論旨が明確で、真相究明に向かう姿勢が美しいミステリ小説です。
週刊誌やネットの掲示板では盛んに取り上げられ、TVなどでも時折顔を覗かせる天皇の男系継承問題。多くの人から見ればニッチなテーマだと捉えられますが、根深く大きな問題だということは多くの方の同意するところだと思います。本作では各論あるこの話題をより身近な会社の人間関係に置き換え初歩から解説し、そしてルーツとメカニズムについて究明しようという壮大な物語となっています。
この問題については形而上的な思想の要素を含んでいるため、論理主体のミステリとは相性が悪いのではなかろうかと、読む前は勝手に想像していましたが、国内外の歴史的資料を解読し、国際的な宗教・文化の日本への流入の過程とそれぞれの本質的な比較を交えながら答えに近づいていくダイナミズムには、大きな興奮がありました。
申し訳ないことにわたしはこの問題に関して素人ですので、本作の結論に関する十分な検証は手に余ります。この点についてはこれからの読者諸賢に判断を見守りたいと思います。