悪食少女は食べられない

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 お腹が空いた。空腹だ。


 だから私は草を食べた。


 お腹が空いた。空腹だ。


 だから私は紙を食べた。


 お腹が空いた。空腹だ。


 だから私は食べられるものを探した。けれど、食べてもいい物はどこにもなかった。





 お腹が空いた。食べる物がないよ。


 だから私は、ペットを食べた。


 お腹が空いた。食べる物がないの。


 だから私は、知らない人を食べた。


 お腹が空いた。食べる物がない。


 だから私は、友達を食べた。


 お腹が空いた。食べる物がない!


 だから私は、家族を食べた。


 お腹が空いた。食べる物がない!!


 だから私は、自分を食べようとした。





 けれど、私は食べる物を見つける事ができた。


 白くてつやつやしたご飯。


 温かいゆげを浮かべるスープ。


 柔らかいパン。


 肉汁したたるお肉。


 シャキシャキみずみずしそうな野菜。


 甘い匂いを放つ果物。





 私はそれらをかきこんだ。


 詰めれるだけ、詰め込んだ。


 でも、私は食べられない。


 食べられたけれど、それらは栄養にならなかった。


 栄養になるのはそんなんじゃなくなってた。


 私は結局、自分を食べるしかなかった。


 私のお腹は、悪いものしか食べられなくなってたから。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪食少女は食べられない 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ