13 ENDmarker.

「いいの?」


「いいよ。そっちがずる休みしたんだから。俺もずる休みだ」


 日が暮れる。店が、閉まった。たぶん、初めての閉店。


「ねえ。話をしようよ」


「何の話だよ」


「死んだあとのこと、とか?」


「俺も連れていってくれよ」


「だめだよ。わたしの死は、わたしだけのものだから」


「それなら、それでいい。そっちが死ぬのなら、俺もそれでかまわない」


 それっきり、会話は途切れた。

 日が沈んでいく。

 このまま。手を握ったまま。夜通し、ふたりで。ベッドに座ったまま。何もせず、お互いに寄りかかって。夜が過ぎる。時間が消えていく。それだけを感じて。人生の終わりを。最後の夕暮れと夜を、感じ続ける。

 彼女が死ぬのなら。自分も死んでいい。彼女の死を、止める権利が、自分にはない。

 もう、陽は昇らない、ふたり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る