ネームレス・デイドリーム

美夢るる

序章

第0話 「Deity」

__空白に満ちた、小さな空間。ただ『無』が支配している、そんな場所。

そこに佇む、1人のオンナ。そいつは、何も無いその空間より、

白い白いテーブル1つとイス2つを、慣れた手つきで取り出し紅茶を淹れ始める。

そこに、全く別の小さな人影が、1つ。

「__おや」

顔が上がり、ぽつりと言葉を零れる。そして

「あなたでしたか、‘‘ツクリシモノplayer‘‘」

表情一つ動かさず、単調に呟いた。

‘‘player‘‘.そう呼ばれた彼女は、見た目に似合わず随分と余裕がある。

「ああ。突然の来訪で済まないね、‘‘トトノエシモノdeity‘‘…

 _____ここ、座ってもいいかい?」

「ええ、もちろん。」

は空いた白い椅子1つに腰掛ける。

「…紅茶はいかがです?」

「そうだな……せっかくだ、頂こう」

「承知しました」そう言い、‘‘deity‘‘はどこからかティーカップを

もう1つ取り出し、淹れ始める。仕事が早いな。

紅茶を受け取る。「ふふ……ありがと」紅茶を飲む……うん、おいしい。

「何ですか突然。気持ち悪いですよ」ぬ、若干引いてる…?

「全く、ひどいなぁ。………まぁ確かに、理由とかはないんだけどね?」

「ですよね」と即答。全く薄情なもんだよ。な、君たちもそう思うだろう?

‘‘トトノエシモノdeity‘‘はやれやれといった表情。

「おいおい、ひょっとしなくても楽しんでるな?」

「こうやってあなたと話すことも、最近は少なかったものですから」

「確かにね。お互い忙しくなったし」

「…あなたの時期選びも原因かとおもいま__」

「*それは、あんたの管轄じゃないだろ?」*空気がひりつくがする。

「……それもそうですね」

…………しばしの沈黙。それを最初に破るのは…。

「___さて」

「そろそろへ移った方が良いのでしょう?」

微かな息遣い。わずかな沈黙はすぐに破られる。

「……そう、だな。あぁ。…あぁ。すまないな。本当に。」

「いえ、お気になさらず……では、気を取り直して…」

「あなたは、『彼女らの結末』について、どうお考えで?

……現在、あの場所は数少ない小康状態です。決めるなら今かと思いまして」

「……やっぱり、その話か。…まあ検討はついていたが…」

 溜息が1つ、滑り落ちる。その話は_____。

「…そんで………どっから話しだすべきかい?」

一瞬の勘案。

「そうですね…まずは、あなたの所見からお聞きしても?」

「ん、いいよ。…とは言っても、あらかた予想はついてるんだろうけど。

……私は、最終的にはこの‘‘物語‘‘はハッピーエンドにしたいって思ってる。

全てのしがらみを取り去って、そこにいる全員が笑っているような。」

「予測はしていましたし単純ですが、それだけに難しい話でしょうね

……それこそ‘‘しがらみ‘‘は数えきれないでしょう。

もし例を挙げるべきならば、やはり[整合性]等でしょうか?」

「だろうね、うん。今回は大仕事の予感がする。

………そう、今までにも無かったような、いちばんの大仕事」

これも予想通りなんだろう。意味ありげな沈黙が増えていく。

「一応聞いておきますが、バッドエンドの予定は…」

「無いね。‘それ‘を用意する余裕も、そのルートに運ぶつもりも。」

「改めて思うと、あなたがそんな意見を持つのは珍しい…ですよね」

「そうだね~、う~ん…『だからこそ』だと、思うな」

「ふむ……。」いまいち理解できない様子。

「やはり、私にはまだまだ【学習】すべきことも山積みのようですね…。」

「そうかい」

PIPIPI…PIPIPI…

「___時間のようだ。すまないが、そろそろ」

「ええ、そろそろ」

すたっと立ち上がり、そのまま去っていく。

「………最後に」

立ち止まり、振り返る。

「私、なにがあってもこの夢だけは、終わらせないから」

___私の視界は、白よりもまぶしく、明るく染まっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ネームレス・デイドリーム 美夢るる @yufla777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ