第4話

 イートインコーナーで、いつものように座ってて。倒れて。そして、わたし。

 見知らぬ人の胸で泣いてる。


「ごめんなさい」


 見知らぬおじさん。肩の辺りが、なみだでぐしゃぐしゃになってしまった。


「綺麗な泣きかたですね」


 たしかに。


「生まれて初めて泣いたかも」


 おじさんが笑う。


「ね。話聞いてよおじさん」


「元気になりましたか。じゃ俺はここで」


「いやいやいや。客来ないでしょ。知ってるよ。この時間帯。わたしぐらいしか来ないこと。人気のドラマ配信やってるもの」


 おじさん。首をかしげる。


「はて。ドラマ配信?」


「まあまあ。こっち来てよ」


 手を伸ばして。掴もうとして。


「いてっ」


 払われる。


「おっと。すいません。つい癖で」


 ちょっとわるいことをしてしまったかもしれない。謝ろうか。ちょっとだけ逡巡しゅんじゅんしたところで、おじさんがイートインコーナーに座った。


「やった」


 嬉しさで、謝ることも忘れて。

 自分もイートインコーナーに座る。

 話し相手ができた。

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