第20話
そっとトイレの扉を開けたソラ。トイレは玄関を入ってすぐにあるため、外でぽかんと口を開けているレオナとすぐに目が合った。
『レオナの前でマジックハウスを出してしまったのぅ〜。ほれ、玄関から中を伺っておるぞ?』
『計ったな! 私の膀胱に水を生み出して誘導したんでしょ!?』
『そんなわけあるか』
ぐぅ、とソラは唸る。
『だけど! ここに馬なんか入るわけないし、見張りはしないといけないから野宿は揺るがないし!』
『それなんじゃが……おやぁ? いつの間にか一時的に馬車に聖属性が付与されたようじゃなぁ。これでは魔物は近づいてこないじゃろうなぁ』
『そこまでするか!』
『娘のためじゃ。なんでもするわい』
「くぅ……!」
ソラは反論を続けるべく頭を回す。野宿が回避され、快適な夜を過ごせるのはソラにとっても利があるはずなのだが、ここで素直に受け入れるのはなんだか恥ずかしくなったのだ。
つまり、照れ隠しである。
『そうだ! 私は一人でこの家を使うつもりはない! 使うなら3人で! 男と一つ屋根の下で夜を過ごすことになるけど、いいの?』
『なにを、今のソラは彼らにとって希望の星じゃ。そこでどうこうするような阿呆じゃなかろうて。それに、今のソラなら撃退しようとなんの問題もない』
思い付いたとっておきを簡単に弾かれてしまったソラ。もう撃てる弾が尽きてしまったようである。ぐうの音も出ない、と項垂れた。
その頬は、僅かな赤みを持っていた。
ソラは諦めて、レオナへこのことを伝えることにした。
「レオナ、この家を使っていいみたいだから、野宿しなくていいよ」
「ど、どういうことだ?」
レオナは創造神と美の神の恩恵により、様々な技術が搭載されたこの家が使えると聞くと、興奮した様子を見せた。
「凄いじゃないか! 虫に刺されることもない! 汗でベトベトしたまま寝ることもない! 他の冒険者が知ったら何をしてくるかわからないぞ!」
「内緒だよ」
「もちろんだ! 神に誓って胸に秘める!」
『破ったら天罰じゃな』
「秘密を漏らしたら天罰があるらしいよ」
ソラは苦笑いしながら、レオナへ伝える。レオナは笑ったままである。
「大丈夫、口は硬い方だ」
「レオナは大丈夫だと私も思うよ。だけど……」
レオナは実際に創造神が顕現するところを見ている。その神力は言わずもがな、肌で感じられただろう。彼の天罰がなかったとしても、レオナの瞳を見れば、ソラに害ある行動は取らないと感じられたのだが。
もう一人はまだわからなかった。やはり害意は感じられないものの、口が軽そうなのだ。
「あぁ、ゼブライか。あいつはあんなだが、口と義理には硬い男だぞ」
「……ほんと?」
ソラは訝しげな目を向ける。口調や言動から軽そうなイメージを受けていたのだった。
「あぁ。それに、ゼブラは毎晩剣の素振りを欠かさない。汗をかくだろうから、せめて浴室だけでも使わせてやってくれないだろうか?」
レオナはよほどゼブライを信頼しているようだった。まぁそうでなければこの件に関わらせないか、とソラは納得した。
「別にここを使ってもらうのは全然いいんだよ。だけど、それで私が知らない内に天罰が降ったりしたら嫌だっただけで」
「そうか! ありがとう! 大丈夫だ、あいつには十分言い聞かせておこう!」
またソラには借りが出来てしまったなと言うレオナに、ソラは少し複雑な気持ちになったのであった。
そして、馬車に聖属性が付与された為か、魔物が寄ってくることもなく無事に時は進み、一行は夜を迎える。
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_(┐「ε:)_出来立てほやほやです
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