第7話 変質者アルテラ
転生者や神器、そしてチートという外部からの兵器により弱者の地位に落ちていた私達は、急速な世界の堕落により息を吹き返したのだった。
「転生者や召喚者の表現とか、異文化理解の工程って書くの面倒じゃね」
という世界の意向によって、外界からの驚異が消え去り、
「神器って入手までの流れとか効果とかもだけど、伏線回収ダルくね」
という世界の意向によって、辛うじて使われていた兵器も失くなり、
「チートもう思い付かないから廃止にしよ(笑)」
という世界の意向により、もはや私達が恐れていた外敵達も、今や体の良い食糧庫となったわけだ。
だが、一つ誤算があった。
そう、こいつらは攻めてきて簡単に倒されても、1000文字を描写した途端に一瞬で消え去ってしまうらしいのである。
今回もそうだった。
地下水路を魔物に化けながら徘徊していた所、弱小この上ないようなパーティに遭遇したのだが、視界に入った中で一番弱そうな中衛の魔法使いの脳天を踵落としで潰し、前衛の剣士の骨を折る力で膝蹴りをし、壁に叩きつけたその瞬間に後衛含む全員が消え去ってしまったのだった。
「ああ、今回は食べられそうでしたのに」
私はダイラットの姿で溜め息を吐くと、元の形態に戻った。
角の生えた二足歩行の、花魁の格好をした狐の姿を思い浮かべてもらえれば問題ない。
そう、私はダイラット等という下等な生物ではない、魔神種なのである。
それも等級が上の、だ。
血も付いていない口を拭い、私は地下通路の天を仰いだ。
放置された蜘蛛の巣やら湿気により大量に増殖した苔が見えた事などは気にしない。
「はあ、お腹……空きましたわね」
私達の方が力を得て、力を失った冒険者達を蹂躙する事が出来るようになり、何処にいるかも分からないような鬼畜を実体化した外敵に怯える事もなくなった。
だが、世界は残酷なもので、人々を殺しても殺しても、食べるに至れないのだ。
馬車を引く行商人や、道行く村娘ですら、殺すとすぐに消え去ってしまうのだから、どうしようもない。
だが私は、その解決方法を知っている。
そうだ、描写させる暇さえない程一瞬で、執筆さえも追い付けないような超スピードで、奇襲されるなど夢にも思っていない街の人間を虐殺していけばいいのだ。
「ふふふ……はは、あははっ!!」
1000文字という描写制限により、強制的に街に戻される事で魔物の手から逃れてきた幸福で馬鹿な市民共は、これから私の手によって、惨殺されるのだ。
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