


 「そっそうだったんだ涼太りょうた…でもね、照れる必要なんてないでしょ、私達お隣通しで小6からの付き合いでしょ」


 あかねは右目でウインクして答えた。


 「ああ、そうだな。照れないように努力するよ」

 「うんうん、努力してね。それじゃあ文化部行こうか」


 そして俺とあかねの他愛のない言い合いは終わり俺達は改めて文化棟へ歩き出した。


 *


 俺とあかねは文化部が入っている棟を順番に回った。

 英語研究会、映像部などなどいろんな部活があった。

 だけど俺の心に響く部活はまだなかった。

 そんな時一つの部活が俺の目に入って来た。

 超常現象部ちょうじょうげんしょうぶ

 これこそが俺が求めていた部活だ。

 俺は勢いよくその部活の扉を開けた。

 そう、俺はノックをせずいきなり扉を開けた。


 そして俺の目に飛び込んで来たのは上下赤色のビキニの水着を付けた女子の姿だった。

 俺は不覚にもその赤いビキニを付けた女子をガン見してしまった。


 すらりと伸びた足、引き締まっていてプリッとした尻、くびれた腰、そそる背中、そして大き過ぎず小さ過ぎずツンと上を向いた豊かな胸。

 そして可愛い顔に理想のポニーテールヘアー。

 うぉー女神降臨!


 俺は扉を開けたまま固まってガン見していると、奥からメガネを掛けた制服を着た男子が声を掛けて来た。


 「もしかして部活見学かな?」


 俺は返事もせずにただただ頭をカクカク上下するだけだった。

 俺は頭をカクカクさせながら背中に殺気を感じそっと後ろを振り返る。


 そこには小6からの親友でお隣さんでいつもはとてもやさしいあかね様が腕を組み鬼の形相で仁王立ちしていた。

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