第2話 スリーゲーム

「何でも夢が叶う?」

「そっ何でも夢が叶うんだ!ここでは思ったことが何でも現実となる、好きなことだけをやって生きることが出来る!ほら見てよ!」


時計回りに指を一周させると魔方陣のようなものから煙のようなものが出現し、次第にビジョンが浮かび上がる。


「っ!」


 夢のような光景が広がる。まず浮かび上がったのは全てがお菓子で出来た国だ。曇も木も海も全て食べることができ、口を甘い感触で満たしている。そこに住んでいる住人は皆、幸せそうな顔をしており自らが好きなものを好きな時に食べている。


「これは……ヘンゼルとグレーテル?」

「ちょっと違う、怖い魔女もクズな義母もいないお菓子の家だけがあるのさ♪だってネバーランドにホラーもグロテスクなことも必要ないでしょ?必要なのは幸せだけ!次の国を見せてあげるよ!」


 次にビジョンに写されたのはドラゴンや魔法があるファンタジーの国。魔法使い、勇者、戦士、なりたい理想に皆がなり多彩でワクワクする魔法や技を駆使してドラゴンやモンスターを倒していく。


「これって俺もなれるのか?」

「もちろん!ネバーランドの住人になる為のカードを手にいれればね?」

「カード?」

「これさ♪」


 懐から取り出したカードにはトランプ状の歪なデザインが刻まれている。目の錯覚かそれとも本当なのかは分からないが極彩色に包まれ動いているように見える。


「ネバーランドのチケット、いや永久パスポートこれさえあればどの国にも行き放題!遊び放題!飲み食い放題!好きな時間に寝て好きな時間に起きていいし、何をしてもいい!他の人なんか気にせずに自分中心に好きなことをすればいいのさ!」

(好きなように……生きる!)


 言葉の一つ一つが俺の心に刺さる。ルールと理性によって無理矢理縛り付けられた欲望や自由が鎖をほどき解放されていく。


「早くそのチケットをくれ!俺も……好きなことだけをして生きたい!」

「あっストップ」

「ごめんねぇ、このカードはまだ君には渡せないんだ」

「えっ?」


 興奮の有頂天に達し早くそれをよこせとカードをせびる俺の唇に指を当て制止する。熱しやすく冷めやすい鉄のような心の俺は冷却装置に凍らされたように落ち着きと理性を取り戻す。


「もちろん君にはこのカードを所持するべき資格が存在する、でも渡すまでには至ってない、だから君にはスリーゲームに挑戦してもらうよ!」


 マインが指を鳴らすとスリーゲームと書かれたお洒落なロゴが空中に出現する。


「スリーゲーム?」

「超簡単なゲームをするだけだよ!難しいことは全くしない!」

「じゃあ……そのゲームをやってクリアすればネバーランドに入門出来るのか?」

「いや違う、ゲームをするだけでいいの」

「するだけ?」


 発言の意図が分からない。こういうパターンはアニメや映画などで使われる定番の手法。ゲームマスターらしき者が3つほどのゲームを作り出来れば脱出、出来なければ……まぁ色々酷いことになる。だがどうだろう、マインはこう言った「ゲームをするだけでいいの」と。


「するだけでいい?クリアしなきゃいけないとかじゃないのか?」

「NO、本当にプレイするだけでいいの!その時の結果は関係ない」

「それが!」


 クリアしなくていいゲーム。 

 それがこの世界のルールなのか。


「プレイするだけでいいんだな?」

「そう!詳しいことは転移してから説明させてもらうよ!」

「えっ転移?」

「スリーゲーム専用に作った国に移動するのさでは行くよ!トツシメユクヨリキム!」


 へんてこな呪文を唱えた瞬間、自分がいた世界はブロックのように分裂していき崩壊していく。


「な、何だ!?」


 これが一体どういう仕組みなのか。それを考える暇はなく再びマインの方を見つめた時には辺りは閃光に包まれていた。

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